鑑定士と顔のない依頼人/ジュゼッペ・トルナトーレ監督

オートマタや小人症の女性の存在をもう少し物語に絡めてくれていれば…。多くを望みすぎ?

自分自身の変化だとは思いますが、こうした演出の濃い映画にはやや鬱陶しさを感じるようになってきました。もちろんいい映画だとは思うのですが…。


『鑑定士と顔のない依頼人』予告編

以下、ネタバレありです。ミステリーなので注意。

冒頭の、バージル・オドマン(ジェフリー・ラッシュ)がレストランで食事するシーンの大層な入り方からして、ちょっとばかり引いてしまいました。さらに、その後、何十年もこうした生活をつづけてきたオドマンが、いくらミステリアスだからといって、クレア(シルビア・ホークス)の依頼を受けて、ましてや電話一本で、それもひとりで屋敷を訪ねたりすることに違和感を感じました。

まあ、映画なんですから、そんなところにツッコミを入れても仕方ありませんが、本来、こうした導入部分で引きつけられて、ぐっと入り込んでいかなきゃいけないところなのに、これではこの映画の良さを楽しめませんね(涙)。

気になるところばかり書きますが、決してけなしているわけではありませんので、誤解なきよう。

オドマンが、クレアの屋敷で偶然(とは思えない発見の仕方ですが…)発見するオートマタはどうなっていくのだろうと、これにはそれなりにそそられたのですが、あまり効果的には生かされていませんでした。オートマタが物語のキーになるんだろうなと見ていたんですが、途中は出番も少なくなり、結局ほぼラストシーンで唐突に(私にはそう見えたのです)完成品が動いていただけでした。

屋敷の向かいのカフェに常にいる小人症の女性も、もうひとつしっくり来ない位置づけでした。結局、屋敷の本当の持ち主だったんですが、何だろう、何か物足りなかったですね。カフェの客が彼女の周りに集まって彼女の話に聞き入っているシーンがあったと思うのですが、あれは何だったんでしょう? 記憶力の良さに皆が感心していただけなんですかね…。

オドマンがクレアの屋敷に足を運ぶシーンの繰り返しがくどいですね。オートマタや小人症の女性を絡めて、違った物語を展開させてくれれば、結構いけたような…。多くを望みすぎ?

ということで、ジュゼッペ・トルナトーレ監督の作品は、「ニュー・シネマ・パラダイス」はもちろん、「海の上のピアニスト」や「マレーナ」は好きですし、「題名のない子守唄」も良い映画だったと思いますが、この映画は、私にはちょっとばかり残念な結果でした。

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