マイケル・ムーアの世界侵略のススメ

この映画を見ると、実は、ドキュメンタリーもドラマも、全く違いはないのだということがよく分かる

告発型の映画は好みではありませんので、マイケル・ムーア監督の映画も見たことはありません。

ただ、マイケル・ムーア監督=告発と考えてしまうのは過去の宣伝からの印象ですので、そうであるかどうかは見てみなければ分かりません。

それにしても、最近、海外から入ってくる映画が少なくなっているように感じるのですが、そうでもないんでしょうか? 単館系の上映作品を見ていますと、特集上映やリバイバルが多くなっているように思います。日本のドキュメンタリーの上映も多くなっていますね。

ということで、見たい作品がなく仕方なく(笑)見に行きました。

ベトナム、アフガン、イラク、シリア……。これまでの侵略戦争の結果、全く良くならない国アメリカ合衆国。米国防総省の幹部らは悩んだ挙句、ある人物に相談する。それは、政府の天敵である映画監督のマイケル・ムーアであった。新たな侵略政策がスタートする。”侵略”の目的は、各国のジョーシキを根こそぎ略奪し、アメリカに持ち帰る事。しかしその先には、ムーアだけではなく我々も知らない、驚愕の事実が待ち受けていた……。(公式サイト

初めて見た感想は、うまいですね、です。

見事に、自分の組み立てたストーリーに、明快に、それも嫌味なく引き込んでいきます。

映画の大筋は、ヨーロッパ+1の9ヶ国(国旗が9ヶ国だから多分…)を巡り、そこでアメリカにはない素晴らしいものを発見し、自国アメリカを批判的に見つつ、でも、その素晴らしいものの原型はアメリカ発ではないかと、自国アメリカを嘆くという内容です。

たとえば、公式サイトからですが、

  • イタリア人は年間8週間も有給がある! 会社の昼休みは2時間!!
  • 麻薬使用が犯罪にならない国 ポルトガル!
  • 宿題がない国 フィンランド! しかし、学力トップクラス国家!!!
  • 休日に部下に連絡すると、「法律違反です」と言われるドイツの上司
  • ナイフを所持しているノルウェーの囚人(罪状は殺人)! しかも牢屋が一軒家!!
  • フランスの小学生は、給食がフレンチフルコース! フランス人はフレンチフライを食べない!

となり、他の国は、どこでしたっけ?

  • チェニジアの「ジャスミン革命」は、女性の力に依るところが大きい
  • スロベニアでは、大学の授業料が無料
  • アイスランドは男女平等の国であり、女性の優秀さは、国家財政が破綻した際に唯一倒産しなかった銀行が女性経営者だったことでも証明されている

といった内容だったと思います。

まあ、どの国だって天国ってわけではありませんので、良いところもあれば酷いところもあるわけで、そんな当たり前のことはわかっていても、この映画を見ていますと、9ヶ国どの国も良いところだなあと思えてきます。

そこらあたりがうまいということなんですが、さらに、ストーリーの展開も、導入に、笑いも取れそうなイタリアやフランスを持ってきて惹きつけ、ノルウェーの刑務所や麻薬が合法のポルトガルで驚き(驚くのは日本人だけ?)を織り交ぜつつ、チェニジアやアイスランドの、ややシリアスな差別や男女平等のテーマを入れ込んでいます。

結局、マイケル・ムーア監督は、アメリカ人のある一面を象徴しているような存在なんだと思います。

話はややそれますが、アメリカ大統領選のニュースでバーニー・サンダースさんという方を知り、アメリカの政治家にも社会主義者がいるのかと驚いたのですが、この映画を見るかぎり、マイケル・ムーア監督も社会主義者ですね。

それが、思想的に社会主義者なのか、単に反権力的な意味での考えからなのかは分かりませんが、アメリカ社会にも社会主義的一面があるということだと思います。

アメリカの一面という意味では、その体型もですが、大丈夫なんでしょうか? あれで。

結局、民主党の大統領候補はクリントン氏に決まったようですが、社会主義者のアメリカ大統領をみてみたかったですね。