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グッバイ・ゴダール!

ゴダールと言えども、男女の別れは映画通りにはいかず…

2018/07/14

今さら私が説明するまでもないゴダールですが、ただ、今でも代表作として語られる映画の多くは、1959年の「勝手にしやがれ」から、この映画の冒頭に出てくる1967年の「中国女」あたりまでの作品で、この映画が描く時期は、一般的には(映画が)あまり知られていない時期で、自らの成功をぶち壊そうとした転換期だったようです。

変革をもって登場したがゆえに、常に次なる変革を求められ、また自らにも変革を課すという、革命児と呼ばれる人には安住の地はないということでしょう。

その時期の5年余りを、妻として、また俳優として共に歩んだアンヌ・ヴィアゼムスキーさんから見たジャン=リュック・ゴダールを描いた映画です。

公式サイト / 監督:ミシェル・アザナビシウス

監督は、「アーティスト」のミシェル・アザナビシウスさん、前作がチェチェンを描いた「あの日の声を探して」」ですので、いろんな映画を撮る監督ですね、という感じがします。

原作は、ゴダール1967年の作品「中国女」の主演であり、同年に結婚したアンヌ・ヴィアゼムスキーの自伝的小説『それからの彼女』ということです。

アンヌ本人を演じたのは、「ニンフォマニアック」で若い頃のジョーをやっていたステイシー・マーティンさん。あの映画ではまるで小枝のような体型でしたが、この映画でも、結構裸のシーンがあり、あれから5年くらい経っていますが、相変わらずの体型でした。

(自由という)時代の空気ということもあるのかもしれませんが、かなり意図的に裸を使っていました。ただ、多分監督のセンスだと思いますが、エロさはなく、別になくてもいいのにと思いながら見つつも嫌な印象はありません。

ゴダールをやっているのはルイ・ガレルさん、ゴダール本人を知っているわけではありませんが、実際こんな感じだったのではないかと思えてとても良かったです。

映画は、「中国女」を撮り終えたあたりのふたりから始まりますが、結婚にいたるラブラブのシーンもなく、実に淡々としています。

話は飛びますが、映画監督と主演女優の結婚というのは結構あるパターンで、誰でしたか、女優さんの話を読んだ記憶がありますが、何でも監督は神様に見えるらしく、(以下、創作)それを愛と混同してしまうらしいです。

日本のヌーヴェルヴァーグと言われる監督たちも、大島渚と小山明子、篠田正浩と岩下志麻、吉田喜重と岡田茉莉子がそうですし、最近では、園子温と神楽坂恵、石井裕也と満島ひかり(別れた?)と、かなり多いパターンではあります。

どうでもいいか?(笑)

ただ、この映画でもありましたが、監督と俳優という力関係から恋愛がスタートしますと、その関係を維持するために、監督が男であれば(って、ほとんどそう)マンスプレイニングという状態におちいりやすいとは思います。

なかなか映画の話に入れませんが、まあ内容は想像通りで、ゴダールとアンヌの結婚から別れまでがアンヌ視点で描かれているわけで、実際、アンヌがどう感じていたかはわかりませんが、この映画を見る限り、いわゆる(幻想的ではあっても)愛というものがあったかどうかは疑わしく、アンヌにはそう見えていたということでしょうが、ゴダールの頭の中にあったのは、何かをしなければといったある種強迫観念のようなものが「革命」へと向かう意識であり、20歳のアンヌにしてみれば、そうした行動も最初は光り輝いて見えたのでしょうが、次第に先鋭化するゴダールについていけなくなり、ついに破局ということになるわけです。

映画では、あまりアンヌ自身のことが浮かび上がってきませんが、原作もゴダールのことばかりが書かれているんでしょうかね? 読んでみたいとは思いますが、それにしても、映画のアンヌはあまり意味のあることは喋っていなかったですね。ふたりの間では、映画についても、革命についても、まるで話がなく、求めるものが違うふたりのようにすれ違いの話ばかりだったのですが、アンヌにはそう感じられたということでしょうか。

そうだとすれば切ない話ですが、いやいや、その後のアンヌ・ヴィアゼムスキーさんの経歴を見ますとそうでもないでしょう。結構やりあったんじゃないかという気がしてきます。原作を読んでみたいですね。

映画全体としてはさらりとしていて、ルイ・ガレルのゴダール以外はあまり印象に残りません。時代は1968年、5月革命の時期ですので、もう少し騒然とした感じとか、熱っぽさとか、高揚感とかがあればと思いますが、これはもう監督のセンスですからどうしようもありません。

一応、街頭デモや大学の集会のシーンもあり、エキストラの人数もそうですが、衣装や車とか、結構大変だったとは思いますが。

それにしても、年の差カップル、対等ではない関係の男女の結末は、たとえゴダールと言えどもごくありふれた別れ方ということでしょうか。

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