面白いのですが、何が撮りたいのか見えてこない
前作「神様なんかくそくらえ」が、2014年の東京国際映画祭のグランプリを受賞したジョシュア&ベニー・サフディ兄弟監督の新作です。
その前作では「次作で化けてくれれば」などと偉そうなことを書きましたが、この映画は面白かったです。
ただ…
ああー、やっぱり、但し書きがついてしまいました(笑)。
監督:ジョシュア&ベニー・サフディ
ニューヨークの最下層で生きるコニーと弟ニック。銀行強盗をやり弟だけ捕まってしまう。コニーは弟を保釈するよう奔走する。しかしニックは獄中で暴れ病院送りになっていた。コニーは病院へ忍び込み警察が監視するなか弟を取り返そうとする。(公式サイト)
初っ端から人の顔のドアップが続きます。知的障害のある弟ニックがカウンセリング(でいいのかな?)を受けているシーンですが、ニックとカウンセラーを交互に顔のみのカットで切り返します。
このニックをやっているのがベニー・サフディさん、監督の弟さんの方ですが、うまく演じていました。知的障害のある役をうまくやっていたと表現することがどうなのかとの迷いはありますが、受け答えとか、相手をいらっとさせるかもしれないところとか、パニックに陥るところとか、映画の流れを阻害せず、極めて自然です。
そこへ兄のコニー(ロバート・パティンソン)が飛び込んできます。コニーは、カウンセラーに「何をやっているんだ!」と怒鳴り、ニックには「お前を愛しているのは俺だけだ。俺だけを見ていろ!(こんな感じだったかな?)」とニックを連れ出します。
このシーンだけで、この兄弟のやや異常な絆の強さがこの映画の軸になって進んでいくんだなとわかります。
そして次は、黒人の二人組の銀行強盗のシーンです。一瞬、え?なにこれ? と思ったのですが、黒人のラバーマスクを被った二人でした。
といった具合で、つかみは OK、その後もとにかく走りまくり、目まぐるしく展開していきます。
強盗は一旦は成功するのですが、お金を入れたバッグに赤い粉が吹き出す防犯用の何かを仕込まれ、ふたりとも真っ赤になって警察に追われる羽目になります。コニーはなんとか逃げおおせますが、ニックが捕まってしまいます。
ここは正直、ニックのことを放って逃げていましたので、オイオイとは思ってみていました(笑)。
この映画、実は笑えるとことが多いんです。特に後半などコメディかと思うくらいです。
で、その後の展開を簡単に書きますと、コニーはニックを保釈させようと必死にお金を集めようとし、一方ニックは留置場で暴れて喧嘩となり病院に収容されます。
それを知ったコニーは病院へ忍び込みニックを連れ出すことに成功!、したかにみえたのですが、なんと、連れ出したのは全くの別人です。
このあたり、ツッコミどころも多いのですが、そのテンポとハチャメチャぶりでほとんど気になりません。
連れ出したのが別人となってからは、お話が別の物語になってしまいます(笑)。
どういうことかといいますと、映画の雰囲気やハチャメチャぶりは変わらないのですが、コニーはニックのことなどすっかり忘れてしまったかのように、その別人レイとの凸凹コンビ映画になってしまいます。
ところでこの別人、その名前が何かを探すのにも苦労したのですが、バディ・デュレスさんという俳優さんらしいです。「神様なんかくそくらえ」にも出てたんですかね。こういう俳優さん結構好きなもんですからいろいろ探してみました。
そのレイも病院で警官の監視つきでしたのでコニーが間違えたわけですが、彼は仮釈放されたばかりの身にもかかわらず、ダチと何やかやで(忘れました)大量の LSDを手に入れた末にそれを隠し、何やかやで再逮捕されていたようで、後半はこの LSDを軸に物語が進むことになります。もちろん、ニックの保釈金のためにということなんでしょうが、そもそもラストを除いてもうニックは出てきません。
で、結局、LSDは手にするのですが、コニーは捕まってしまい、レイは逃げ込んだ先のビルから墜落して死んでしまいます(多分)。
そして、唐突にラストシーンが始まります。
ニックが他の障害者とともにセラピーを受けています。最初はひとり佇むニックでしたが次第に皆と行動をともにするようになり、映画は終わります。
なに、このラスト?
という映画です。
結局、そこそこ才能はあり、あれやこれやいろいろできるのですが、この映画も「神様なんかくそくらえ」と同じように、肝心のどうしても撮りたいもの、それが感じられない映画ということです。