そんなには褒めないよ。映画評

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エンドレス・ポエトリー

(ややネタバレ)ホドロフスキー監督の自伝であり「リアリティのダンス」の続編

2017/12/05

「リアリティのダンス」の続編と言っていいと思います。

ホドロフスキー監督の自伝的映画で、「リアリティのダンス」は少年期の話でしたが、この「エンドレス・ポエトリー」は、その後の青年期の話になります。

「リアリティのダンス」に比べれば、かなり具象的で、家族や社会との関連が明確な分、わかりやすくなっています。

カルトムービーと呼ばれる映画の特徴は、およそテーマを純化させ象徴的にシュールに描いていることだと思いますので、おそらくこの映画はそうはならないでしょう。 

監督:アレハンドロ・ホドロフスキー

ホドロフスキー一家が故郷トコピージャから首都サンティアゴへ移住するところから始まる。青年アレハンドロは抑圧的な両親との葛藤に悩み、自分の道を表現したいともがいていた。ある日、従兄リカルドに連れられて、芸術家姉妹の家を訪れ、自分が囚われていた檻からついに解放される。(公式サイト)

前半は、ホドロフスキー監督に興味なり思い入れがなくても楽しく見られると思います。が、後半は、正直パターンが同じですので飽きてきます。 

どんな映画かを一言で言えば、ホドロフスキー監督の記憶の中に強く印象づけられた自身に関するエピソードを独自の映像感覚で映像化したものと考えればいいように思います。

まず、両親のエピソード、父親は権威的で抑圧的だったそうで、サンディエゴの労働者街に雑貨屋(かな?)を営む父親が、貧しそうな労働者夫婦が泥棒を働いたということでひどく痛みつけ、それをアレハンドロにも強要することで描いています。母親はオペラ歌手だったそうで、全て歌うことで演技しています。

この父親を演じているのが、ホドロフスキー監督の長男ブロンティス・ホドロフスキーさんだそうです。母親はオペラ歌手のパメラ・フローレスさん、この二人は「リアリティのダンス」と同キャストです。

次に、アレハンドロが解放されるきっかけとなる芸術家グループとの出会いが描かれます。従兄弟のリカルドの紹介で、詩人、画家、ダンサーたちと出会い、アレハンドロが自分の居場所を見つけます。

詩人たちとの出会いでは、先日見たパブロ・ネルーダさんの名前も出てきました。

次は、公式サイトには「初めて恋」とあるステジャ・ディアス(母親役のパメラ・フローレスの二役)との恋愛がかなり強烈な映像感覚で描かれます。これは言葉での説明は無理ですので見ていただくしかないですね。

そして、その恋人との別れ、従兄弟リカルドの自殺、自身のアトリエを持って人形劇を上演したりパーティーで大騒ぎしたり、詩人エンリケ・リン(レアンドロ・ターブ)との友情、実家の火事によって両親が焼け出されたり、といった数々のエピソードが、独特の映像感覚と、おそらくサーカスなどの祝祭的なものへの執着が強いのだと思いますが、小人症の出演者を多用し、また、主要人物以外は無機質な群衆として仮面をかぶせたり、無表情、無感情な存在として描いたりして、シュールに、シンボリックに、ホドロフスキー監督自身の記憶(であり思い)を描いていきます。

どのシーンからだったかははっきり記憶していませんが、途中からアレハンドロの青年期は、監督の末の息子アダン・ホドロフスキーさんがアレハンドロを演じています。

こうした映画は、言葉で説明することにあまり意味はありませんね。

で、最後は、アレハンドロがパリへ旅立つところで終わります。ここにも父親が登場し、確執と和解(したのだったか?)が描かれますから、相当子供の頃の父親の抑圧がトラウマのように残っているということなのでしょう。

撮影監督はクリストファー・ドイルさんです。正直、え?と思うような組み合わせです。私の考えるところでは、クリストファー・ドイルさんは、リアルな現実をイマジネーション溢れる画に変化させる方だと思いますので、どういう意図なんだろうとちょっと不思議な感じです。

結果として、映画の雰囲気にもかなり影響しているように思います。

で、ホドロフスキー監督、この続編も撮ることになるのでしょうか?

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