こんないい映画を見逃していたなんて…残念。
コッポラらしい、そして実に映画らしい映画でした!
内容は、過ぎ去った自らの人生を悔やみ、失意の中にある老年の言語学者ドミニクが、ある日、雷に打たれ、全知とも言える頭脳と若さを得て復活し、言語の起源をたどる研究を続けるというものですが、その過程に、昔愛した女性に似たヴェロニカとの出会いと別れやヨーロッパ全土を覆い尽くしていくナチスの暗い陰が描かれ、とても重厚なものとなっています。
若返るといいますと、ベンジャミン・バトンなんていう映画もありましたが、どうなんでしょう、似ているんでしょうか?見ていないので分かりません。
なぜ見なかったかといいますと、若返りということにやや陳腐さを感じたからですが、この「胡蝶の夢」の方は、コッポラらしいすばらしく美しい映像とアルゼンチンの作曲家オスバルド・ゴリホフの音楽が、ある種哲学的とも言える雰囲気を醸しだしています。きっとサントラを買うことになるでしょう。
そして、その若返りそのものが邦題にもあるように現実なのか夢なのか分からなく描かれていることで、さらに切なさが増します。特に、ドミニクとヴェロニカのラブストーリーは、私好み(笑)で、例によって泣いてしまいました。
ドミニクを演じているのは、ティム・ロス、いいですね、この俳優さん。そして、ヴェロニカの方は、「ヒトラー〜最期の12日間〜」の秘書役をやっていたらしい(あまりはっきり記憶がないです)アレクサンドラ・マリア・ララというルーマニア出身の俳優さんで、何と「あいち国際女性映画祭2007」で上映された「漁師と妻」の主役をやっていました。
原作は、ルーマニアの作家ミルチャ・エリアーデの「若さなき若さ(Youth Without Youth」という小説です。これまた是非読んでみなくっちゃということですね。
で、結局強く感じることは、「ゴッド・ファーザー」や「地獄の黙示録」にも通じるものですが、コッポラの人生観というか、歴史、あるいは時間軸といった、人間にはどうしようもできない時間という概念に対する強いこだわりです。
ところで、コッポラさんは、カリフォルニアでワイナリーを経営して、結構富豪らしいですね。