最後まで子どもの目線からぶれないのが素晴らしい
イ・チャンドン監督が見出したとの謳い文句が目に止まり見てきました。
公式サイトによりますと、ユン・ガウン監督は30代なかばのようで、過去短編で高い評価を受けており、この映画が長編デビュー作とのこと、過去作に対して、「『Guest』で父親の浮気相手の家を探し出す女子高生の一日を生き生きとしたタッチで」とか、「『Sprout』で7歳の少女の初めてのお買い物冒険譚を描き」などとあり、少女たちのリアルな世界に強い思いがあるようです。
この「わたしたち」も少女たちのいじめの問題を描いています。
監督:ユン・ガウン
“いじめ”という目に見えない悪魔に、少女たちはどう向きあうのか──。
名匠イ・チャンドンが認めた 若き女性監督が描く”なかよし”二人の成長の物語。(公式サイト)
冒頭のシーン、特にカメラワークが印象的です。
学校の昼休みか休憩時間でしょうか、子どもたちがドッジボールのようなボール遊びをしています。
その撮り方でこの映画がこれから何をやろうとしているのかがよくわかります。
カメラは、10歳の少女ソンをとらえたまま決して離れることはありません。上半身か全身をとらえるくらいのショットのままソンを追い続けます。
まず、じゃんけん(だと思う)をしてグループ分けしています。その遊びを得意な子から選ばれていきます。ソンは最後まで選ばれません。その様子、ソンの表情がじっととらえ続けられます。ボール遊び全体がとらえられることはありません。ボールの行方が追われることもありません。
ゲームが始まり、当然ボールは右へ左へと行き来しますが、ソンの手に渡ることはありません。ソンを捕らえたままのフレームを子どもたちが右へ左へと行き来します。子どもたちの歓声がかぶります。
ソンにボールがぶつけられます。ソンは為す術もなくボールに当たるだけです。そしてコートから出ていきます。
このシーン、実に切ないです。
ソンは、クラスの中で、ボラを中心としたグルームにのけ者にされいじめられているのです。
でも、明日から夏休み。そんな時、転校生のジアと出会います。ジアはソンの家に泊まったりと、夏休みの間に二人はすっかり仲良しになります。
ところが、たまたまジアが通っている塾にはボラも通っており、夏休みが終わった新学期、ジアはボラのグループに入ってしまいます。
といった感じで、日本でいえば小学4年生の少女たちの(かなりリアルに感じられる)日常が描かれていきます。
ストーリーを詳しく書くことにあまり意味はなく、つまり、この映画はいじめ、いじめられることを善悪でとらえることなく、大人にはほんのちょっとしたことにみえる些細なことで、一瞬にして、その立場が逆転することを見せています。
実際、ジアは、ソンとボラの間で揺れ動きますし、ボラもあることで一瞬にして爪弾きるかもしれない立場に立ったりします。
とにかく、この映画は、そうした言葉では表現できない、この場合は少女ですが、子どもたちのリアルは日常感をとらえています。
大人たちはと言えば、ソンの両親やジアの家族も登場はしますが、一貫して少女たちの目を通した大人たちとして描かれています。
ということで、偉そうな言い方をしますと、なかなかの才能だと思います。
ただ、正直、映画として面白いかといいますと、やや単調という感は免れず、さらにもうひとつ突っ込んだ何かが必要だとは思います。
あるいはドキュメンタリー向きの監督かも知れません。