- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
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「4時間38分のカタルシス」ですか…。うーん、カタルシスは、感じられませんでしたね。正直、ちょっとかったるかったです。
人の死(殺人)、そして生きることがテーマの割に、さほど肩に力が入った感じがしない点は好感が持てますが、もう少し短く、不必要(と私が思うだけですが)なシーンをカットし、全体にテンポを出すべきじゃないでしょうか。こだわって撮っていることは分かりますが、全体的にリズムが平板で緊迫感が生まれてきません。
殺人の被害者と加害者、それぞれに抱える負の連鎖、こういう言い方は誤解を招きそうですが、よくありがちなテーマです。瀬々敬久監督は、そこから、輪廻的死生観みたいな、ある種普遍的テーマを引き出そうとしています。そのあたり、どうなんでしょう? 私は、違うように思います。
死んだ者(殺された者)が生きている者をじっと見守るカットを挿入したり、冒頭とラストで人形芝居を使い、「怪物が棲みつきました」と、多分「殺人」のことを比喩しているのだと思いますが、そのとらえ方はどうなんでしょう?
全体として、殺人そのものについて、深く迫ろうという視点は感じられず、いくつかの同時に進行するドラマ、「サト」の物語、「トモキ」の物語、そして「ミツオ」の物語の主たる3つと、それに関連する2,3(かな?)の物語が、交錯し、それぞれにからみ合い、最後にひとつに収斂していく、そのことに力が注がれています。
確かに、そのあたりは、わざとらしくなく、嫌みなく、うまく絡み合わせてひとつの物語にまとめられていると感じますが、それゆえにこそ、「物語」として終わってしまい、ほとんど(私には)考えさせられるものが残りません。
かなり印象的な団地の廃墟、岩手の松尾鉱山跡らしいですが、その廃墟とそれに対比されて出てくる現在の高層団地群の扱いもイマイチはっきりせず、せっかくのロケーションが生かせていない感じがします。さらに、「トモキ」の妻と子が「ミツオ」に殺される川や後半頻繁に出てくる海沿いの住宅なども、それらの地理的関係がはっきりせず、起きること、たくさんたくさんいろんなことが起きますが、それらのリアリティを失わせている感じがしてなりません。
やはり、こういったテーマは、この映画のようにやや高みから描こうとするのではなく、徹底的に個別の事象にこだわり、生きている(死んでいる)人間と同じ地平から迫った方が、あるいは予想もしない何かが生まれてくるのではないかと思います。
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