そんなには褒めないよ。映画評

ネタバレレビュー・あらすじ

ホーム / おすすめ映画 / キャロル/トット・ヘインズ監督

キャロル/トット・ヘインズ監督

ルーニー・マーラの魅力にやられてしまいました。古き良き映画の時代を感じさせる演出も適度で心地良いです。

2016/02/22

あまり興味のないアカデミー賞も、この映画のルーニー・マーラがノミネートされているとのことで、一気に興味が湧いてしまいました。ぜひ受賞して欲しいですね。

それくらい良かったのですが、実はこれまであまり印象はなく、「ソーシャル・ネットワーク」では映画の主題とはちょっと離れた存在でしたし、「ドラゴン・タトゥーの女」は、元映画の「ミレニアム」を堪能してしまいましたのでリメイクに興味がわかなく見ていませんし、「セインツ 約束の果て」では全く印象に残っていません。

若手女優ルーニー・マーラと大女優ケイト・ブランシェットの競演。原作は『見知らぬ乗客』『太陽がいっぱい』で知られる大人気作家パトリシア・ハイスミスが、別名義で発表しながらも大ベストセラーとなった幻の小説。監督は『エデンより彼方に』の鬼才トッド・ヘインズ。50年代ニューヨークを美しく再現した魅惑的な衣装、名曲の数々、流麗なキャメラ……。ワールドプレミアとなったカンヌでは批評家の星取りで見事にベスト1を獲得!(公式サイト)

ところが、この映画ではむちゃくちゃ魅力的なんです。

カンヌで(最優秀)女優賞をとっていますが、なぜか、カンヌでは主演、助演という区別はつけていないのに、日本では「主演」がついてしまいます。単純に Best Actress (Prix d’interprétation féminine), Best Actor だけなんですが、どういうことなんでしょう? 私の勘違い?

それは置いておいて、この映画、ルーニー・マーラの抑制された演技、言葉でも表情でも多くを語らず、なのにキャロルへの好意、愛情、失望、喪失感(I miss you.)、不安、喜び、人が人を愛するときの感情すべてが演じきられています。

どのシーンもいいのですが、いくつかあるレストランのシーンの緊張感が特に印象に残ります。

導入となっている冒頭のレストランのシーン、これはエンディングに向かうラスト近くの再会シーンの別ショットなのですが、なんだか分からないけれども不思議な緊張感が漂っており、これから始まる物語を暗示していて素晴らしいです。まあこれは監督のセンスを褒めるべきところかもしれません。

続いて、時間が戻って出会いの後、キャロルがテレーズをランチに誘い、初めてプライベートに対面する場面の喜びと緊張感が綯い交ぜになった初々しい場面のルーニー・マーラは魅力的です。

そして、エンディング、テレーズのカットで終わっていたと思いますが、いい表情でした。

ケイト・ブランシェットは、二人の対比としてはよかったのかもしれませんし、それぞれのシーンは悪くはありませんが、全体的には少しやり過ぎ感が強く、裏が見えにくすぎます。同性愛が精神疾患と考えられていた1950年頃と考えれば、社会的に失うものも多いでしょうし、実際に最愛の子供を失うことになるわけですから、もう少し不安とか後ろめたさとかを秘めた演技が必要なのではと思います。カットされたシーンがあるのかもしれませんね。

映画全体としては、クラシカルな恋愛(純愛?)ドラマを相当意識して撮っているようで、上に書いた冒頭のレストランのカットへ至るクレーン(多分)を使った街の撮り方は古き良き映画の時代を彷彿とさせます。

その他にも、移動する車の中から街をとらえたショットも同じ意味合いで撮られていると思いますし、そもそもらしさを出すためにスーパー16ミリで撮っているそうです。全体にぼんやりしているのはそのせいですね。

それにしても、「アデル、ブルーは熱い色」でもそうでしたが、この映画も同姓であるか異性であるかを感じさせない恋愛映画になっているところが素晴らしいです。「アデル」と違うところは、クラシカルな恋愛ドラマを意図しているからだと思いますが、恋愛関係に感情的なシーンがほとんどなく、恋愛の熱さを抑えているところです。

ということで、2016年1本目の「当サイトおすすめ映画直近の4作品」に入れさせていただきます。

クスクス粒の秘密/アブデラティフ・ケシシュ監督
ドリームホーム 99%を操る男たち/ラミン・バーラニ監督
Twitter
Facebook
ブックマーク
Filmarks

最初のサイドバー

最新映画レビュー

2022/06/24

ベイビー・ブローカー

ネタバレレビュー・あらすじ・評価・疑似家族誕生ロードムービーだが、シナリオが薄っぺらい

2022/06/21

三姉妹

映画・ネタバレレビュー・あらすじ・評価・見どころは三人の俳優の演技、物語は短絡的

2022/06/18

PLAN 75

ネタバレレビュー・あらすじ・評価・日本じゃ安楽死も集団で…という近未来ディストピア

2022/06/16

アンラッキー・セックス またはイカれたポルノ

ネタバレレビュー・あらすじ・評価・社会風刺も時にブーメランになる

2022/06/14

さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について

ネタバレレビュー・あらすじ・評価・ファビアン、あるいは堕落について

最新映画レビューを一覧で見る

おすすめ映画

2022/05/04

インフル病みのペトロフ家

ネタバレレビュー・あらすじ・わけがわからなくても見ておくべき映画(だと思うけど…)

2022/04/28

ベルイマン島にて

ネタバレビュー・あらすじ・なんでもなさを映画にするミア・ハンセン=ラブ監督

2022/04/23

パリ13区

ネタバレレビュー・あらすじ・セックスというコミュニケーション

2022/04/05

やがて海へと届く

ネタバレレビュー・あらすじ・(映画)あまりにも美しい、物語と、画と。そこから見えるもの

2022/03/03

麻希のいる世界

ネタバレレビュー・あらすじ・深層なき愛憎うずまく青春音楽物語かな

おすすめ映画を一覧で見る

よく読まれている記事

  • 記事一覧
  • おすすめ映画
  • よく読まれている記事
  • 英数字
  • あ行
  • か行
  • さ行
  • た行
  • な行
  • は行
  • ま行
  • や行
  • ら行
  • わん他

Footer

My Web Sites

  • @半径とことこ60分
  • そんなには褒めないよ。映画評
  • IMUZA.com
  • GitHub

Other Links

  • IMDb
  • Filmarks
  • 映画.com
  • allcinema

Contact Us

  • お問い合わせフォーム
  • Twitter
  • Facebook
  • Feedly

Copyright © 2022 · IMUZA.com