え、ホントに、これ、アカデミー賞作品賞?
こんなすばらしい映画!がアカデミー賞をとる?(なんていいすぎです!)なんて言いたくなるほど、らしくないです。よく言われているように、全くスター俳優も出ておらず、イギリス映画(だと外国映画賞だから、合作なのかな?)だし、「ハリウッド資本はインドを手厚く遇したい」なんてのがもっともらしく感じられてしまうような受賞ですね。
とにかく、「トレインスポティング」のダニー・ボイル監督らしい映像感覚がすばらしい! 社会派映画というくくりをされやすい内容をうまくエンタテイメントに仕上げています。
水平感をずらした映像や望遠で欲しいものだけを切り取ったようなカットを細かくつなぎ、ホントに、すごい編集がされている!んです。それが、この映画の全てです! って、そんなこともないのですが、とにかく、それが、この映画のリズムを生み出しているのは間違いないです。
主役のジャマール、子供の頃から現在まで3人で演じ分けられているんですが、彼のラティカ(初恋の少女、こちらも3人)への一途な思いを物語の軸にしているところも、ひとつひとつこだわれば、それだけで映画になるだろう、貧困や幼児虐待や売春や宗教対立など多くの問題を描きつつも、バランス良い流れを映画にもたらしています。
2000万ルピーという大金、今の為替換算で3,900万円ですが、実際の価値観としてはもっとすごいのではないかと思いますが、そんな大金を手にした次のカットが、ジャマールが駅のホームに寂しく膝を抱え柱にもたれている姿というのが、この映画の意味だと思います。
映像として多くは描かれていませんが、ラティカが、虐待を受け、売春を強要されて育ってきたことは容易に想像され、今、彼女は裏社会のボス(日本的感覚での言葉)の情婦として精神的に監禁されている身です。やっと見つけたジャマールは、これから毎日5時に駅で待ち続けると伝えるのです。
なぜ、ジャマールはクイズ番組に出たのか? それも、ラティカに会いたい一心からです。
これは、劇場へ足を運ぶべきだった!