そんなには褒めないよ。映画評

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何者

テンポ、編集、カメラワーク、音楽、そして俳優、すべてに映画的センスがいい、けれど…

2016/11/18

就活? ルームシェア? 5人の若者? んー、テレビドラマみたいだなあ…、と、かなり迷って見に行きましたら、面白かったです。ちゃんと映画になっていました(スマソ&笑)

見たいと思った理由のひとつに三浦大輔監督というのがあったのですが、うまいですね。細かいところまで意識されていてスキがないです。

佐藤健くん、「るろうに剣心」をDVDで見ただけのファン(笑)ですが、この映画もいいですね。

監督:三浦大輔

演劇サークルに全力投球していた拓人(佐藤健)、拓人が片想いをしている瑞月(有村架純)、瑞月の元カレで、拓人とルームシェアをしている光太郎(菅田将暉)、瑞月の友達の理香(二階堂ふみ)、就活はしないと宣言する、理香と同棲中の隆良(岡田将生)。就活中の5人の抱く思いが複雑に交錯し、徐々に人間関係が変化していく。自分はいったい「何者」なのか?(公式サイト)

現役で就活中の人にはかなりリアルな物語なんだろうとは思いますが、「就活」などという言葉のなかった時代の者には、割りと青春物語の王道にも見えます。

5人+1人の室内会話劇は、「若者たち」(なにそれ?笑)みたいなものですし、結局、青春が青春たる所以は、過ぎ去るものという感覚ですし、この映画にもそれは色濃く漂っています。

物語の軸は、就活中の5人の若者たちの心の裏表がチラチラと見え隠れしながら、最後はすっかりあからさまになってしまうというもので、それがツイッターというツールを使って、うまく描かれています。

原作がそうなのか、あるいは三浦監督が演劇畑だからなのかは分かりませんが、5人のキャラクターはかなり舞台ぽくメリハリを効かせてパターン化してあります。たとえば、意識が高く余裕系なのに実は必死系の里香とクリエイティブ装い系なのに着実志向系の隆良の二人は裏表があるタイプ、特徴がなく普通系の瑞月と単細胞系の光太郎は裏がない(見せない)タイプ、そして裏はなさそうにみえるのに一番ひどいタイプ(笑)の拓人といった具合です。

こんなありふれた設定なのになぜ面白かったのか?

それは、映画がサスペンスタッチといいますか、就活ホラーという言葉も使われていますので、ホラー・サスペンスといいますか、そうした不穏な空気が全編通して流れており、それが編集のうまさやテンポとあいまって、結構引きつけられるわけです。

カメラワークも、それを意図しているのでしょう、それぞれのカットで非常にゆっくりパンさせて不安定感を出したり、拓人を仰角で撮ったりといろいろ工夫をこらしていました。

時折挿入される演劇のシーンも効果的でしたし、音楽もよかったです。俳優も皆うまくはまっていました。

スマホやツイッターがうまく使われていました。

冒頭からツイッター画面が頻繁に出てきますし、会話中であってもやたら拓人がスマホを弄るカットが多く、なんだろう?と思っていましたら、それが映画のクライマックスにつながっており、つまり、拓人は分析力があるとされているキャラなんですが、そうした皆への冷たい分析をツイッターの裏アカで書いており、それを理香に見抜かれてしまうわけです。

そのアカウントが、@nanimono だった(のかな?)わけで、このシーンの責める二階堂ふみと動揺が顔に出ない佐藤健がいい感じでした。もし、動揺を演出しなかったのが監督の意図であったのなら、そのセンスは相当なものです。

ということで、次回作も見てみようと思わせられた映画でしたが、やや演劇臭いオチが気になります。

オチ(的なもの)が2つありまして、ひとつは、はっきり見きれませんでしたが、この物語が舞台で行われている芝居であるかのような演出、そしてもうひとつは、自分自身の愚かさに気づいた拓人が、面接官の「1分間で自分を表現してください」の問いかけに、自分自身の過去を語り始め、最後に「とても1分では語れません」と告げるわけです。

原作がそうなのか、あるいは、救いが必要と感じたのかは分かりませんが、映画としてみれば、それまでの張り詰めていた空気が一気にしぼんでしまうように感じます。

愛の渦

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  • 池松壮亮

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