アレクサンドル・デュマ著『モンテ・クリスト伯』、子ども向け『巌窟王』の映画化…
話はなんとなく知っているのに大もとの小説は読んだことがないというものが結構あります。これもそのひとつ、アレクサンドル・デュマ著『モンテ・クリスト伯』の映画化です。子ども向けの『巌窟王』を読んだことがあるのか、あるいは雑多な情報からでしょうか。

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ネタバレあらすじ
これを機に原作を読むかというほど生易しい分量ではないですね。岩波文庫で全7冊です。
やむを得ずウィキペディアなどを読んでみたところでは、大筋は原作通りですがかなり端折られていたり、設定変更がされているようです。仕方ないですね、登場人物も相当数でそれぞれの関係もかなり入り組んでいます。英語版のウィキペディアに人物の相関図がありました。
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Countofmontecristorelations.jpg: The original uploader was Sciguy2013 at English Wikipedia..Later version(s) were uploaded by Micromaster at en.wikipedia.derivative work: RicHard-59, CC BY-SA 1.0, via Wikimedia Commons
映画では主要な登場人物を10人くらいに絞って描いています。わかりやすくはなっているんでしょうが、その分、脱獄してからの復讐のくだりがあっさりし過ぎているんじゃないかと思います。復讐ものとしてはスカッとするところがなく尻すぼみで終わっています。
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ダンテス、裏切られ投獄される
嵐の海から始まります。主人公の航海士エドモンド・ダンテス(ピエール・ニネ)の乗った船が難破船に遭遇し、ダンテスは船長ダングラール(パトリック・ミル)の静止も聞かず海に飛び込みアンジェラと名乗る女性を助けます。ダングラールはアンジェラがナポレオンの密書を持っていることを発見します。
船がマルセーユに帰港します。船主モレルは海難救助を行おうとしなかったダングラールを解雇し、ダンテスを船長に任命します。
ダングラール、ダンテスを逆恨みする一人目です。
ダンテスが家に戻ります。まずメルセデス(アナイス・ドゥムースティエ)のもとに向かい愛を交わします。メルセデスには従兄弟のフェルナン(バスティアン・ブイヨン)がいます。メルセデスとフェルナンの家は裕福(ということだと思う…)で、ダンテスの家はそうではなく、ダンテスの帰還祝いの食事会ではダンテスの父親が食事のサーブをしています。その食事会の席でダンテスはメルセデスとの婚約を発表します。陽気に振る舞っていたフェルナンの表情が一気に不機嫌になります。
メルセデスに好意を持っていたフェルナン、ダンテスを逆恨みする二人目です。
ダンテスとメルセデスの結婚式当日、ダンテスが逮捕されます。容疑はダンテスの聖書からナポレオンの密書が発見されたことです。ダングラールが売ったということです。検事ヴィルフォール(ロラン・ラフィット)はダンテスを問いただします。ダンテスは女性を助けただけで何も知らないと答えます。しかし、ダンテスがその女性の名をアンジェラと答えた瞬間、ヴィルフォールの顔つきが険しくなります。実はアンジェラはヴィルフォールの妹であり、王党派(ブルボン朝…)であるヴィルフォールは妹が帝政派(ボナパルト派…)であることを知り、自分の地位が危うくなることを恐れたということです。
ヴィルフォール、自己保身のためダンテスを無き者にしたい三人目です。
フェルナンはヴィルフォールの求めに応じ、ダンテスが帝政派であるとの文書に署名します。
そして、22歳のダンテスはマルセイユ沖4kmの島の要塞イフ城に投獄されます。
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ダンテス、脱獄し復讐の鬼となる
4年経ったある日、コンコンという音に気づきます。誰かが壁を掘ってダンテスの牢獄の近くまで来ているようです。ダンテスも壁の石積みを崩し、そして音の主ファリア司祭と出会います。
ファリア司祭は生きる望みを失いかけていたダンテスをともに脱獄しようと勇気づけます。そして6年(と言っていたと思う…)、ダンテスは穴掘りとともにファリア司祭からあらゆる学問と数ヵ国語を学びます。
そうしたある日、岩の隙間から塩水が湧いてきます。歓喜する二人です。しかしその時掘り進んだ穴が崩れファリア司祭が犠牲になります。ファリア司祭はダンテスにテンプル騎士団の財宝のありかを教えて息を引き取ります。
ファリア司祭の死体が埋葬袋に入れられ海に投げ捨てられます。しかし袋の中に入っていたのはダンテスです。無実の罪で投獄されて10年(原作は14年…)、ついにダンテスは脱獄に成功します。
ダンテスはテンプル騎士団の財宝を手にし、そして復讐の鬼となります。
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ダンテス、モンテ・クリスト伯となる
この後の経緯や場所はあまり明確にされていませんでしたが、ダンテスは入念に復讐計画を立てます。
まず、アンジェラを探し出します。実はアンジェラはダンテスが自分の持っていた密書によって投獄されていることを知り、兄ヴィルフォールに会い、ダンテスの無実を晴らそうとしていたのです。しかし、ヴィルフォールはアンジェラを拘束して売春宿に売り飛ばしたということです。
どういうこと? とは思いますがとにかく、一旦抜け出したアンジェラは兄に復讐しようと屋敷に忍び込み潜んでいますと、兄が小箱を地中に埋めるのを目撃します。掘り返しますと箱の中には生まれたばかりの赤ん坊がいます。ヴィルフォールとその愛人(名前不明…)の子どもです。
アンジェラがその赤ん坊をどうしたのかも描かれていなかったと思いますが、ダンテスはその子アンドレ(ジュリアン・ドゥ・サン・ジャン)を探し出し、公爵として教育します。
そしてもうひとりの仲間、エデ(アナマリア・ヴァルトロメイ)が登場します。結構重要な役なんですが突然登場していました。後に説明されますが、軍人となったフェルナンに父親を殺された恨みがあるということのようです。
そして9年が経ち、ダンテスはモンテ・クリスト伯としてマルセイユに戻ってきます。
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ダンテス、復讐する
復讐する3人はそれぞれ社会的成功をおさめています。
ダングラールは、船主モレルの会社を乗っ取ったのか、船会社のオーナーになり男爵です。また、ヴィルフォールの愛人であった女性を妻にしています。
ヴィルフォールは検察官として出世しています。爵位はよくわかりません。
フェルナンは軍人として武勲を上げ出世し伯爵となっています。メルセデスを妻にし、息子アルベール(ヴァシリ・シュナイダー)がいます。
当然この復讐のくだりが見せ場だとは思いますが、細かく描くほど記憶していませんので結末だけです。それに原作に比べますとかなり端折られているようです。復讐の基本的な手法としては、突然現れた裕福なイタリアの伯爵としてのミステリアスさとファリア司祭から学んだ知識や数ヵ国語を話す知性で信頼させ、つかず離れずの立ち位置を取り、復讐相手の方から頼らせ、そしてはしごを外すってやつです。ダンテスの演じているピエール・ニネさんはいい感じではありました。
ダングラールを破産させます。ダングラールの持ち船が盗まれたとの偽情報を出し、船会社の株価を暴落させ、偽情報とのインサイダー情報をダングラールに与え、底値のうちに株を買おうとするダングラールに全財産を担保させて大金を融資し、その後実際に持ち船を盗み、船会社を破産させた上に全財産を奪い取ります。
ヴィルフォールは裁判(インサイダー情報の裁判だったか?…)に検事として立った最中にアンドレが自ら証人席に立ち、自分はヴィルフォールが愛人に産ませ、そして生き埋めにしようとした子どもだと明かし、ヴィルフォールを嬰児殺しの犯罪人とします。
しかしそれだけでは終わらず、ダンテスにも予想外のことが起きます。アンドレはヴィルフォールを刺殺し、アンドレも撃たれて死んでしまいます。
フェルナンはちょっとややこしいです。まず、エデにアルベールを誘惑させ夢中にさせます。それで何をしようとしたのかわからないままに(笑)、エデもアルベールを愛するようになってしまい、ダンテスを含めた3人でああだこうだともめているときにアルベールがダンテスに決闘を申し込み、その決闘は始まったもののその結果も曖昧なまま、その後、アルベールとエデはダンテスにも許されて旅立っていき、最後のダンテスとフェルナンのくどいくらいの争いがあり、フェルナンは死にました(だったと思いますが記憶が曖昧…)。
ダンテスも刺されているのですが、船で旅立っていきました。
メルセデスも重要な役なんですが、最後、どうなったのか記憶がありません。メルセデスだけはモンテ・クリスト伯がダンテスではないかと半信半疑ながら気づいており、迷いのシーンもありましたが、とにかく中途半端ではありました。
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感想、考察:待ち、そして希望せよ!
原作から大きく改変している点は、まずヴィルフォールの妹アンジェラの創作です。原作では、ダンテスは船長の死後、その遺言でナポレオンの密書(のようなもの?…)を託されています。アンジェラは完全なる映画の創作です。
ヴィルフォールが密書により自分の身が危うくなることを案じた訳は密書の宛先が自分の父親だったためです。父親を妹アンジェラに変えたということです。
ダンテスが脱獄した後の経緯はかなり省略されているようです。ファリア司祭に教わる財宝もテンプル騎士団のものではないようですし、それを手に入れる経緯やイタリアで伯爵の爵位を手に入れるくだりも省略されています。
復讐の経緯はかなり改変されているようです。
そして一番の改変はエデです。原作ではエデはダンテスを愛しており、最後、アルベールではなくダンテスと旅立っていきます。
映画の意図としてはダンテスの孤独さを際立たせるためなのかも知れません。
エデを演じているのは「あのこと」のアナマリア・ヴァルトロメイです。随分印象が違い気づきませんでした。
ウィキペディアによれば、原作の最後には決め台詞があるようです。
The reader is left with a final line: “l’humaine sagesse était tout entière dans ces deux mots: attendre et espérer!” (“all human wisdom is contained in these two words: ‘Wait and Hope'”).
(The_Count_of_Monte_Cristo)
人類の知恵はこの二つの言葉に要約される「待ち、そして希望せよ」
耐え忍べばやがて報われるということなんでしょうか。