リアリティ

よくできた再現ドラマで終わらないために…

ドナルド・トランプが大統領に選ばれた選挙(2016年…)にロシアが介入したのではないかという報道は記憶していますが、この映画のような事実があったことは知りませんでした。日本の大手メディア、特に新聞は報道していたのでしょうか。

リアリティ / 監督:ティナ・サッター

ChatGPT にきいてみた…

事件の概要を ChatGPT にまとめてもらおうと日本語で「リアリティ・ウィナーの事件の概要を教えて」と入れてみましたら、「残念ながら、「リアリティ・ウィナーの事件」についての情報は私のデータベースには含まれていません」と答えてきました。

え? どういうことと思い、じゃあということで「Reality Winnerについて教えて」と入れましたら、

リアリティ・ウィナー(Reality Winner)は、アメリカ合衆国の元国家安全保障機関(NSA)の諜報分析官であり、2017年にリーク事件に関与したことで注目されました。

彼女は、2017年に国家安全保障局(NSA)から情報を取得し、それを報道機関に提供した容疑で逮捕されました。具体的には、彼女がNSAから取得したとされる文書が、ロシアによるアメリカの選挙干渉に関するものであり、この情報は2016年のアメリカ合衆国大統領選挙において、ロシアが干渉していた可能性を示唆していました。

2017年6月にウィナーは逮捕され、同年8月には起訴されました。彼女は合意に基づく有罪の罪を認め、2018年8月に懲役5年6か月の刑を宣告されました。ウィナーはリークした文書についての懸念を表明し、自身が「善悪の戦い」に巻き込まれたと述べています。その後、ウィナーは刑務所に服役しています。

ChatGPT

と答えてきました。

その後、再度日本語で「リアリティ・ウィナーの事件の概要を教えて」と最初とまったく同じ質問を入れましたら、今度は以下のようにリスト形式に整理して答えてきました。「リアリティ・ウィナー」が「Reality Winner」であることを学んだ(紐付けられた…)ということなんでしょうか。

リアリティ・ウィナー(Reality Winner)は、アメリカ合衆国の元国家安全保障機関(NSA)の諜報分析官であり、2017年に機密情報のリークに関与したことで知られています。以下は、彼女の事件の概要です。

  1. 逮捕と起訴: 2017年6月3日、リアリティ・ウィナーはジョージア州で逮捕されました。彼女はNSAから機密情報を取得し、それを報道機関に提供した容疑で起訴されました。
  2. リークされた情報: ウィナーがリークした文書は、ロシアによるアメリカの選挙干渉に関するものでした。この文書は、ロシアが2016年のアメリカ合衆国大統領選挙において、不正活動を行っていた可能性を示唆していました。
  3. 報道と反応: リークされた情報が報道されると、国内外で大きな注目を浴びました。文書は、ロシアが選挙プロセスに介入していたことに対するアメリカ政府の公式立場とは異なる情報を含んでいました。
  4. 有罪の認め入れと判決: ウィナーは合意に基づく有罪を認め、2018年8月には懲役5年6か月の刑を言い渡されました。彼女は、自らの行動が公共の利益にかなったと主張しました。
  5. 刑務所入り: リアリティ・ウィナーはその後、アメリカの刑務所で服役しています。彼女の事件は、機密情報の保護と国家安全保障に関する重要な議論を引き起こしました。
ChatGPT

その後も同じ質問を繰り返す度に少しずつ変化していきます。

最初の日本語の質問に対してデータがないと答えてきたのは、日本語のデータを持っていなかったということであり、それは日本ではほとんど報道されなかったことを示しているのではないかと思います(想像です…)。

なお、ChatGPT は教えてくれませんでしたが、リアリティ・ウィナーは2021年6月に釈放されて2024年11月まで保護観察中とのことです。

よくできた再現ドラマ…

というリアリティ・ウィナーさんが、自宅前および室内で FBI捜査官の尋問を受けて逮捕されるまでの何時間か(どれくらいだったんだろう…)を FBIの尋問記録に基づいて再現した映画です。

これですね、何カットかこのドキュメントを撮った画が挿入されていました。

監督であるティナ・サッターさんは、演劇の脚本家、演出家であり、この映画も、この尋問記録を使った自身のブロードウェイデビュー作である「Is This a Room」の映画化ということです。

これは舞台劇のほうが緊迫感が有効に働いてかなり面白いのじゃないかと思います。映画でも緊迫感はそこそこは感じられますが、やはり会話劇は生身の人間の熱量を肌で感じられる舞台劇にまさるものはないでしょう。

それにしても、リアリティ・ウィナーさん、名前が「真実の勝者」というのも、なんと言いますか、名前が人格形成に影響することがありうるかのようで不思議な事件です。

2017年6月3日、アメリカ国家安全保障局(NSA)の契約社員リアリティ・ウィナー(シドニー・スウィーニー)が買い物をして車で家に戻りますと、突然コンコンコンと車の窓が叩かれます。

ビクッとします(見ている私も…)。促されて車から降りますと、二人の男が待ち受けており、それぞれギャリック(ジョシュ・ハミルトン)とテイラー(マーチャント・デイヴィス)と名乗り、FBI捜査官のバッジを見せます。

そして、長ーい尋問が始まります。

尋問記録には台詞だけではなくノイズや笑いといった、これがシナリオであればト書きといえるものまで記載されていますので、完全かどうかまではわかりませんが、それらが再現されていきます。

とは言っても、音声そのものが公開されているわけではありません(未確認…)ので、当然のことながら、言葉のニュアンスや人物の立ち振舞はすべて演出であり演技です。当たり前ですが、映画から感じられるリアリティの心理状態や FBI捜査官の圧迫的対応はティナ・サッター監督によって脚色された表現です。

リアリティが弁護士対応を要求していないことや令状の提示を求めていないことなどからしますともっと圧迫感はひどかったかもしれません。

とにかく、家の前、屋外での尋問の会話内容は、リアリティが飼っている犬や猫や買い物した食料品の話なのに、その会話そのものには現れない圧迫感がとてもうまく表現されています。リアリティがちょっと動こうとしますと、すっと誰かがその前に出て行く手を遮ったりします。

その間、家の中では他の捜査官が家宅捜索しているわけで、大きな男たちが無言で後ろを行き来しますし、ドアの開け閉めの音がバタンとしたりして、リアリティが徐々に精神的に追い詰められていきます。

Is this-is this a room? ls that a room?

そして、リアリティは室内に誘導されていきます。それも、本人が気持ち悪いので使っていないという何もない部屋にです。捜査官の誘導によるものとは言え、その部屋を選んだのはリアリティ本人です。

なんだか不思議な感じですが、人間の心理の一端を現していることかもしれません。この事件のことではありませんが、長い尋問によってやってもいないことをやったと言ってしまうという冤罪の心理的メカニズムが思い浮かんできます。

ティナ・サッター監督が舞台劇のタイトルを「Is This a Room」としているのもこの状態になにか感じることがあるのかもしれません。このタイトルはリアリティが尋問されている部屋のことではなく、他の部屋を捜索している Unknown Male(名前の分からない捜査官)が発した「Is this-is this a room? ls that a room?」から取られています。

直訳すれば「これは、これは部屋か? あれは部屋か?」で、この言葉そのものには大した意味はないとは思いますが、その後、ギャリック捜査官が「それで、どうやってそれをオフィスから持ち出したのか?」と尋ねますと、リアリティは「二つ折りにしてパンストに入れた」と決定的なことを答えます。

そして、結局、持ち出した機密情報を封筒に入れてインターセプト(The Intercept)宛投函したと白状してしまいます。

逮捕の実行だけは、ボディチェックがあるということもあるのでしょう、女性捜査官でしたが、他は全員男性捜査官でした。

映画のポイントがよくわからない…

という映画なんですが、正直なところ何をしたかった映画なのかはよくわかりません。

FBIの捜査には違法性があるように思いますが、それを告発しようとしているわけでもありませんし、リアリティの犯罪を糾弾しているわけでもなさそうです。

実際の尋問記録をシナリオにして時系列で描いていますので、どうしてもこれ以上のものにできないということなんでしょう。この手法で過剰な演出をしたら陳腐なだけですのでこれで正解だとは思いますが、やはり舞台ほどの緊迫感は出せなかったということだと思います。

ただ、もう少しリアリティ・ウィナーの人物像を明確に出せればよかったのにと思います。これですと機密漏洩の動機もわかりませんし、それゆえリアリティの人物像もはっきりしないままの映画になっています。