漫画的?劇画的?こういう映画はオリジナリティがないと難しい
「キラキラではなく、ギラギラした青春群像。実話をベースにした“真っ黒な青春映画”が誕生した。『下衆の愛』の内田英治監督と英国人プロデューサーのアダム・トレルが再びタッグを組み、オリジナル脚本で“地方社会”のリアルを笑いたっぷりに描いた異色作。新興宗教にはまる親、未成年者を取り込む風俗産業、社会保障を食い尽くすヤクザとその手先として利用される不良ども…。そんなクソヤローたちに翻弄されながら必死に生きる場所を見つけようとする男女を描くブラックコメディー」(公式サイトから)
面白そうと思って見てみたのですが…。
監督:内田英治
(公式サイト)
漫画の実写版のような、いや、違うかな? 漫画的に事象が平板に並べられた映画という感じですかね。ああ、劇画的という言葉がいいかもしれません。
ですので、ネタが新しければ面白く、ありきたりであればつまらないということになるんじゃないかと思います。
で、この映画のネタは、アウトローと純愛ということになるのかと思いますが、これって結構古くからのテーマであり、よく映画の題材にもなっています。
愛衣(伊藤沙莉)は、幼い頃から崩壊した家庭で育ち、まあ言ってみればお決まりの道を歩むことになります。母親は宗教依存症、父親は語られることさえありません。5,6歳の頃かな、母親がハマっている宗教団体に引き取られ、宗教名アナンダで7年過ごし、教主がなぜかは分かりませんが逮捕され一般社会に戻るも居場所がなくヤンキー(半グレ?)家族の元に、そしてその家族が(多分)ヤクザの抗争(のようなもの)に巻き込まれバラバラになるや、今度はその身に同情した下級生の家に引き取られ、やっと居場所が見つかったかと思いきや、親の愛情を奪ったとその下級生に罵られ、親にはキャバ嬢(かな?)であることがバレて追い出されます。
その後どうなったんでしたっけ? 話題が他の男女、アントニーと韓英恵に移りしばらく登場しなくなっていたと記憶しています。
そして最後は、出所した教主がはじめた AVプロダクションで AV女優アナンダとして有名になるというお話です。
一方の亮太(須賀健太)は、特にこれといったことはなかったですね。家庭環境なども語られることはなく、何となく今に居心地の悪さを感じている少年という感じでしょうか、愛衣を見守るポジションに置かれているということでしょう。
映画が亮太の語りで進行し、「愛衣が2番めに居場所を得たのはこの家族だった」という感じでナレーションが入ります。
二人は、愛衣が宗教団体から出た後に通う中学で出会い、互いに意識する存在になりますが、途中その関係が進展することはなく、一度だけ亮太が女生徒から告白された時に「俺、好きな子がいるんだよね」と愛衣を「コイツ」というシーンがあるだけです。
そしてラスト、愛衣の新作DVDのサイン会のもとに亮太が訪れ再会、それでもなお「じゃあ」と言って別れるのみかと思いきや、立ち去る亮太を追いかけた愛衣が「私もだよ」と叫びます。
私も初めて会った時から好きだったよという意味でしょう。
そして回想シーン、初めて会った教室です。愛衣と亮太が机をはさみ向かい合い、はっきりしたやり取りは記憶していないのですが、愛衣の最後のセリフは「孤高なんだよ!」で終わります。「孤独」と「孤高」のやり取りだったと思います。
漫画っぽいカットです(批判ではありません)。
ということで、新鮮さやオリジナリティがあまり感じられません。公式サイトには「ギラギラした青春群像」「真っ黒な青春映画」「地方社会のリアル」「純情」などの言葉が踊っていますが、どれも中途半端でクエスチョンがつきますし、全体としてどこかで見たような設定やシーンが多いです。
ただ楽しめないわけではなく、作る側と見る側が一つの共通基盤を持っていれば楽しめるでしょうし、「獣道」ってその程度?と思ってしまえばつまらなく感じる映画かと思います。