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ラジオ・コバニ

戦争に勝者などいません。どちらも敗者です。

2018/05/15

シリア内戦は、ウィキペディアによりますとすでに7年、未だ収束の道筋もみえない状態(のよう)です。日々の報道でしか知る由もないので、本当のところ何が起きているかを理解することは大変難しく、どんな報道、どんな発言、どんな映像であれ、ある種フィルターがかかっていないものはないわけで、とにかくできるだけ多くの情報に接するしかないとは思います。

で、この映画は、もともとクルド人地域の街であったコバニが、一時 ISの支配下に置かれ、その後解放され、廃墟と化した街に復興の息吹が芽生え始める様子を、大学生ディロバンが立ち上げた「ラジオ・コパニ」を軸に描かれているドキュメンタリーです。

監督:ラベー・ドスキー

公式サイト

まずは公式サイトから引用しておきます。

トルコとの国境に近いシリア北部のクルド人街コバニは、2014年9月から過激派組織「イスラム国」(IS)の占領下となるも、クルド人民防衛隊(YPG)による激しい迎撃と連合軍の空爆支援により、2015年1月に解放された。人々はコバニに戻って来たが、数カ月にわたる戦闘で街の大半が瓦礫と化してしまった。

そんな中、20歳の大学生ディロバンは、友人とラジオ局を立ち上げ、ラジオ番組「おはよう コバニ」の放送をはじめる。生き残った人々や、戦士、詩人などの声を届ける彼女の番組は、街を再建して未来を築こうとする人々に希望と連帯感をもたらす。

この映画がどのように撮られたかは、映画を見るだけではよくわからないところがあります。

映画は、友達とともに、今まさにラジオ番組「おはようコバニ」をスタートさせようというシーンから始まりますが、ラジオ放送開始前の、まさに ISとクルド人民防衛隊の戦闘シーンや、おそらく防衛隊がコバニを奪還した後だと思いますが、街の瓦礫を重機で片付けるシーンが挿入されています。

ラベー・ドスキー監督自身、「イラク北部のクルディスタン自治区ドホーク県出身」とあり、クルド人だと思われますので、映画化が目的かどうかは分かりませんが、ディロバンさんを知る前からコバニで撮影を続けていたのでしょう。

戦闘シーンはさほど長くはないのですが、生々しいという言葉が薄っぺらく感じるくらい現実感(画として)、実在感があります。

こういう場面の映画を見た時に必ず思うのは、善悪の判断は置いておいて、こういう局面、本当に何かを守らなくてはならなくなった時(があるとして)、自分はこういう風に闘うことができるだろうか、あるいは闘うだろうかということです。

戦闘シーンではクルド人民防衛隊の女性兵士たち、10名くらいの隊の全員が女性兵士の銃撃戦(もあったように思うが…)があり、そういえば、今年はじめにクルド人の女性兵士の遺体が切断される(た?)動画が Youtubeに公開されているという報道がありましたので、ググってみましたら、名前が「バリン・コバニ(Barin Kobani)さん」ということらしいです。

コバニの街を奪還して後のシーンもすごいです。すごいという表現もなんですが、目を見開いたまま固まってしまいます。

重機が、瓦礫を片付けているのか、あるいは死体を片付けているのか分かりませんが、とにかく重機のショベルに死体が無造作にのせられ片付けられる、まさに片付けられるという感じなんです。もちろん扱っている人々にそういう意志があるという意味ではなく、死体は完全に脱力しているわけですから、足や手がぶらんぶらんと、そして生きていては動かない形にぐにゃりと動いてしまうのです。

ショッキングというより、とにかく固まってしまいます。

後半は、コバニが奪還されてからのシーンになり、「コバニの皆さん。”おはよう コバニ”のディロバン・キコです。」と始まるラジオ放送に合わせ、街の子どもたちのシーンやトラックにスピーカーを積んで街中に放送を流すシーン、そうそう、あれは何でしょうね? 塀があって女性たちが幾人も向こう側からこちら側に入ってくるシーンがあったのですが(予告編にある)、コバニに帰還するところなんですかね? よくわからないのですがそうしたシーンが続きます。結婚式や誕生日を祝うシーンもありました。

ただ、そうしたシーンが決して希望を感じさせるわけではなく、その裏には悲しみややるせなさや、あるいはあきらめもあるのかも知れませんが、100年と言わず永久にかも知れない決して消えない何かが残ってしまっているように感じます。

そしてまた、それが終わったことではなく、未だ続いていることですので、何をどう表現すればいいのかわからないというのが、遠く8,600km離れた東の国から思うことです。

ディロバン・キコさんのナレーションは「戦争に勝者などいません。どちらも敗者です。」と、まだ見ぬ未来のわが子、そして全ての子どもたちに語りかけていました。

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