岸辺の旅/黒沢清監督

深津絵里さんの良さで持っているような映画ですね。やたら大層な音楽が良いのやら悪いのやら…

黒沢清監督の作品を見るのは「トウキョウソナタ」以来でしょうか。

この映画、カンヌの「ある視点」部門で監督賞を受賞していますが、見ての印象は、むしろ深津絵里さんに女優賞をあげたほうがいいような映画ですね。

3年間、失踪していた夫が突然帰ってきた。
だが、夫は「俺、死んだよ」と妻に告げる。 そして、夫が過ごした時間をめぐる、夫婦ふたりの旅がはじまった。

夫の優介がこれまでにお世話になった人々を訪ねて歩くふたり。
旅を続けるうちに、妻の瑞希と優介はそれまで知らずにいた秘密にも触れることになる。

お互いへの深い愛を、「一緒にいたい」という純粋な気持ちを感じ合うふたり。
だが、瑞希が優介を見おくる時は刻一刻と近づいていた─。。(公式サイト

それくらい深津絵里さんがいなければ成り立たない映画です。あの涙目や哀れさや情けなさ(言葉がちょっと違うか?)の表情がなければ映画として成立しないでしょう。

映画全体としては、黒沢清監督の映画と考えれば随分物足りません。

亡くなった夫への未練が断ち切れない瑞希(深津絵里)の元に、夫優介(浅野忠信)が現れ、瑞希の知らない優介の過去を巡る話ですが、3つでしたか4つでしたかのエピソードを並列(ではなく直列ですね)に並べているところが何ともつまらないですね。

もう少し重層的な扱いがあれば瑞希の強い執着からの解放が見えてくるんではないかと思います。ただ、幽霊を現実に存在する人間として描き、全く違和感を感じさせないのはさすがです。

どのエピソードも田舎町や農村が舞台なんですが、やたらエキストラを出していましたね。まあボランティアさんとかいろいろ事情があるんでしょうが、今時、田舎の商店街や田圃や畑にあんなに人はいません。

俳優の話に戻しますが、浅野忠信さん、「PiCNiC」以来見ていますし、けなすつもりで書くわけではありませんが、本当に下手ですね。

演技だけが俳優に求められる素質ではありませんので、だからダメとは思いませんが、話が面白くて村人から人気があるって、あれ嘘でしょう(笑)。「私の男」でもあんな屈折した役柄は無理だと書きましたが、幽霊もダメとなれば何があるんでしょう。

Chara ファンだから言う訳でもありませんが(笑)、そろそろ年齢にふさわしい実力をとは思います。