28歳が撮っても、やっぱり40代のノスタルジー
さすがにこのタイトルですので何も知らずに見に行くことはありませんが(笑)、映画.com あたりの「ヘルタースケルター、リバーズ・エッジ…漫画家…SNSが普及した現代の東京を舞台…」をちらりと見ただけでしたので、何だか妙に古臭い話だなあとの違和感で、見ている間ずっと気になっていたのですが、どういうことかわかりました。
いや、思い出しました(笑)。すでに同じ思いを「リバーズ・エッジ」に書いていました。
原作が1996年の漫画だからでした。
でも考えてみれば、映画が原作にするものって古典だってありますし、何も最近のものだけじゃありません。それらにいつも古さを感じるわけではありませんし、「リバーズ・エッジ」の場合はその時代設定で描かれていますので古さを感じることに違和感はありませんが、この映画は現代の話として描いているのに古さを感じたということですので、何か理由があることになります。
多分、そもそものテーマと人間関係の描き方ですね。
東京湾からバラバラにされた死体が上がり、身元が千脇良子20歳と判明します。その女性は、ミキ(門脇麦)たちが、いつもつるんで(という言葉がピッタリの人間関係)遊んでいた男女10人くらいのうちのひとり「チワワちゃん」とわかります。ミキは自分がチワワちゃんのことを何も知らないことに気づき、仲間たちに聞いてまわります。
私は一瞬、ラスト近くでヨシダ(成田凌)が犯人かと思いましたが(笑)、犯人探しの映画ではありませんでした。ミキが友達から話を聞くことでチワワちゃんをめぐる物語が描かれていくという展開の映画でした。
ということなんですが、ただ、私が見落としているのか、なぜミキが特別チワワちゃんのことを皆に聞いて回るのかの理由づけもあったのかなかったのかわからず、いつの間にか(ナレーションがあったかも?)クラブでヨシダにナンパされたチワワちゃんが仲間に加わるシーンになり、VIPルームから600万円を盗み、皆で豪遊し、3日で使い果たしてしまうという昔話になっていました。
まあいいんですけど(笑)、メリハリがないですわね。
その後どこかでミキが週刊誌の記者に取材されるシーンがあり、公式サイトにもそれらしき記述がありますので、それが皆に聞いて回るきっかけだったのかも知れません。
ということで明かされるチワワちゃんの人物像はと言えば、いつも笑顔、誰とでも等距離、喜怒哀楽のうち、喜が99%、哀が1%程度の人物として描かれています。非難の意味ではありませんが、空っぽのキャラクターです。
誤解があるといけませんので補足しておきますと、(私が)映画から感じたチワワちゃんのキャラクターであり、原作がどうこうではありません。また、そうは見えてもそうではないチワワちゃんを描くことが本来の意図であったかも知れないとは思います。
具体的な物語としては、ミキが素人モデルをやっていたことからチワワちゃんもモデルを始め、今でいうブレイクし街中にチワワちゃんが溢れるほどの人気者になり、有名おっちゃんカメラマンの口説き文句に落とされ付き合うようになり、そのうちヤバイ人と付き合うようになり、AVにも出演、でも笑顔は欠かさず、ついには仲間たちのところを転々として、借金もし、死体になる前2,3日前に会ったという仲間によれば、今付き合っている人のための料理本を買いに来たとのこと…、そういう話です。
2019年の今、このチワワちゃんって、興味をそそるほどに魅力的?
バブルが崩壊していく、まさに1996年ごろの人物像でしょう。
ということで、ひとつだけラストに浮かび上がってきたことがあるとすれば、バブリーな「青春への郷愁」でしょう。二宮健監督、まだ28歳ですので青春に郷愁を感じることはないでしょうから、この映画を企画し、プロデュースした人たちの「あの頃」への郷愁が感じられる映画ではありました。
二宮健監督、初めてみましたが、この映画ではどういう指向を持った監督かはつかめなかったです。映像的にも新しさやインパクトありませんでしたし、物語の語り口も特徴は感じられませんでした。
横浜聡子監督とか、タナダユキ監督とか、井口奈己監督が撮ればよかったのにと思います。