マチルダ 禁断の恋

歴史大作かと思いきや、ドタバタ恋愛ADVのようでした。重厚な歴史ドラマを期待していったのですが、バラエティのような映画でした(笑)。

マチルダ 禁断の恋
公式サイト / 監督:アレクセイ・ウチーチェリ

多少は歴史ドラマの趣もありますが、突然下世話な恋愛ドラマになったり、おいおいオカルトかい?と思わせたり、何?スポ根もの?(バレエだけどね)とか、何だスペクタルなのねとか、結局アクションものか? いやいや、やっぱり歴史には逆らえないからねと、何もなかったように終わってしまいました(笑)。

ニコライ二世と言えば、ロシア革命で処刑(だったかな?)されたことや、日本に来て大津で襲われたことくらいしか浮かびませんが、ウィキペディアを見ますと、実際に、この映画の題材になっているマチルダという女性の愛人がいたようです。

そのマチルダ、マチルダ・クシェシンスカヤといって、マリインスキー・バレエ団のプリマだったそうです。(ウィキペディア

映画よりウィキペディアを読むほうが面白いですね(笑)。

で、映画は、そのニコライ二世(ラース・アイディンガー)とマチルダ(ミハリナ・オリシャンスカ)の関係を、真実の愛として悲恋物語にしようとしたの(かどうか、実は不明)だとは思いますが、何がどうしてどうなっているのか全くわからないままに、何やらドタバタとまでは言わないまでも、とにかく首尾一貫しない散漫なドラマになっています。

まあ結局、悲恋物語に仕上げようとしたものの、如何せん史実は曲げれませんので、いっとき皇帝の座を捨てようとしたものの、ついにはあきらめざるを得なかったことをドラマチックにしようと四苦八苦して作り上げたのだと思います。

ただ、冒頭の列車事故のスペクタクルからニコライとマチルダの出会いのシーンまではかなり期待を持たせました。

父でもある、時の皇帝アレクサンドル三世や家族とともに列車で移動するシーンから始まります。結構迫力がありました。列車は事故にあい脱線します。ニコライは車外に投げ出されていましたが、父は車内に残され、自ら列車の屋根を支えて子供たちを脱出させていました。

この逸話、ウィキペディアによりますと実際にあった話のようで、その怪我がもとでアレクサンドル三世は腎不全の病に陥ったとあります。

1888年10月29日、アレクサンドルが乗った御召列車がボルキで脱線事故を起こした。事故当時、アレクサンドル一家は食堂車におり、彼は崩れ落ちる屋根から子供たちを守るため覆い被さり車外に逃がした。この時に負った怪我が原因で、後年アレクサンドルは腎不全を発症することになる。(ウィキペディア

映画では車椅子を使っていました。

続いて、マチルダとの出会いです。

マリインスキー・バレエ団の舞台をニコライたちが見ています。マチルダにはライバルがいます。そのライバルが舞台袖でマチルダの肩紐を緩めます。踊り始めたマチルダの肩紐が解け片胸がはだけます。マチルダは臆することなく踊り続けます。

シーン変わって、二人の密会のような場面になるのですが、あれはマチルダが自分の部屋にいるときにニコライがやってきたんでしたっけ? ま、間違っているかもしれませんが、とにかく、ベッドに座り、いきなりニコライがマチルダの上着(ブラウスのようなもの)の前紐をほどき始めます。

なにー!? いきなりかい、と思いましたが、そうではなくプレゼントのブレスレットをかけるためでした(笑)。

でもまあ、愛人になれみたいなことですから一緒なんですが、それに対するマチルダがかっこいいんです。押し倒されたわけではないのですが、ニコライがマチルダに覆いかぶさるようになっている体勢からぐるりと反転し、「あなたの望みを叶えてあげてもいいわ。でも、あなたは決して私を忘れられなくなるのよ。私以外の女性を愛せなくなるわ。(適当に作った)」といったセリフを吐き、ブレスレットをベッドの上に投げ捨てるのです。

おお、かっこいい!

と思いましたが、ここだけでした(笑)。

この映画がダメなところは人物のキャラクターがシーンごとにコロコロ変わるところです。時間とともに変化していくのではなく、ジグザグ模様みたいなものであっちへ行ったりこっちへ行ったりする感じです。マチルダだけではなく、ニコライもそうです。

とにかく、このあたりまで、15分か20分は相当期待できましたが、この後はもういろんな人物が入り乱れてほぼバラエティでした。

マチルダのライバルのダンサーとその愛人、一方的なのかどうなのかよくわからないマチルダに好意を持っている大尉、この大尉は嫉妬からなのか、ニコライを襲い、逮捕され、絞首刑になるところを、意味不明の博士の(何のかわからない)実験台にされ、水槽でぶくぶくやっていましたし(笑)、ニコライの婚約者、この人物もよくわからない人物で、降霊術師のもとに行ってなにかやっていましたし、ニコライの母親、ニコライの親友? ああ、もう何だかわかりません(笑)。

いやいや、というほどわかりにくいわけではなく、物語はわかるのですが、何やってるのこの人? さっきのシーンとどうつながる? みたいなハテナ、ハテナがシーンが変わるごとにやってくるのです。

ですから、途中何があったかもう記憶していません(笑)。

ラスト、皇帝の座を捨てマチルダとともに生きる道を決心したニコライですが、例の片思いの大尉がマチルダを襲い、二人が炎の中でもがいているところ、そして爆発するところを目撃し、マチルダが死んだものと思い、婚約者と結婚し皇帝の座に就くことを受け入れます。

ところが戴冠式の日、マチルダが現れます。マチルダを見たニコライは突然倒れます。あれは失神? あれしか映画的に方法がなかったんでしょうね(笑)。

で、マチルダは…。その後どうしたのか記憶が飛んでしまっています。

あらためてウィキペディアを読んで思い出しました。多分、ニコライの手助けをしたり、ちらちらとマチルダへの好意を見せていた男、上に親友とかいた人物は、史実上、後にパリで結婚したロマノフ家の大公アンドレイで、映画でも、戴冠式の場から追われるようにして二人でパリへ向かったんだと思います。

史実と言えば、その戴冠式の祝賀行事の際に「ホディンカの惨事」という事故があったらしく、それを映画のラストにしていました。ウィキペディアからの引用です。

戴冠式の数日後、モスクワ郊外のホディンカ(Ходынка)の平原に設けられた即位記念の記念祝賀会場(飲み物とパン、それに記念品が配布されると告知された)に来訪した50万に達する大群衆の中で順番待ちの混乱から将棋倒し事故が発生し、多数が圧死・負傷するという事件が起こった(ホディンカの惨事)。この事故は約1,400名の死者と1,300名を越す重傷者(その大半は重度障害者となった)を出した

この事故を再現して、その惨状を視察するニコライが嘆き悲しむシーンで映画は終わっていました。そういえば、ニコライが花火を上げていました。

はあ!?

という映画です。はっきりいって下手くそです。

ところで、マチルダをやっていたミハリナ・オリシャンスカさん、ポーランドの不思議な映画「ゆれる人魚」の妹をやっていた俳優さんです。抜擢されたということなんでしょうか。

ゆれる人魚(字幕版)

ゆれる人魚(字幕版)