名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN

アメリカ映画のすごさとつまらなさ…

言うまでもありませんが、ボブ・ディラン20歳からの数年を描いた映画です。1961年から1965年までです。ボブ・ディランの実像を知りませんので以下映画としてどうなのかという視点からだけのレビューです。

名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN / 監督:ジェームズ・マンゴールド

アメリカ映画のすごさ…

ボブ・ディランを演じているのはティモシー・シャラメさん、すべて吹き替えなしで本人が歌っています。エンドクレジットに明記されていました。映画のほぼ8割方、ティモシー・シャラメさんの歌と演奏、いや、ギターはどうだかはわかりませんが、仮に演奏は吹き替えだとしてもとにかくあれだけ歌いこなせるというのはすごいです。

他にもジョーン・バエスを演じているモニカ・バルバロさん、ピート・シーガーを演じているエドワード・ノートンさん、ジョニー・キャッシュを演じているボイド・ホルブルックさん、みな吹き替えなしで本人が歌っているそうです。

このことだけでも映画として成立します。こういうことができるのがアメリカ映画ということですね。

とにかく、ティモシー・シャラメさんはすごい!

その一言につきる映画ということで、結局のところ、この映画はボブ・ディランの伝記映画というよりもティモシー・シャラメさんのボブ・ディラン成り切り演技を見る映画、それだけです(ゴメン…)。

アメリカ映画のつまらなさ…

で、どういう映画でしたっけ?

1961年にミネソタからニューヨークに出たボブ・ディラン(ティモシー・シャラメ)が徐々に世に知られる存在となり、ついには街でその姿を見かけられればまたたく間に人だかりができるほどに世に知られることとなり、それがゆえに本人はうんざりし、また人は常に変化するものなのにいつまでも過去の固定化した姿を求められることに抵抗し、つまりはいつまでフォークギター1本で歌うことを強要されることに抵抗してエレキギターで演奏したもののブーイングを浴びたという映画です。

さらにいえば、アメリカ映画ですので、例によって女性も必要ということで事実かどうかは知りませんが、シルヴィ(エル・ファニング)という女性との愛(があるかどうかは知らない…)と別れを入れてみましたという映画です。

つまらないですね、こんなドラマ(ゴメン…)。

ティモシー・シャラメ ファンにとってもは何ものにも代えがたい映画になっているとは思いますが、じゃあ、ボブ・ディランはどこに? という視点でみれば、これ、時代の寵児となったもののそれに反抗したということは語っているものの、じゃあ一体何を求めていたのかとか、何をしたかったのかとか、なぜエレキギターを選んだのかとかはわからないですね。それを描くのが映画だと思いますけどね。

いや、それは音楽が語っているじゃないか、と言われそうですが(笑)そうでしたかね。

なんだか映画に悪意があるような書き方ですが、そんなつもりはなく、この映画のつくりなら、ウィキペディアや腐るほどあるネット上の情報を読みながらCDで本物のボブ・ディランを聞いたほうがいいように思います。

映画には原作があるようですのでそれを読みながらもいいかも知れません。

やはりなにか恨みでもあるような書き方になってしまいました。多分、こうした成り切り型の映画が嫌いなんじゃないかと思います(笑)。

ボブ・ディランに興味が湧いてきた…

映画の話はともかくとして、せっかくですのでこれを機に名前と曲を聞いてタイトルが分かるのは「風に吹かれて」「ミスター・タンブリン・マン」「ライク・ア・ローリング・ストーン」くらいですのでいろいろ読んだり曲も聴いてみようとは思います。

この映画のポイントになっている1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルでの事件(というのも変か…)はウィキペディアの「エレクトリック・ディラン論争(Electric Dylan controversy)」に詳しいです。

マーティン・スコセッシ監督が「ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム」というドキュメンタリーを撮っているようです。まずこれからですね。

映画の中でピート・シーガーの妻として初音映莉子さんが演じていたトシという人物の露出がかなり多かったんでどんな人なんだろうとググってみましたら、映画製作者、プロデューサー、環境活動家と紹介されており、父親はオオタタカシさんという日本人とのことです。

映画では露出のわりにはあまり重要な役割を与えられていませんでしたがそれでもフェスティバルでは尊重されるべき立場とはなっていました。2013年に91歳で亡くなられています。

さらに話は飛びますが初音映莉子さん主演の「月と雷」、映画はともかく初音映莉子さんが強く印象に残っています。

ということで、映画を見たことでボブ・ディランに興味が湧いてきました(笑)。映画にはあれこれ書いてしまいましたが、これも映画の持っている力のひとつですね。

本を読むならまずこれでしょうか。