シャーリーズ・セロンをもっと活かして!役柄的にははまり役でしょう。
8歳の時の自らの証言で実の兄を殺人犯にしてしまった女性が、苦しみながらも、自らの心の闇(ダーク・プレイス)に向き合うことで、自分自身を解き放っていく、なんて役、シャーリーズ・セロンの良さが最もでそうな役どころじゃないですか!
さらに、監督は「サラの鍵」のジル・パケ・ブランネールさんですので、期待できそう!
と、思ったのですが、あれよあれよと言って(はいないのですが…)言っている間に終わってしまった印象で、何だか肩透かしを食らったような感じです。
1985年、8歳だったリビー・デイの証言により兄ベンが逮捕された。その容疑は、母親と2人の姉妹の殺害。それから28年後。支援金や自伝出版で食いつないできたリビー(シャーリーズ・セロン)。定職もなく孤独な生活を送る彼女に「殺人クラブ」という団体から連絡が届く。 ベンの無罪を主張するクラブを怪しみつつ、生活のために28年前の事件を振り返ることになる。あの夜、自宅で何が起こり、自分は何を目撃したのか……?(公式サイト)
事件についての様々な疑問は、割りとズムーズに提示され、一体何があったんだろうとうまい具合に引き込んでいってくれます。
犯人とされる兄ベン(タイ・シェリダン)は、神経質そうな雰囲気で登場し、殺人とまではいかなくても何やら危うい印象です。恋人ディオンドラ(クロエ=グレース・モレッツ)は、ベンの子ども(らしい)を身籠っていますが、これがまた危うい感じで、男友達のトレイとともに悪魔崇拝をしているらしく、麻薬も常習のようで、ベンはディオドランへの想いゆえに心ならずも仲間に入っている様子です。
母親パティ(クリスティナ・ヘンドリックス)は、離婚後ひとりで農場を切り盛りしつつ4人を育ててきましたが、ついに金銭的に行き詰まったようで、いつも不安げな様子を漂わせています。
さらに、ベンに幼児への性的虐待の容疑がかけられ、パティはそのことでも悩み、また弁護士費用の金銭的心配も追い打ちをかけます。
父親ラナーは、いわゆるダメ男で、未だにパティのところへ金の無心に来ているようです。
といった錯綜した状況の中、母親と2人の姉妹が殺害されるという事件は起きます。
28年後、当時、兄ベンを犯人だと証言した末っ子リビー(シャーリーズ・セロン)の前に、「殺人クラブ」のライル(ニコラス・ホルト)が現れ、金に釣られたリビーは、いやいやながらも事件の真相を探るはめになります。
と、こんなあらすじのようなことを書くつもりはなかったのですが、なぜだか書いてしまいました(笑)。
要は、何を書きたかったかといいますと、こうした設定はいいのですが、サスペンスとするならば、まあなんて言いますか、一言でいえばショボいんです。
たとえば、「殺人クラブ(Kill Club)」なんて大層な名前の団体が出てきますが、シーンとしても何やら怪しげな雰囲気(かえってシラケる)のワンシーンがあるだけで、物語の進展に全く絡んできません。ライルは時々顔を出しますが、リビーに金を渡しに来るだけと言ってもいいくらいです。
悪魔崇拝にしても、はぁ? って感じで、ベンの部屋にそれらしき画が張ってあったり、トレイ役の俳優にアジア系なのか先住民系なのか、多分欧米人的発想(偏見?)からのキャスティングかと思いますが、薄っぺらい表現があるだけです。
そうした個々の表現もショボいのですが、真相が明かされていく過程も何だかあっけないです。
ベンが性的虐待をしたとされる女性も簡単に見つかり、嘘だったのと告白して終わり、父親との再会もワンシーンで終わり、そういえば父親から何か真相に関わる話ってありましたっけ? はっきりした記憶はありませんが、まあその程度の扱いということです。
トレイからは、これまたあっさり(だったような印象)ディオンドラのことを聞き出し、何やらググって、これまたあっけなく現在のディオンドラが見つかり、そして終幕へと向かいます。
肝心の事件の真相はネタバレになるので書きませんが、ネタとしてはやや意表をつきつつ不思議な展開を見せて悪くはないのですが、何でしょう? はっきり言って、監督なのか編集なのか、とにかくこうしたサスペンスタッチの映画づくりがうまくないです。
あるいは、企画意図は違うところにあったのかもしれませんね。
原作を知りませんので適当な話ですが、28年前のシーンをもっと減らして、現在のリビー(シャーリーズ・セロン)の葛藤を全面に出す方法、シャーリーズ・セロンを痛みつけたり、苦しめたり(一緒やん)すれば、きっといい映画になったはずです。
考えてみれば、そもそもの発端、8歳のリビーが兄を犯人だと証言した理由が分かりません。