銀河鉄道の父

賢治は父親のようになりたかったのか、なりたくなかったのか…

当然ながらDVD鑑賞です。

銀河鉄道の夜 / 監督:成島出

本当はお父さんのようになりたかった…

門井慶喜さんの『銀河鉄道の父』の映画化です。

なんて知ったようなことを書きましたが、この小説のことも、門井慶喜さんという方も、この小説が直木賞を受賞していることも知りませんでしたし、さらに映画のタイトルが「銀河鉄道の夜」ではなく「銀河鉄道の父」であることも今このDVDを見るまで気づきませんでした(ちょっと盛ってます…)。

じゃなぜDVDを借りたかといえば、菅田将暉さんが宮沢賢治を演じているというただその一点だけです。

でも、原作もそうなんでしょうが、映画の主題は宮沢賢治の父親を描くことのようでした。いや、そうでもないですね。宮沢賢治と父親政次郎の父子関係を描いている映画といったほうがいいですね。この父親あっての宮沢賢治だったという描き方です。

父親を演じているのは役所広司さん、賢治が生まれた22歳から演じています。特殊メイクなのか、映像の加工なのか、えらく肌が張っていました。そして賢治が37歳で亡くなる政次郎59歳までを演じています。

とにかく映画の政次郎は一貫して賢治に優しい父親です。それに対して賢治は映画後半で本当はお父さんのようになりたかったと言っていました。

実際の賢治がどうであったかはわかりませんが、本音は父親のようになりたくなかったのかもしれませんね。あるいは、家業が嫌だったのかもしれません。

宮沢賢治の家が花巻の名家だった程度は知っていたのですが、父親宮澤政次郎は質屋だったんですね。映画の中でも言っていましたが、要は金貸しですので裕福な家だったということです。

案外こういうケースというのは多いもので、一般論としてですが、家業の跡を継ぐのが嫌で反抗はしてみるもののうまくいかずに結局親の世話になるみたいなことはありそうです。

エキセントリックな賢治…

賢治の描き方はかなりエキセントリックです。それが演出意図であれば菅田将暉さんのキャスティングはあっていると思いますが、法華経あたりの描写は見ていてつらいです。

原作にどのように書かれているかにもよりますが、ウィキペディアの記述からみますと賢治の生涯については随分端折られています。賢治の生涯の大きな節目に政次郎がどうしたかということが映画の主題と思われますので仕方ないことでしょう。

その意味では宮沢賢治の映画と思って見ますと期待外れになるかもしれません。

賢治の誕生、赤痢で入院、盛岡中学卒業後家業を継がずに盛岡高等農林学校に進学、日蓮宗への傾倒、妹トシの死、『春と修羅』の自費出版、そして病の床についてからの死という節目でドラマがつくられていきます。

妹トシの死と賢治の死の描写の扱いがとても大きいです。時間的にもかなり長いです。賢治が病に冒されてから死ぬまで30分あります。人の死はドラマになりやすいということなんでしょうか。

それにしても、母親イチ役の坂井真紀さん、私はなんのためにいるの?なんて思ってるんじゃないですかね。「銀河鉄道の父」だから仕方ないか…。

宮沢賢治の映画でもなく、銀河鉄道の父の映画でもなく、家族映画でもなく、父と息子の共依存にも思える映画でした。