そんなには褒めないよ。映画評

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殺されたミンジュ/キム・ギドク監督

話が直接的すぎて「寓話」にならず。でもベースはキム・ギドク監督らしい映画です。

2016/03/07

キム・ギドク監督、久しぶりだなあと思いましたが、この映画は2014年の作品で、1年1本くらいの割合で撮っているんですね。知りませんでしたが、昨年も「ストップ STOP」という福島の原発事故を扱った映画を日本で撮ったようです。

ただ、正直、「悲夢」あたりからちょっと飽きてしまっているのも事実で、そろそろ何か新しい境地みたいなものを期待したいところです。

ある夜、女子高生が男たちに無残に殺害された。しばらく後、事件に関わった一人の男が武装した七人組の謎の集団に誘拐される。集団は男を拷問し、自分が起こした事の告白を強要する。やがてその集団は事件に関わった男たちをひとり、またひとりと誘拐してゆく…。(公式サイト)

アジテーションをしつつ、持ち前の輪廻的人生観で悟っちゃてる感じです。一般的には、それを日和るっていうんですが、別にキム・ギドク監督は日和ったわけではありません。

もともとアジテーションなんて得意じゃないんでしょう。

謎の集団のリーダー(マ・ドンソク)がアジテーターなんですが、とてもそんな風には見えない俳優を当てていますし、あの集団、初っ端から何やら滑稽で陳腐な作りになっています。

台詞は忘れてしまいましたが、最初に拘束した男(キム・ヨンミン)を部屋に押し込む廊下での、部下に「たるんどる!」みたいな小芝居、思わず笑いそうになってしまいました。

一人目の拘束が軍隊(だったかな?)の設定で、二人目の拘束が暴力団の設定でしょう(笑)、もう完全におちゃらけているのか、何か深~い訳でもあるのか、どちらかしかありません。

おちゃらけの意図が全くないとは言えないようにも思いますが、かと言って、さほど深い訳があるわけでもなく、それぞれ社会に不満を持つものを集めて、殺された高校生ミンジュの復讐をするという話で、例によって相当デフォルメされています。

うまくいけば、それがある意味普遍的な意味合いを持って寓話ということになるのでしょうが、さすがに話が直接的すぎて、「ドジョウとライギョ」の話が教訓的に語られたり、「ミンジュ」は「民主」主義という意味もあると言われてしまいますと(映画の中では言われていない)、想像力も死んでしまいます。

でもまあ、ラストにかけての30分位はキム・ギドク監督らしい感じで良かったです。

リーダーに僧の服装で石の上に座らせて喚かせたり、その後の結末も、輪廻転生的人生観がよく現れていました。

ところで、キム・ヨンミンさん、かなり混乱しながら見ていたのですが、8役をこなしていたということです。なぜ8役もさせたのか、分かるようでもあり、でも結局よく分からないという映画の象徴でもありました。

キム・ヨンミンさんは「春夏秋冬そして春」の青年を演っていた俳優さんとのことです。 

なお、韓国語は分からないのですが、映画的にみて翻訳がかなりひどいのではないかと感じました。どうなんでしょう?

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