いくらでもドラマチックに出来そうな題材ですが、そこそこ抑えたつくりは、クリント・イーストウッドらしさなのか、実話だけにセーブしたのか、やや一本調子で先も読める展開ではありますが、静かに感動できる作品でした。
ラグビーのシーンがかなり出てきますが、肉弾戦である体と体のぶつかり合いがもう一つ迫力を欠いており、カメラワークがオーソドックスすぎるのではないかと、やや不満を感じ、そのせいなのか、せっかく体をつくって撮影に臨んだマット・デイモンが、いまいちぱっとせず、あまりにも実話であることにこだわりすぎているのではと感じます。もう少し、ナショナルチーム「スプリングボクス」のドラマがあった方がよかったように感じます。
ただ、あの選手たちは俳優なんでしょうか、どうなんでしょう? そういえば、マット・デイモン以外でそれなりのセリフのあるのは、黒人選手のチェスターくらいだったような気がします。多くは俳優ではないのかも知れません。
まあ、そのあたりは調べれば分かるでしょうから置いておいて、この映画を見て、一番思ったことは、信念ある言葉の重みでしょうか。毅然としたマンデラさんの言葉には感動します。
このところの日本の政治状況にはイライラさせられっぱなしですが、人の心を動かせる信念ある言葉を持った政治家が皆無だということをつくづく感じます。
菅さんなど、せっかく権力を手にしたのに、どう使ってよいか分からないかのように見えますし、そもそも論客などと、マスコミなどはもてはやしていましたが、あれは議論ではなく、田原総一朗と同じ挙げ足取りです。
なぜ、こんなことを書いているのか? インビクタスの話は、一体どこへ来てしまったのでしょう?
まあ、いずれにしても、国が変わるためには相当なエネルギーがいるということでしょうし、権力は、ある時、ああいった戦闘的スポーツを国家的アイデンティティ確立のために利用するということも、この映画のひとつの側面ではあります。
人を動かす信念ある言葉が必要と言いつつも、反面、演説で人が動くなんてことは、この日本にあっては、ほんの数年前にもありましたが、結構恐いものがあります。