ダミアン・マニヴェル監督特集

若き詩人、犬を連れた女、パーク、日曜日の朝

「イサドラの子どもたち」公開記念ということでしょうか、ダミアン・マニヴェル監督の特集上映が行われています。

「犬を連れた女(2010)」「日曜日の朝(2012)」「若き詩人(2014)」「パーク(2016)」の4本です。

ダミアン・マニヴェル監督は五十嵐耕平監督との共同監督として「泳ぎすぎた夜」という映画も撮っています。

ダミアン・マニヴェル監督特集

ダミアン・マニヴェル監督特集 / 監督:ダミアン・マニヴェル

若き詩人、犬を連れた女 

「若き詩人」と「犬を連れた女」は、2016年にも上映されており、その時はギヨーム・ブラック監督の絶賛コメント

ダミアン・マニヴェルを知り、我々は確信する。極めて独特でありながら一貫する世界を持ち、最小限の条件の中でも素晴らしい作品を創り上げる作家がここにいるのだと。(『若き詩人』のために ギヨーム・ブラック | IndieTokyo

にやられて見に行きました。もちろん期待は裏切られていません。

その時の感想はこちらです。

「若き詩人」にはやや退屈と書いていますが、あらためて見てみますとまた違った印象です。ワンカットワンカットが味わい深いです。

物語は、18歳(と言っていた)の詩人を目指す青年レミが南仏のリゾート地セットで詩作に耽る(ちょっと違う)という話です。

レミを演じているのはレミ・タファネルさん、実名ですし年齢も実年齢だと思います。その4年前の「犬を連れた女」で初めて映画に出演したようでその後俳優の道に目覚め現在も映画や舞台で活躍しているようです。

レミが詩作に耽ると書きましたが、映画的にはセットという街を歩き回り、淡い恋をし、失敗し、酒を飲み酔っ払い、夜の街で路上にもどしながら、ときどきノートに詩を書き記し、ポール・ヴァレリーの墓の前で反省する(笑)という話です。

この画像で映画の雰囲気は想像できると思います。

それに結構ぷっと吹き出しそうになる場面も多いです。たまたま出会った(と思う)同年代の女の子が気になって、会えないか会えないかと街を歩き回り、やっと会えてもかっこよくは振る舞えず、突然自作の詩でしょうか、歌で愛の告白をしてみたり、その後別れた後、これまた突然後ろから抱きついたりしていました。女の子は当然やめてよ!と怒ります。でも、映画としては笑えます。

犬を連れた女

「犬を連れた女」の方は前回見たときの記事を引用しておきます。この通りです。

迷い犬を飼い主の女性宅に届けた(映画ではよく分からない)少年(レミ・タファネル)と飼い主の女(エルザ・ウォリアストン)の微妙なやり取り、時折はさまれる女性の顔のどアップの迫力、無理やりラム酒を飲まされる少年のとまどい、酔っ払ったのかタヌキ寝入りなのか突然いびきを響かせる女、犬の後を追うとそこは寝室、眠っていたはずの女がやってきてベッドに横たわる、そしてひとこと「何がしたいの?(だったと思う)」

このいかにも映画的なシチュエーション! と、非映画的なビジュアル!

ただ、「非映画的なビジュアル!」が何を指しているのか自分ながらわかりません(笑)。

パーク

タイトル通りの公園を撮った映画です(笑)。

と言いますのは、映画の中頃まではマニヴェル監督は公園を撮りたかっただけなのかなと思いながら見ていたこともあり、また見終わってもそうかも知れないと思うからです。ところがこの作品には他の作品にないドラマ性が持ち込まれています。

お昼くらいでしょうか、 少年(高校生くらい?)が公園のベンチに座っています。同年代の少女がやってきます。デートの待ち合わせのようです。

映画の前半は公園を歩き回ります。最初のぎこちなさから次第に会話もこなれ、ときどき体に触れ合うことで距離も近くなり、木陰て軽くキスし、さらにシャツを脱いだ少年の胸に少女がキスをしたりディープキスをするまでになります。

夕暮れです。少年がもう帰らなくちゃと言いますと、少女はまだ帰りたくないと言います。しばらくして少女は帰ってほしくないのに少年が帰ってしまいます。少年が振り向かないか、戻ってきてくれないかという意味の少年の後ろ姿を捉えたショットが続きます。

本当に帰ってしまったようです。少女を捉えたカットが続きます。少女がショートメールを送ります。2、3度送りますとやっと返事が返ってきます。

「君のことは好きだけど、まだ前の彼女と終わっていない」

思わず吹き出してしまいましたが、なおもやり取りは続きます。少女の方はかなり執拗に送りますが、少年の方はときどき返してくるという感じです。

少女が「もとに戻りたい(戻したいだったかも)」(出会う前にという意味)

「ごめん、君は可愛いから、きっといい人に会えるよ」

「くそったれ!」「あなたとは会いませんように」

マニヴェル監督にしては思わぬ展開でどうなるのかなあと思っていましたら、映画はさらに不思議な展開になります。

少女はそのまましばらく眠ってしまったようです。あたりは暗くなっています。ふっと目覚めた少女はすくっと立って後ろ向きに歩き始めます。ひたすら公園の中を後ろ向きで歩き続けます。少年と一緒に歩いたことを消し去ろうとするかのように何カットも後ろ向きで歩くシーンが続きます。(テネットではありません(笑))

公園の管理人が懐中電灯を持って、マドモアゼル、閉園ですよとやってきます。少女は構わず歩き続けます。管理人は、何をやっているんですかと追い続けます。

この追い掛けっこがかなり続きます。

少女がつまずき倒れます。管理人が追いつきこちらも疲れて座り込みます。しばらくあって、ふたりが見つめ合い、管理人が立ち上がったかと思いましたらいきなりカンフーを始めます。

このとき気づくべきでした。少年はカンフーをやっていると話していたのです。

管理人が少女に手を差し伸べ少女が立ち上がり、ふたりは公園の中を追い掛けっこするように戯れます。このシーンも何カットかあり、公園の池の辺りに出たのか、管理人がボートに乗り少女を手招きし乗り込みボートで池に漕ぎ出ます。

ボートが池の中で止まり、少女が管理人を見つめるカット、少女の横顔のカットに少年がフレームインしてきます。少女に近づき頬を愛撫しキスします。少女が少年の首に腕を回し応えます。ふたりのキスは熱く、少年が離れようとしますが少女は離しません(笑)。

ふたりは池に落ちるのかと思いましたがそうはなりませんでした(笑)。

翌朝です。少女が眠りから覚めます。

という、後半はダミアン・マニヴェル監督の作品にしては意表を突く展開の映画でした。

ですので、実は公園の一日を撮りたかっただけではないかと思ったわけです。

日曜日の朝

日曜日の早朝、男が犬を散歩させるだけの映画です。

時間の経過とともに街が変わっていく様子が見られます(笑)。

泳ぎすぎた夜(字幕版)

泳ぎすぎた夜(字幕版)

  • 発売日: 2019/01/09
  • メディア: Prime Video