エタニティ 永遠の花たちへ

映画的ドラマ(いわゆるネタ)を排した美しき動きの映画

んー、唸っちゃうような映画でした。

悪い意味ではありません。こんな映画撮れるのはおそらくトラン・アン・ユン監督くらいでしょうという意味です。

なんて言うんですかね、んー、と唸ってばっかりですが(笑)、まあ、動く静物画とでも言いますか、完全に映画的ドラマを排した美しき動きのある映画です。

「青いパパイヤの香り」と「ノルウェイの森」しか見ていませんが、この映画、トラン・アン・ユン監督の集大成のような感じがします。

監督:トラン・アン・ユン

『青いパパイヤの香り』『夏至』『ノルウェイの森』のトラン・アン・ユン監督が、花と緑に囲まれたフランスの美しい邸宅を舞台に3世代の女性たちの命の輝きを描く感動の物語(公式サイト

この映画にネタバレなんてありません。上に引用した通り、19世紀末から3世代、およそ100年近くのフランスのブルジョアの家族の「生と死」が、映像と音楽とナレーションで語られていくだけです。

多くの子どもが生まれ、多くの人が死んでいきますが、そのひとりひとりの人生が描かれることはありません。ただ時の流れが、美しき映像と音楽とナレーション…、また同じことを書いていますが、あえて言えば、あるいはトラン・アン・ユン監督の気持ちとしては、ナレーションもつけず(流れるように美しい)映像と音楽だけで描きたかったのかも知れません。

どう言葉で説明しようとしても無理ですね。この映画は見ないと分かりません。

おそらく、俳優はかなり大変だったのではないかと想像します。

台詞はほとんどありません。許される感情は「喜びと悲しみ」だけです。

「喜び」は、愛し、愛され、新しい命が誕生する喜び。

「悲しみ」は、愛するものを失う悲しみ。

この二つだけでこの映画はつくられています。

考えてみれば、結局のところ、人が生きることの究極の意味合いはこの二つに集約されるわけで、大きな時間の流れの中では他のものはさほど重要なことではないのかも知れません。

オドレイ・トトゥ、メラニー・ロラン、ベレニス・ベジョ、ジェレミー・レニエ、ピエール・ドゥラドンシャン、みな良かったです。

あるワンカットのオドレイ・トトゥの佇まい、一瞬のメラニー・ロランの表情、それだけでも感動し涙が流れます。

俳優が画の中に溶け込んでいました。ただ、ベレニス・ペジョは一貫して表情が固くやや浮いた感じがしていましたが…。

撮影は、リー・ピンビンさん、相変わらず美しい画です。

ところで、字幕が「ブルジョワ家」となっていましたが、ブルジョワジーの一家という意味ではなくファミリーネームでいいのかな?

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