(DVD)吉本ばなな色はうすいけれどもチェ・スヨンはちょっと気になる
原作は短編集の一作のようで、あとがきには、この「デッドエンドの思い出」が自分の作品の中でいちばん好きと書かれているらしいです。
久しぶりに吉本ばななさん読んでみようかな。
監督は韓国のチェ・ヒョンヨンさん、韓国と日本の合作です。
日本で働く婚約者を訪ねてきた韓国人のユミ(チェ・スヨン)は、婚約者が別の女性と暮らしており、婚約者からその女性と結婚するつもりだと告げられます。ショックを受けたユミは街をさまよううちにたどり着いた古民家カフェ兼ゲストハウス「エンドポイント」に滞在することにします。その店主西山(田中俊介)やカフェに出入りする人々との交流のうちにその傷も癒え帰っていくという物語です。
吉本ばななさんらしい、当事者にはとても大変なことなんだけれどもそれを第三者視点でさらりと書いている感じの物語と思われますが、実はそのさらりの中に当事者の大変さがにじみ出てこないと吉本ばなな色がでてこないです。割とありがちなドラマで終わってしまっています。
それでもまあ、(私の)記憶にある(吉本ばなな色という)それと重ね合わせて見ればああそうかなという感じはします。
これといった特徴のない映画です。
おそらくその一番の理由はユミをやっているチェ・スヨンさんのリアリティのあり過ぎじゃないかと思います。俳優としてよくないという意味ではなく、むしろ、俳優としては結構いいんじゃないと思ったのですが、原作のユミはもっと曖昧な存在じゃないかと思います。
物語自体、失意の人物が癒やされていく過程という意味ではありがちな設定だと思いますが、その失意がその当事者本人の内面ではなく、当事者のまわりの空間との関係で癒やしが描かれていくのが吉本ばなな色だと思います。
その点ではそもそもの失意自体が映画としてうまく表現できておらず、癒やしの過程も下町ドラマの人情もの的な空間になってしまっています。
簡単に言ってしまえばユミがまわりの空間に溶け込んでいかないということかと思います。
チェ・スヨンさんの他の映画を見てみたいと出演作を見てましたがそそられる映画がないですね(笑)。