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もはや、移民難民の問題は、それを避けては何も語れないほど、世界、特にヨーロッパにおいては、主要な問題になっているということでしょうか…。最近では、映画を見ていると、ずばりそのものでなくとも、何かしらそれに関する話が多いように感じます。
この映画「君を想って海をゆく」も、それが主たるテーマではないとは思いますが、一方の主人公ビラルが、不法入国したクルド青年でなければ成り立たない話ですし、カレの港には、イギリスへ密入国しようとする移民難民が溢れています。日本なら、不法入国即逮捕、そして強制送還ということになってしまいますが、フランス(EU)ではやや違うようです。イギリスへ渡るトラックに隠れているところを見つかっても、初犯だからと釈放されたり、普通に(見えるだけ?)行動したりと、一定程度の権利は保障されているということでしょうか。
ただ、最近では、フランス(EU?)でも、不法移民の取り締まりを厳しくしつつあるようで、そのあたりが、この映画の背景にあるのかも知れません。
先ほど、この映画の主たるテーマは移民難民問題ではないと書きましたが、じゃ何かと言いますと、ビラルのことを一方の主人公と書いたように、そのビラルを手助けするフランス人のシモンが、今まさに離婚しようとする妻マリオンとの関係を、ビラルと関わっていく中で、どう気持ち的に、どう整理していくかだと思いますし、さらに言えば、男女間を含め、人が人を理解することとはどういうことかということになるでしょう。
この映画が、決して悪い印象ではないのですが、何かはっきりしていない、曖昧だと(私に)感じられるのは、そのあたりのポイントの置き方がはっきりしない、この映画がシモンとマリオンの話だとの私の考えに沿って言えば、たとえば、なぜ二人は別れようとしているのか、もう少し語るべきでしょうし、マリオンはどういう人なのか、私は知りたくなります。
結果的に、移民難民問題で注目される映画になっているようですが、不法移民たちのサポートボランティアを続けるマリオンのセリフにあるように、シモンの行為が不法移民たちにとって、マイナスにはなっても、プラスにならないのは明らかです。ビラルについても、社会的規範から言えば、泳いで渡ることを支援するより、留まるよう説得することが正しいことでしょう。
もちろん、映画をそう作るべきだとか、そうした方がビラルにとって良いことだったとか、そんなことを言おうとしているわけではありません。素直に感動する場面もありましたし、余り説明的にならないところなど、悪い印象はありません。
ただ、ラスト、ビラルが死を賭して渡ろうとしたイギリスへ、シモンは、実に簡単に渡ってしまうこと、そして、一度はビラルにあげた指輪を、ビラルの恋人ミナが受け取らないからといって、マリオンに指輪が見つかったと告げるあたり、何ともやるせない終り方ではありました。
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