きれいごと過ぎない? 彩乃(佐々木心音)がいいです。
ほとんど何も知らずに、瀬々敬久監督の名前で見に行ったところ、異常におじさん比率が高く、といっても自分もそのうちのひとりに数えられそうですが、それはともかく、一体何だったんでしょう?
もしや「紗倉まな」さんファン? と、今、公式サイトを見ながら思ったわけです。
それが確かかどうかはわかりませんが、紗倉まなさんという「現役AV女優による初の小説」とコピーされた小説が原作とのことです。
監督:瀬々敬久
人気AV女優、紗倉まなの同名小説を『ヘヴンズ ストーリー』『64―ロクヨン―』の瀬々敬久監督が衝撃の映画化。どうにもならない現実を前に、それでも自分らしく生きようとする女性たちを力強く、時に繊細に描く。(公式サイト)
瀬々敬久監督の映画は、「ヘヴンズストーリー」 しか見ていないと思いますが、今自分のブログを読み返しても、思い出すのは団地の廃墟だけです。7年前ですから仕方ないともいえますが、4時間38分の長さだったことも忘れちゃっています。
率直な感想を言っちゃいますと、この映画もすぐに忘れてしまいそうです。
まず何はともかく導入がわかりづらく入り込めません。3人の女性のそれぞれのシーンがかなり細かくシャッフルされて編集されていますので、一体何がどうなっているのかつかむことに労力を求められます。
まあ、そういう映画はそもそもダメなんですが、それは置いておいても、それを乗り越えて、何とか、ああこの3人の話なんだなと分かってからも、今度は映画の軸がつかみきれません。
公式サイトのイントロダクションを引用しますと、
果てしなく続くかのような日常に耐えきれず、新しい世界の扉を開く平凡な主婦、美穂。家族に内緒で、AV女優として多忙な生活を送る専門学生、彩乃。奔放な母親に振り回されつつも、絵を描いている時だけ自由になれる女子高生、あやこ。そんな境遇も性格も異なる女たちの運命は、ある出来事をきっかけに動き始める…。
とのことらしいのですが、そもそも、美穂(森口彩乃)がAV女優を始める理由が全くわかりません。「果てしなく続くかのような日常に耐えきれず」とありますが、そんな風には全く見えません。
AV女優という職業、そもそも職業というべきものなのか、職業と言うことそれ自体に何か問題ははらんでいないか、あるいは、それは男性社会であるがゆえに存在しうるものなのではないかなどなど、就活して就職することとは別次元のものと思われるものを、まあこんなにもきれいごととして描いていいのかとの疑問がわきます。
その「AV女優」という、ある種「時代のキーワード(って変?)」かもしれないものが映画の軸になるべきだと思いますが、中盤以降、およそ映画の方向性がみえてからも、その存在感が全く見えてきません。もっと切り込むべきでしょう。
そういう話じゃないか…?
「AV女優として多忙な生活を送る専門学生」の彩乃(佐々木心音)、この人物はなんとなく理解できます。この世の中、こういう感覚はあり得るだろうという程度には理解できます。
そして、もう一人の「女子高生、あやこ」、この人物は、母親が元 AV女優だったという設定です。
この3人の女性が「AV女優」という極めて現代的な「時代のアイコン(って、これも変?)」とも言えるものに、自分の人生を翻弄(違うな…)される物語です。
映画の作りとしては、冒頭にも書きましたように、ほぼ全編、3人の別々のシーンがかなり細かくシャッフルされて編集されていますので、集中を持続させるのはけっこう大変です。
ただ、編集はとてもうまく、流れに違和感はありません。問題は、起伏がないことです。(編集の)流れは極めて自然なんですが、単調で飽きてしまいます。
結局、物語は、美穂とあやこの父親が一緒だったという、ある種ドラマチックともいえる結末を入れつつ、3人がそれぞれ(幸不幸とは別次元の)生きている実感みたいなものを感じて終わる、そんな映画です。
まあ、何にしてもきれいに作られすぎています。
彩乃(佐々木心音)、この人物を中心に作ればよかったのにと思います。この俳優さん、いいですね。
原作を読んでみました。