この映画、カニバリズムを何かそのままあるものとして受け入れている節があります
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2014/10/01
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もちろんカニバリズムのカニバルでですし、公式サイトにも「異常な殺人鬼の純愛」「悪魔のような男が、初めて”愛”を知ったとき」などというコピーが踊っていれば、なにやらある種の熱っぽさや濃密さをもった異常な映画を想像してしまいますが、全く違いました。
上のトレーラーの静止画はまさに食肉の場面ですが、それはまるで言葉通り儀式のように静謐そのものですし、皿に盛られた生肉が人肉と考えれば、確かに気持ち悪くもなりますが、グロさや醜悪さは感じられません。
トレーラーの5秒あたり、夜のガソリンスタンドの映像ですが、これがオープニング、黒の部分に小さくいろいろなクレジットがかぶり、結構長い、この映画を象徴しているカットでした。造形的にも、構図的にもこだわりが感じられます。そのこだわりは最後まで一貫しており、多くのカットがフィックスで撮られています。
で、ガソリンスタンドには一台の車が停まっており、男女がガソリンを入れているのか、しばらく動いたりした後、車に乗り、カメラの方にやってきます。車がカメラの前を行き過ぎると、それまで完全に固定されていると思っていたカメラは、その車を追いかけるように動き始めます。主人公であるカルロス(アントニオ・デ・ラ・トーレ)の目線のカットだったということです。
見終わって思えば、ここが唯一この映画の中でホラーぽさを感じられる場面で、この後カルロスは、男女の車が転落するように仕向け、女性を連れ去って解体するわけですが、そのシーンも想像されるようなグロさは全くなく、白い台の上で一筋血が流れるという、このシーンもトレーラーの中にありますが、正しい使い方かどうか分かりませんが、公式サイトにありましたので、あえて言えば静謐そのものです。
といったわけで、この映画の見るべき点はそのあたりかなと思います。その後の展開もかなりかったるいですし、途中一回と最後に出てくるカソリックの祝祭ももうひとつカニバルとの関連が分かり難いですし、「純愛」だの「初めての愛」だのといった言葉も宣伝のためと考えた方がいいでしょう。
いずれにしても、この映画、カルロスのカニバリズムを否定したり肯定したり、あるいは特別なものとして描いているわけではなく、何かそのままあるものとして受け入れている節があります。エンディングからもそんな感じがします。
ところで、トレーラーにもある雪山ですが、カルロスが持っている山荘あたりの風景として描かれていますので、どこなんだろう? ピレネーあたりかなと見ていたんですが、それじゃいくら何でも車じゃいけないでしょうと調べてみましたら、あるいはシエラネバダ山脈なのかも知れませんね。最高峰が3,478.6mで、シエラネバダとは、スペイン語で「積雪のある山脈」との意味で、年間を通じて雪があるそうです。
グラナダは、地中海もすぐそこですので暖かそうに思いますが、標高が700メートルですので意外と涼しく、以前バルセロナからサンダルままグラナダに移動したら、寒くてビックリした記憶があります。