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時々ハリウッドも良い映画をつくりますね。
って、ハリウッドを一括りにするのもなんですが、こういった巨大組織(CIA)と人間の葛藤がテーマの映画には、それなりにスケールの大きさとか映画業界全体の層の厚さみたいなものが必要なんでしょうか。ハリウッド以外でつくられるこの手のものは、なんか重厚さに欠けるような気がします。
ところで、映画の話の前に映画館の話をちょこっと…。
この映画を観たのは、名古屋駅前の某高層ビルにある某シネコン、7スクリーンの内のひとつなんですが、通路が片側1本しかないんです。1列15席くらいですので、まあいいのかなとも思いますが、端は壁にぴったりくっついており、私は壁から3席目だったのですが、それでも壁の圧迫感が気になり、なんだか落ち着けない劇場でした。火事になったら怖いよなあと思ってしまいました。
その上、誰も来ないだろうと思っていたその壁側2席に、予告編の最中に年配のカップルがやってきたんです。両側に人がいる席が苦手な私には益々圧迫感がつのり、さらにその二人が、本編が始まっても、なにやらホットドッグのようなものを食べているんです。気にしているのか音を立てないようにしているようなんですが、カサカサ、カサカサって、かえってその微妙な音が気になって仕方がなかったんです。
で、映画ですが、出だしの10分くらいは非常につかみにくいです。似たような人物がどっと出てくる上に、現在と過去が何度も切り替わりながら進むんです。その上、先のカサカサですから、ほんとのところ、この先3時間、映画に入れなかったらどうしようかと思ったくらいです。
でも、そんな心配は無用でした。決して、そのよく分からない人物たちや関係がどこかではっきりするわけではなく、同じようなペースで坦々と進むんですが、この人誰だっけとか、そんなことはあまり気にならず、なぜか集中力も途切れずに最後までいけるんですね。そこらあたり、監督のロバート・デ・ニーロの力なんでしょうか。
第二次大戦中の対ナチ諜報活動から1960年頃のキューバ革命に至るCIAの成立過程とそこに立ち会ったひとりの諜報部員が描かれていくわけですから、当然様々な事件やそれに関わる多くの人物が登場してきます。よほど集中していないと、すべてを理解することは難しいでしょう。
でも映画は、それらを説明したり、つじつまを合わせることに、それほど力を注いでいないようです。むしろ曖昧なままに放っておくことで(意図しているとは思えませんが…)、組織というものの本質に迫ろうとしているようにもみえます。
もちろん、映画の軸となるものははっきりとしています。家族です。マット・デイモン演じるCIAのエージェント、エドワード・ウィルソン、アンジェリーナ・ジョリー演じる妻のクローバー、そして息子のエドワード・ウィルソン・ジュニアの三人が、社会の暗部ともいえるCIAという巨大組織に翻弄されていきます。ピッグス湾事件という歴史的事件の真相がこの家族の葛藤とからめて描かれていくわけですが、このあたりは結構うまいです。脚本は、「ミュンヘン」「アポロ13」「フォレストガンプ」などのエリック・ロスという人です。
この映画がとても良いと思えるのは、この組織と個人(家族)の関係を、組織が個人に抑圧的に働くという描き方ではなく、むしろ個人が組織の一員であろうとするとどうしても自己否定的、自己分裂的に振る舞わざるを得ない様がうまく描かれているからです。
ラストシーン、そうした組織というものの得体の知れなさや
その中に生きる人間の弱さや苦悩やそして冷酷さが浮き上がってきます。
組織によって起きることは常に曖昧です。誰がどうしたからどうなったなんてことがはっきりすることはありません。これは、我々の生きている社会でも同じでしょう。
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