ブルー・バタフライ

ドキュメンタリー「健さん」の日比遊一監督が撮った初の劇映画

日比遊一監督という方を知らなかったのですが、名古屋出身でニューヨーク在住なんでしょうか、ウィキペディアには「健さん」という高倉健さんのドキュメンタリーを2016年に撮っており、一昨年のモントリオール映画祭で最優秀作品賞を受賞したとあります。

劇映画としては、この映画が第一作とのことです。

写真家でもあるようで、確かにこの映画でも、そのままスチル写真にしてもいいようなカットがたくさんありました。

いやいや、むしろスチル写真で構成された映画といってもいいくらいです。

監督:日比遊一

公式サイト(Facebook)

もう少し言いますと、ある人物を撮った一枚の写真があるとしますと、その写真を見る者は、その人物はどんな性格で、どんな過去を持っていて、どんな生活をしているんだろうなどといろいろ思いを巡らせるわけですが、その思いをスクリーンで見るような感じの映画だということです。

その人物がヤズ(トレイシー・ペレス)で、ある朝(とは限らないのですが)、打ち捨てられただだっ広い倉庫のようなところのど真ん中にぽつんと置かれたベッドで目を覚まします。倉庫にはドアなど扉もなく入り口からは日が差していますので、寝泊まりする場所としてはなんとも奇妙なシチュエーションです。

なぜこの女性はこんなところで寝泊まりしているのだろう? そのわけを映画は教えてくれます。

ヤズは義父に性的暴行をうけて育ったらしく、成人した今もドラッグに溺れる生活をしています。今日も女友達(レズビアンを思わせますがよくわからない)とドラッグをめぐり何やら(よくわからないけれど)ごちゃごちゃしています。 

ヤズにはマニー(イヴァン・カミロ)という兄がおり、多分父側の連れ子だと思いますが、ヤズを守るために父親を刺したらしく、服役後、今は仮釈放の身です。

ヤズは何か問題が起きると、今でもマニーを頼り厄介事を持ち込みます。マニーの身元引受人(元警官)は自らの息子を亡くしており(らしい)、おそらくその思いをマニーにかけているのでしょう、マニーを立ち直らせるためにヤズと縁を切れと諭しますが、マニーは断ち切れません。

ヤズはついにはドラッグ(のお金)のためにマニーの息子を誘拐してしまいます。

で、どうなりましたっけ? 特に何も起きず息子は戻ったと思います。

ということで、スチル的な画は結構いいのですが、最初に書いたとおり、その画が映像に引き伸ばされている印象で映画的な物語(ドラマという意味ではない)が感じらません。それにヤズの人物背景も(ドラマとしては)ありがちで、なかなか心に響くところまではきません。

おそらく脚本も監督自身と思われますが、一度他のライターのシナリオで撮ってみてはと思います。