これ、いいんじゃないでしょうか!ゆったりと流れる力強い70分。とても丁寧に作ってありますし、画に迷いがなく、力があります。言葉ではなく、画が語ろうとしています。
音の扱いも繊細です。昼と夜、行動時間が逆転している夫婦の物語、朝、男(川岡大次郎)が女(中村麻美)を送り出し、夜、女が男を送り出します。送り出した玄関先、ドア越しに、お互いに、それぞれが階段を降りていく足音をじっと聞いています。いいシーンです。もう少し見ていたい、聞いていたいと思いますが、この長さにする潔さがいいですね。
女は、キッチンに立ちながら、男は、(思い出せません)しながら、それぞれの相手の今を思います。男の今、自転車で駆けるシーン、女の今、駅のホームに立つ通勤シーンが挿入されます。女はホームに立ち、その後ろを電車が疾走します。女の前にこれから乗るだろう電車が入ってきます。画は少し傾いています。くらくらするくらい、いいシーンです。
お互いに相手を思いあっているのに、現実は少しずつすれ違っていきます。それを、いろいろなカットを積み重ねて、本当に丁寧に描いていきます。ベッドをうまく使っています。シーツの乱れ具合、それぞれが眠る場所、隣にいない相手を見る視線、丁寧なのに、くどくならない程度の微妙な間合い、簡単なようで難しいところでしょう。
そうした積み重ねが、ラストに生きてきます。女が、仕事への行き帰りに何を考えているの?と男に尋ねます。男は、少し考えた後、朝のガソリンスタンドとかコンビニで見る男の話とか、実際に目にすることを話し続けます。女はそんな男をじっと見つめています。カメラはその二人をじっと横からのツーショットでとらえたままです。このカットの中村麻美の表情が素晴らしいです。
男が仕事を失う前後の時間軸がややつかみづらいなど、気になるところがないわけではありませんが、撮りたいものを撮ろうとしている、そして撮れている、その力を感じます。撮影が芦澤明子さんという方なんですね。記憶しておかなくては。
タイトルの「フォーゴットン・ドリームス」、タイトルとしてはどうなんだろう、「ドリームス」ってどうなんだろうという疑問はありますが、まあ、そういうことなんでしょう。
日向朝子監督、「森崎書店の日々」も見ていません。見なくては。
ん?DVD化されていない?
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