東京プレイボーイクラブ/奥田庸介監督

光石研ははまり役だが、大森南朋は相手がオチャラケでニヒルになりきれず

「久々に大物新人監督、日本に現る!昨年のゆうばりファンタスティック映画祭で、自主制作映画『青春墓場〜明日と一緒に歩くのだ〜 』がグランプリを獲得。審査委員長をつとめた香港映画界の巨匠ジョニー・トー監督は「恐るべき監督の出現だ」と惜しみない賞賛をおくった。(公式サイト)」ということで期待をもって見てきました。

狙っているところは何なんでしょう? フィルム・ノワールものと言えなくはないのですが、出てくるギャングはチンピラ程度、それもチンピラであるがゆえの怖さはないオチャラケ系ですから、さすがの勝利(大森南朋)もニヒル(古い?)にはなりきれず、時に笑いを誘おうとしたりするという、んー、中途半端ですね。

舞台としているのが東京であっても六本木や新宿ではなく都会と田舎の境界線のような場末で、ロケ地も赤羽のOK横町というところらしく、結構いい雰囲気を出しているのですが、室内のシーンは常にスモークをたいたり、ネオン管で安っぽい雰囲気を出そうとしたりと、かなり手が古いです。

そうしたB級的なところが狙いと言えなくもないのですが、そっちへ行くなら行くでもっと徹底した方がいいような気がしますし、いずれにしても方向が定まらず、シーン毎にこだわりは持っても全体的にはちぐはぐ感が強く未熟な感じがします。

結局、こういったフィルム・ノワール的なものっては非日常の極みなわけですから、どの方向へ行くのであれ、ぐいぐい引っ張っていって、見る者を日常に引き戻すような瞬間をつくってはいけないと思います。そういった構成力といいますか、計算というものは、経験を積まないとなかなか難しいでしょう。

映画が簡単に作れ(というわけでもないですが)、下積みがなくても映画監督になれることが悪いわけではありませんが、きちんと作られた映画が少なくなるのは怖いことです。奥田庸介監督、24歳、こういう映画を撮ろうとする人がいなくなると映画全体がつまらなくなってしまいますので期待はしますが、どうなんでしょう、あまり持ち上げて、結局つぶしてしまうことのないようにお願いしたいと思います。