そんなには褒めないよ。映画評

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彷徨える河

巨大なアナコンダのごときアマゾンを上る(下る?)神話的物語かな?

2016/11/22

今年のアカデミー外国語映画賞にノミネートされたコロンビア映画です。監督のシーロ・ゲーラさんは、Variety誌の「2016年に注目すべき監督10人」に選ばれているそうです。これですね。

10 Directors to Watch: Ciro Guerra: ‘Embrace of the Serpent’ | Variety

コロンビアが舞台の映画と言えば、ガブリエル・ガルシア=マルケス原作の「コレラの時代の愛」や「愛その他の亡霊について」が浮かびます。それに「そして、一粒のひかり」という印象深い映画もありました。

監督:シーロ・ゲーラ

アマゾンの奥深いジャングル。侵略者に滅ぼされた先住一族唯一の生き残りカラマカテ。ある日、重篤な病のドイツ人民族学者がやってくる。カラマカテは病を治す唯一の手段、幻の植物ヤクルナを求めてカヌーを漕ぎ出す。数十年後、カラマカテはヤクルナを求めるアメリカ人植物学者と再び旅に出る。二つの時が交錯し、狂気、幻影、混沌が蔓延するアマゾンの闇の奥にあるものとは…。(公式サイト)

で、「彷徨える河」、「河」とはもちろんアマゾン川ー

と書き始めてはみたものの、アマゾンってブラジルの川で大西洋に流れているんじゃないの?と疑問がわきググってみました。

アマゾン川 – Wikipedia

それにしてもすごいですね。何といっても世界最大(最長?)の川ですし、支流もすごい数です。ただ、これを見ますと、コロンビア国内にはアマゾン本流は流れていないですね。

まあ、人間が勝手に決めた国境ですから、アマゾン川がどの国を流れているかなんてことはどうでもいいことですし、映画でも場所は特定されていなかったようです。ただ映画で、川を下るというようなことを言っていたように思いますが、支流から本流に向かって進んでいたという意味なんでしょうか?

トレーラーを見てみますと、激流のシーンは下っていますが、穏やかなシーンは上っていますし、公式サイトには「遡上」とあります。

映画の話とは離れてしまっているように感じられるかもしれませんが、これは結構重要なことで、こうした幻想的、神秘的、あるいは神話的、呪術的な映画(だとすれば)は、時間の経過とともに、見るものの視野が狭くなるような感覚、つまり、奥へ奥へ入り込んでいくとか、下へ下へ落ちていくとか、そうした感覚を味あわせてくれませんと、なかなか集中できず、一歩引いた客観的な位置で見てしまうことが多くなります。

この映画で言えば、一族のうち唯一人残り、他者との関係を絶っているカラマカデという存在、そして数十年後にはそのカラマカデが記憶を失っているという設定、そしてその二つの時代を二人の白人を媒介にして交錯させて描くといった構想は、とても興味深く、想像力も刺激され、それこそガルシア=マルケスの「百年の孤独」をイメージしてしまうわけですが、実際には、その二つの時代がなかなか一つにならず、カラマカデの記憶がなぜ失われたのかも答えらしきものは得られず、結局のところ、二人の白人にしても、カラマカデにしても、一体何を求めてアマゾンを奥へ奥へと進んでいるのか獏としてとらえどころがありません。

もちろん、物語上はヤクルナという聖なる植物を求めているわけですが、登場時には今にも死にそうだった白人学者がカラマカデの煙を吸わせる応急処置で至って元気になってしまったり、数十年後の白人学者にしても、最後に実はゴムがどうたらこうたらとあり、エンディングのヤクルナを燃やすシーンや一輪残った話もどうとらえたらいいのか分からず、結局、カラマカデとヤクルナの関係がはっきりしていないことが原因かと思われます。

途中出会う先住民たちや奇妙なカルト集団も、一行がたまたま寄ったかのような描き方がされており、特にカルト集団は、カラマカデとの関係の中で描かないと何やら陳腐な印象しか残らないと思います。要は、なぜそんなところに寄り道するの?に説得力がないということです。

あまり良くない印象ばかり書き連ねることになってしまいましたが、批判のつもりはなく、面白い題材で期待が大きかったということであり、筋を一本通してくれれば間違いなく傑作になっただろうと思います。

余計なことですが、たとえば、記憶を失った数十年後のカラマカデが、閉ざされた自分の心の闇におりていき、過去の自分と対話するというような、数十年後のカラマカデから入る手もあったのではないかと思います。

もうひとつ、先住民と侵略者の問題としてみれば、一行の三人を先住民、西洋化した先住民、西洋人(侵略者)としてバランスを取ろうとし、あるシーンでは突然、西洋化した先住民に、ゴムの木にあたらせることによって侵略者への怒りを表現したりするのは、さすがにちょっと安易かと思います。

いずれにしても、こういう映画が見られなくなることは寂しいことですので、買い付けする会社や上映する映画館には頑張って欲しいものです。

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