そんなには褒めないよ。映画評

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クロワッサンで朝食を/イルマル・ラーグ監督

邦題にかなり違和感、ヨーロッパの「老い」の感覚が感じられる映画というところかな

2015/11/09

見始めてしばらくは、あれ?借りる映画を間違えたのかと思いました。

記憶している予告編の印象やタイトルから、裕福だけれども偏屈がゆえに孤独な老婦人が、貧しいけれども心豊かな家政婦さんの優しさに触れて心をひらいていくお話かと思っていました。

その思い込みから、まあ DVD でいいかと思って見るのが今になったのですが、逆に言えば、私が想像した雰囲気を期待して劇場に足を運んだ人がいるとすると、少しばかり違和感を感じたかもしれません。

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エストニアで母を看取ったばかりのアンヌに、パリでの家政婦の仕事が舞い込む。悲しみを振り切るように、憧れのパリへ旅立つアンヌ。しかし、彼女を待ち受けていたのは、高級アパルトマンに独りで暮らす、毒舌で気難しい老婦人フリーダだった。フリーダはおいしいクロワッサンの買い方も知らないアンヌを、冷たく追い返そうとする。アンヌを雇ったのは、近くでカフェを経営するステファンで、フリーダは家政婦など求めてはいなかったのだ。だが、遠い昔エストニアから出てきたフリーダはアンヌにかつての自分を重ね、少しずつ心を開いていく。やがてアンヌは、フリーダの孤独な生活の秘密を知るのだが──。(公式サイト)

なにせ冒頭はエストニアの冬の夜のシーンから始まり、それもストリングスとピアノの悲しげな曲をバックに、雪の積もった人通りも少ない街をバスの中から移動ショットでとらえていくという、さらにその街をバスの中から見ている女性の横顔がシルエット気味に挿入されるわけですから、これはもう一体何が始まるのだとむちゃくちゃ期待させられます。

女性がバスを降り暗い夜道を歩いていきますと酔っ払いが絡んできます。どうなるのだろう?とやや不安気味に見ていますと、どうやら見知らぬ人ではない様子、続いて女性が家に入りますと、そこには認知症の母親が同居しており、話の内容から先ほどの酔っ払いは元夫だとわかってきます。

一貫してシーンは暗く、空気は重いです。

で、次の日、母親は息を引き取っており、その女性アンヌ(ライネ・マギ)は、パリでの家政婦の仕事の誘いを受け、若い頃からの憧れだったらしいパリに向かいます。

ここからが本編、「メランコリーというのなら」のシャンソン(らしい)にのって一気に軽やかになるかとおもいきや意外にそうでもなく、なにやらアンヌもフリーダ(ジャンヌ・モロー)もステファン(パトリック・ピノー)も、その本音を明かすことなく、いろんなことがはっきりしないまま事は進み、結局最後は、何となく丸く収まって終わるというお話です。

まあ大人の映画ということですね。

それにしても、映画的手法なのか、エストニア人の感覚なのか、どんな人間かも分からず家政婦として家に入れたり、逆にどんな人間かも分からず世話をすることを受け入れたり、思いやりからにしても嘘をついてもそれをごまかそうとせず、結局さらにことをまずくしたりする行為といい、あえて突っ込めば不思議なことがたくさんある映画です。

ただ、敢えてなんでしょう、そうしたドラマチックさを抑えて淡々と作られており、強い印象は残らなくとも、なんとなく心に染み入る寂しさが残ります。

これなら映画館で見れば、また違った印象を持ったかもしれないという映画でした。

ジャンヌ・モローさん、現在87歳、この映画の時が84歳位ですか、お元気ですね。IMDb によりますと、Le talent de mes amis (2015) – IMDb にクレジットされています。「死刑台のエレベーター」とか「雨のしのび逢い」とか見たくなりますね。

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