塚本晋也監督に続き(観たのはこちらが随分前ですが)、石井岳龍(聰互)監督も初見です。あらためて考えてみますと、自主制作系の映画をあまり観てきていないということになります。
何ともつかみ所のない映画でしたので、原作「生きてるものはいないのか/前田司郎」も読んでみました。
かなり忠実に原作に沿って作ってあります。インタビューでも「初めてですね、セリフを読んでこれは一字一句変えなくてもいいんじゃないかと思ったのは」とプレスリリースに書いたと語っています。その理由は「今回はまずテーマに共感してますから、そういうこと(再構築する)は必要ない」と考えたということのようです。
舞台の暗闇ってのは無であると同時に宇宙みたいに何でも生み出せる空間ですので、原作のような不条理劇が成立するわけなんですが、映画は、多くの場合、たとえそれがCGであっても、基本的にはリアルなものと紐付けされているわけで、果たしてこの不条理劇を原作に忠実に作ってどうなんだろうと思いますが、あながちダメってことではないような…。と、かなり曖昧な言い回しです。まあ微妙ってところですね。
原作通り設定を大学構内においていることで何とか無難な出来になっているんじゃないかと思います。何てったって大学ってのは不条理そのものの存在ですから。って意味が分からん? まあ現実から切り離されているっていうようなことなんですが、つまり、バタバタ人が死んでいってもあまり違和感がない空間なので成立しているような気がします。ただ結局映画ですから、ラストはああいう感じでリアルさに紐付けせざるを得なくなりますね。
やっぱり、映画化するのなら映画の世界で勝負してほしいです。セリフは原作通りにしても、設定を変えて極めてリアルな空間で処理するとか、あるいは「ドッグヴィル」のような手法をとるとか、そんな想像をしながらの鑑賞でした。