パーソナル・ショッパー

全編クリステン・スチュワートの魅力爆発!(となったかどうか…)

「クリステン・スチュワート × オリヴィエ・アサイヤス」のチラシを見たときは、ああなるほどと、「アクトレス ~女たちの舞台」が頭に浮かびました。

そのリンクの記事で「クリステン、この個人秘書役がむちゃくちゃいい」と絶賛し、オリヴィエ・アサイヤス監督も「唐突に(映画の中から)クリステンを消してしまったことを後悔しているだろう」と監督の心情を読むようなことまで書いたのが、当たり!という意味です。

その映画でのクリステンの出来は、セザール賞や全米映画批評家協会賞の助演女優賞受賞という形で評価されています。

監督:オリヴィエ・アサイヤス

セレブに代わって服やアクセサリーを買い付ける“パーソナル・ショッパー”のモウリーン。最愛の双子の兄が亡くなり、悲しみから立ち直れずにいた。そんな中、携帯電話に奇妙なメッセージが届き始める。まるでモウリーンを監視しているかのような送信者は、モウリーンの別人になりたいという秘めた欲望を暴いていく。やがて周りで次々と不可解な出来事が起こり、遂には殺人事件へと発展する。(公式サイト

やっぱり、オリヴィエ・アサイヤス監督、完全にクリステンにやられちゃってますね。

だって、クリステン・スチュワートが出ないシーンはひとつもないんですよ。これ、クリステンを撮りたいがための映画ですよ(笑)。

余計なお世話とはいえ、大丈夫でしょうか(笑)? ミア・ハンセン=ラヴ、顔立ち似てますやん。

で、映画の出来はと言いますと、まあ、私もクリステン・スチュワートの名を見れば見てみようかと思う程度にはファンになっていますので、さほど悪い印象はないのですが、もう少し客観的に見ますと、ダメですね(笑)。

まず、オリヴィエ・アサイヤス監督オリジナルの脚本が未完成だと思います。

始まって30分ほどは一体何の映画がさっぱり分かりません。

モウリーン(クリステン)ともう一人の女性が、ある屋敷にやってきます。その女性は「大丈夫?」と声を掛けて去っていきます。そして、夜。モウリーンはひとりで照明もつけず暗闇にいます。モウリーンは、「ルイス? いるの?」と声をかけながら暗闇の中、誰かを探しているようです。真っ暗な中、時々物音がするのですが、モウリーンが怖がる様子は全くありません。

で、何が何やらさっぱり分からないまま、パリの街をスクーターで走り回るシーンとなり、何軒かのショップでドレスやらアクセサリーをキーラという有名モデルのために買い付けるパーソナルショッパーであることが示されます。

と、よく分からないなあ、のほぼ限界に達しようとしていた30分くらいでしょうか、何とクリステンが上半身裸で横たわっているではありませんか!

何だ、このくぎ付けカット!? 字幕が読めないだろ!

などと思いつつも、なんとか理解したところによりますと、モウリーンには双子の兄ルイスがいて、二人とも心臓が通常とは違うらしく、そのせいでルイスはつい最近亡くなっているとのことで、上半身裸なのは主治医の診察を受けているシーンだからでした。

オリヴィエ、意図的に裸のシーン入れたでしょ、などという邪推はおいておきまして、やっとこのあたりから物語の「起」が分かってきました。

つまり、モウリーンとルイスは双子であることや共に心臓に疾患(?)を抱えていることもあるのでしょう、相当に仲がよかったらしく、どちらかが先に死んだら、あちらの世界から何らかのサインを送るという約束をしていたとのことで、また、二人共に、映画では霊媒師というちょっと違和感のある訳をしていましたが、共に霊感が強いということです。

これで最初のシーンがわかりました。一緒にいた女性はルイスの妻ララ(シグリッド・ブアジズ)で、あの屋敷は二人の住いであり、モウリーンはルイスからのサインを待っていたということです。

ということで、この映画、見終わってみれば、基本の物語は二つあり、ひとつはモウリーンとルイスの霊的交感というオカルト物語、そしてもうひとつはパーソナルショッパーという職業(?)で表象される他者になりたいという欲望、モウリーンの変身願望からのサスペンスということでした。

サスペンスの方を簡単に書いておきますと、ある時、突然モウリーンのメッセンジャー(SMS)にメッセージが入ります。モウリーンはそれが霊からのものなのか実在の誰かなのか迷いつつ、次第にそのやり取りから、自分にキーラのドレスやアクセサリーを身に着けてみたいという欲望があることを認識させられ、その誘いに応じる形でキーラの部屋でドレスを身に着けたり、そのままホテルへ向かったりします。

そして、事件が起きます。キーラが自分の部屋で殺されているのです。それを発見するのがモウリーン、ただこのあたりのサスペンス度は大したことはなく、すぐにキーラの恋人であった男が捕まります。

はっきりした答えはありませんでしたが、多分モウリーンへのメッセンジャーもこの男のものだったのでしょう。

結局、脚本&監督の意図としては、二卵性双生児というアイデンティティ確立の不確実性と、他者のセンスと自分を一体化する必要のあるパーソナルショッパーとを相互関連させつつ、(よく分からない)どこかへ収斂させようと試みたのだとと思いますが、如何せん、脚本&監督には、どうやらクリステン・スチュワートしか目に入っていないらしく(笑)、思うようにならなかったのだと思います。

まあそれでも、そんなに悪くなかったですよ。クリステン・スチュワートの淡白な裸体も見られましたし、いかに映画が監督の個人的私物であるかということもわかりましたし(笑)、ということですね。

ただ、オリヴィエ・アサイヤス監督にとってみれば、監督賞(2016年カンヌ)は不本意であり、主演女優賞を取りたかったのだと思います。

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