ヒップホップ、バイオリン演奏、バレエ、アイリッシュダンス、各種混合パフォーマンスバトルがカッコいい!
パフォーマンスバトルもの、とでも言えばいいのでしょうか、ヒップホップダンスのバトル、バイオリン演奏のバトル、そしてラストは、やや「バトル」という言葉とはニュアンスが異なり、弦楽器&ダンスのコンペティションではありますが、そうしたバトルシーンが見どころの映画です。
何かに打ち込む主人公がいて、強敵となるライバルがいて、コンテストであれバトルであれ、何らかの形で競いあい、最後は主人公が勝つというのは、ストーリー展開の定型であり王道です。
プロのバレエダンサーをめざすルビーは、ある日、地下鉄で演奏するイギリス人バイオリニストのジョニーと出会う。二人は惹かれ合っていくが、ジョニーは大切なバイオリンを盗まれた上、グリーンカード詐欺にあってしまう。二人は、ヒップホップダンスチーム“スイッチ・ステップス”を誘い、お互いの夢を叶える為、“弦楽器&ダンスコンクール”に出場することになる・・・。(公式サイト)
ですので、予告編とストーリーを見ればほぼ予想できる内容ではあるのですが、むしろこうした映画はセオリー通りにつくり、後はテンポとカッコよさで見せたほうがいいようで、その意味で成功している映画です。
テンポという点では、冒頭からの30分から1時間弱くらいだと思いますが、ニューヨークという街の空気、登場人物の紹介、これから何が起きるかなどを、流れるような編集と音楽で軽やかに見せていきます。
その中には地下鉄のホームでのヒップホップダンスのバトルが入っており、かなりカッコいいです。
駅に到着した地下鉄から降りてくる黒ずくめの集団、パーカーのフードを被り、やや危ない雰囲気の彼らは、ルビー(キーナン・カンパ)にも軽くちょっかいを出し、何が起きるのかと思っていますと、地下鉄の工事(運行している地下鉄でなぜ工事?は置いておいて)をやっていた作業員の集団が、何だ、何だと集まり始め、その二組でダンスバトルが始まります。
実際にそうしたことがあるわけではないでしょうが、いかにもニューヨーク!といった感じです。
バイオリン演奏のバトルもあります。
ルビーの学校で学ぶバイオリニスト、名前は忘れましたが、恵まれた環境で育ち、才能もある男のパーティーに招待されたルビーの前で、ジョニー(ニコラス・ガリツィン)とバトルを繰り広げます。互いの弓をフェンシングのようにチーンと合わせるカットなども入れて笑いを取っていました。
この演奏バトルの前、ルビーとジョニーのタンゴもカッコ良かったですね。なぜ二人がタンゴ?と思われた方は是非映画をご覧ください(笑)。
パブでのバトルもありました。
客なのか、従業員なのかは分かりませんが、数人の女性たちがテーブルの上でアイリッシュ・ダンスを始めますと、ルビーたちは、それに対抗して、「四羽の白鳥」を踊り始めます。
正直、これはバレエの完敗でしょう。パブにバレエは合いません(笑)。
という中盤までは快調でしたが、さすがに延々とバトルというわけにもいかないと思ったのか、ルビーとジョニーの恋愛ものや同級生との学園ものになりますと中だるみします。
まあそれも、ラスト、ルビーとジョニーのコンテンポラリーダンス&バイオリン&ヒップホップのパフォーマンスで盛り上げるためのものだと思えば我慢はできます。
ああ、書き忘れていますね。
最後のパフォーマンスで共演するこのヒップホップグループは、ジョニーが借りている部屋の下に住んでいる「スイッチ・ステップス」というダンサーたちで、実はこのダンサーたちがいなければこの映画が成り立たない、あるいは途端につまらなくなるというくらい重要な存在なのです。
ラストのダンスにも、その一人とルビーのデュエット(パ・ド・ドゥ?)が少し入っていましたが、もっとたっぷり入れても良かったのではと思います。あるいは、ルビーを演っているキーナン・カンパが、映画の中と同様にコンテンポラリーが苦手なのかもしれません。
それともうひとつ、前半の流れるようなカメラワークと編集を思えば、このラストのシーンのそれはかなり物足りなかったです。そもそもの舞台演出が、サス(上からのスポットライト)や煙(スモーク)ってのは20年くらい前のセンスじゃないかと思います。
ジョニーを演っていたニコラス・ガリツィンさん、期待です。1995年生まれですから、まだ21歳ですね。
キーナン・カンパさん、ルビーのルームメイト、ジャジー役のソノヤ・ミズノさんはユニクロの CM に出演している人ですが、どちらも期待できる俳優さん、そしてダンサーです。