サブスタンス

ボディ・ちょっとだけホラー・コメディ…

見ました(笑)!

へー、この映画、昨年のカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞しているんですか?! 他にもアカデミー賞やゴールデングローブ賞でなにか受賞しているようです。脚本、監督はフランスのコラリー・ファルジャ監督、初めて見ます。

サブスタンス / 監督:コラリー・ファルジャ

ボディ・ちょっとだけホラー・コメディ…

ホラーにもいろいろサブジャンルがあって、こういう人間の体がグチャグチャグチャと変容していくのをボディ・ホラーというらしいです。

ああ、変容していくだけじゃダメですね。ホラーなんですからそのことに恐怖がないといけないです。

でも、この「サブスタンス」には恐怖はありません。

コメディです。私の映画体験ではほとんど見てきていないジャンルですのでどうこう言えませんが、それでも迷いなくホラーではありません(笑)。

ボディ・ちょっとだけホラー・コメディということじゃないかと思います。

そうしたジャンルはともかくとして、また面白いかどうかも置いておいて、この映画、迷いなく徹底してやっていることは評価できると思います。

このストーリーの先が読めない人はいない…

ストーリーは、人気俳優の、といっても映画の中ではダンスエクササイズをやっているだけですが、エリザベス(デミ・ムーア)は50歳を越え、プロデューサーから降板を言い渡されます。そのショックから交通事故を起こし、入院した先の病院の看護師(多分…)から「サブスタンス」という怪しげな人体再生医療を教わります。

降板の件だけではなく、エリザベス自身も「美」と「若さ」の喪失に恐れを抱いており、手を出してしまいます。

エリザベスが「サブスタンス」を接種しますと、エリザベスの体の中から「美」と「若さ」を持ったスーが誕生します。スーはエリザベスの中から別人体として誕生するパターンであり、背中が開かれたエリザベスはそのまま仮死状態で残り、スーも完全なる人体として存在する状態です。

スーはプロデューサから認められエリザベスの後釜として採用され、その「美」と「若さ」でまたたく間に人気俳優になります。といってもダンスエクササイズのシーンしかありません。それもかなり男性向けのエロ系カット割りがされています。多分、何かの皮肉でしょう。

「サブスタンス」にはルールがあります。摂取は一回きりしかダメで、必ず7日ごとにエリザベスとスーは交代する必要があります。スーが常態を保つためにはエリザベスから安定液を採らなくてはいけません。採血みたいなものです。

もうこれでどうなるかはわかりますね。そうです。スーがルールを破り7日以上に安定液を採取するようになります。その度ごとにエリザベスは老化し、「バケモノ」化していきます。

いくども「ふたりはひとりだ」と言われているにもかかわらず、エリザベスとスーは言い争うようになり、ついにエリザベスは治療中止の決心をし、その処置をしようとしますが最後の最後に「美」と「若さ」の誘惑にかられてその選択をできずスーを再生させてしまいます。

そして、エンディング、大晦日です。スーは超人気番組(紅白歌合戦みたいなもの…)の司会に大抜擢されています。しかし、本番直前安定液が切れ、歯は抜ける、爪は剥がれる状態になり、急いで家に戻り、残っていた(なぜ?…)「サブスタンス」を摂取します。

完全に「バケモノ」化したエリザベス+スーは大晦日のショーの舞台で、これが私だ! と(違ったかも…)叫びながら、客席のプロデューサーやセレブ、そしてステージ上の出演者に自らの血をぶちまけるのです。

本当にホースで血を撒き散らしていました。コラリー・ファルジャ監督はこれがやりたかったみたいです(笑)。21,000 liters(Wikipedia)の血もどきを撒き散らしたそうです。

脚本賞の理由?…

Wikipedia によれば、コラリー・ファルジャ監督はアメリカでの「リベンジ(2017)」の成功後、マーベルから「ブラック・ウィドウ」の監督を打診されたが断ったそうです。最終編集権がないことがその理由のようです。

この「サブスタンス」では自らプロデューサーに就任しています。この映画ではやりたいことが出来ているということでしょう。

ところでカンヌでの脚本賞受賞ですが、率直なところこの映画で脚本賞? という気がします。なにか賞をあげるべきと思っても適当なものがないということもある(かな?…)でしょうから一概に脚本が素晴らしいということではないかもしれませんが、この映画なら基本プロットだけでつくれそうに思います(ゴメン…)。

で、再び Wikipedia からですが、この映画のシナリオは146ページにおよび、そのうち台詞部分は29ページだそうです。小説を書いたようなものだとも言っているそうです。

脚本賞はそれゆえでしょうか。

批評性はありますので気持ちは維持して見ていけますが、さすがに基本プロットが単純過ぎるとは思います。