タンジェリン

iPhoneで撮ろうと何で撮ろうと映画は映画

全編 iPhone5sで撮られているそうです。

MtF トランスジェンダーのセックス・ワーカー二人とアルメニア移民のタクシードライバーの三人のクリスマスイブの一日を追いかけています。

タクシードライバーのラズミックが、通りで拾ったシスジェンダーの娼婦に、お前のようなやつがくるところじゃないというようなことを言っていましたので、ゲイ・タウンのような地域の話なんだと思います。

ロサンゼルスです。

監督:ショーン・ベイカー

アナモレンズを装着した3台のスマートフォンを駆使した斬新な撮影方法で、トランスジェンダーの女性たちの友情と恋愛をリアル&ポップに描いた『タンジェリン』。ロサンゼルスのストリートを臨場感たっぷりにとらえた、スマホならではの自由自在なカメラワークによって、観客も主人公たちと街中を駆けずり回っているかのような感覚に!(公式サイト

iPhone で撮ったといっても、上の引用にありますように、3台の iPhoneにアナモフィクスレンズを付けてワイドスクリーンになるように撮っていますし、多分撮影環境は通常の映画製作と変わらないでしょう。

映画の撮影的な出来は、iPhoneであるかどうかなんて全く問題にならない出来ですし、逆に言えば、iPhoneで映画が撮れることくらい分かっているんですから、ここまでするのなら、あえて iPhoneで撮らなくてもいいんじゃないのとも言えます。

小回りがきくとか、目立たないのでゲリラ撮影ができるとかはあるかも知れませんが、iPhoneで映画を撮ったと聞けば、素人臭くともインパクトのあるものを期待していたんですが、良いのか悪いのか大はずれです。

ポストプロダクションにしても、意図したことを意図したままに出来ているように思いますし、とにかく期待に反して(笑)出来過ぎています。

要は、仮に iPhoneで撮って納得がいかないものなら、そもそも撮っていないだろうということが伝わるくらいにプロフェッショナルな映画製作だということです。

監督自身がそれを売りにしているわけではないかもしれませんので、それは置いておいて、映画はよくまとまっています。というより、まとまりすぎています。

特にエンディング、MtF二人がしんみりと友情を温め合うなんて、いくらなんでもまとめすぎでしょう。

なんて書きますと非難を浴びそうですが、つまり、物語自体にはあまり新鮮さはなく、対象がトランスジェンダーのセックスワーカーであるという点において興味を持たれているのではないかということです。

それに、シンディやアレクサンドラって、公式サイトにトランスジェンダーとありましたのでそう書いていますが、そうなんですかね? 男性器に違和感があるからジェンダーを越えようとするのだと思っていましたが、アレクサンドラとラズミックのシーンでは、アレクサンドラにそうしたところは感じられませんでしたがどうなんでしょう?

それはともかく、主役の二人、シンディ役のキタナ・キキ・ロドリゲスさんとアレクサンドラ役のマイヤ・テイラーさん、いいですね。俳優じゃないんですよね。これを機に俳優を目指してもらって、他の映画でも見てみたいですね。

それに、これは上映環境のせいかもしれませんが、予告編のような色彩感やクリアさが感じられませんでした。

ほぼ予告編で分かる映画です。


『タンジェリン』予告