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ハナレイ・ベイ

(ネタバレ)吉田羊さんの良さが出ていないし、村上春樹っぽさもない

2018/11/05

もう公開3週目に入っている映画なんですが、ずっと気になっていながら見られずにいました。何が気になっていたのか自分でもはっきりしませんが(笑)、おそらく、村上春樹原作ということと吉田羊さんという俳優に興味があったからでしょう。

公式サイト / 監督:松永大司

1日1回の上映になっているくらいですから、多分ガラガラだろうと思っていましたら、7割くらい入っていてびっくりしました。ほとんどが女性(女の子)でしたので、誰かアイドル系の俳優が出ているのか、まさか村上虹郎くん? と思ってみていましたら、映画が始まっていきなりサメに食われてしまったサーファーの子を見て、ああ、何かテレビだったか、ネットだったかで見たことある、この子を見に来ているんだと、でも、誰だかわからず、エンドロールでやっと EXILE の子らしいということがわかりました。

佐野玲於くんというようです。EXILE って、映画進出に力を注いでいるんですかね? 河瀬直美監督の「Vision」に 岩田剛典くんという子が出ていました。映画の中のポジションがどちらも似ていますね。割と重要な役なんですが、登場シーンが少ないというところが似ています。EXILE(事務所)の映画に対する戦略的アプローチということかも知れません。

で、映画ですが、全編、サチ(吉田羊)を追い続けています。サチ以外のシーンは、冒頭、タカシ(佐野玲於)がサーフィンに出かける1シーンくらいでしょう。

タカシはサメに襲われ、右足を食いちぎられて亡くなります。サチが遺体を引き取りにハナレイ・ベイにやってきます。遺体との対面、サチの態度はどことなくよそよそしく、涙をながすわけでもなく、係員に遺体の手形(を残す習慣があるのかな?)を持ち帰るか?と尋ねられても首を振るばかりです。手形は必要になるまで預かっておくと言われます。

タカシの遺品を持って日本へ帰るサチ、遺品の中には、タカシの父親が使っていたウォークマンが入っています。見たくもないもののように、それら遺品をダンボールに詰めて封をしてしまいます。

タカシの父親でありサチの夫(栗原類)は、まだタカシが幼い頃、ドラッグでキメて(ヤク中)他の女とのセックス中に死んだということです。夫がウォークマンを聞きながら白い粉を吸いサチに暴力を振るう過去の1シーンが挿入されていました。

また、その父親との件が影響しているかどうかを映画は全く語っていませんが、サチとタカシの折り合いの悪さを描いたシーンが何シーンか挿入されています。普通にみれば普通の母子のやり取りだと思いますが、語っていないとはいえ、おそらく夫を憎んでいるがゆえに息子にもその思いが反映されるということなんでしょう。

サチは、その後10年にわたって、タカシが亡くなった時期にハナレイ・ベイを訪れ、3週間ほど何をするでもなく、浜辺でデッキチェアを広げ、読書にふけります。

そして、10年後、その場所で日本人のサーファー二人に出会います。ひとりは高橋(村上虹郎)といい、サチがホテルを紹介したりと気さくに話すようになります。サチが息子もサーファーだったことを話すと、写真はあるかと尋ねられ、持っていないと答えますと、不思議そうに、普通持ってるでしょうと言われてしまいます。

高橋たちは、帰国する日、サチに、サーフィンをしていると浜辺に赤いサーフボード持った片足のサーファーがよく立っているのを見るが知らないかと尋ねます。

サチがタカシにプレゼントしたサーフボードも赤です。

サチはなにかに取り憑かれたように何日も(衣装が3回変わったので3日?)浜辺を歩き回り片足のサーファーを探し回ります。見つかりません。

ホテルのオーナー(従業員?)に尋ねますと、怪訝な表情で、これをやるよとフォトブックをくれます。その中には在りし日のタカシの写真があります。

サチは、それまで毎年いらないと断ってきたタカシの手形を受け取り、おもむろに自分の手を重ね、「あんまりじゃない…」とつぶやきます。手形の上にサチの涙がこぼれます。

日本に戻ったサチ、封をしたタカシの遺品の中からウォークマンを出し、ヘッドフォンをかけスタートさせます。イギー・ポップの「The Passenger」が流れます。


Iggy Pop – The Passenger

どのシーンだったか記憶が曖昧ですが、サチの顔をとらえた背景に片足のタカシが立っているカットがあったと思います。タカシを探し回る最後のシーンだったように思います。

という映画です。

まずは、見終えて、村上春樹氏がこんな話書くんだろうかと思ったんですが、ネットで原作のあらすじなど読んでみますと、ほぼ原作に沿っているようです。長編はかなり読んでおり、私にはファンタジー作家という印象が強いためか、こんな現実的な母子ものは書かんだろうと思ったわけです。それに、イギー・ポップは村上春樹氏のセンスじゃないようにも思います。原作は、短編集「東京奇譚集」の中の一編ということです。

ただ、「喪失」というのは村上春樹氏の作品の一貫したキーワードですので、その意味ではそうなのかもしれません。

村上氏の短編の映画化では、「神の子どもたちはみな踊る」が村上春樹っぽいと感じた記憶があります。

www.movieimpressions.com

吉田羊さんは、力が入りすぎている感じです。遺体との対面あたりはまだ最初ですし、片足のサーファーを探し回るラスト近くは動きがありますのでまだ持ちますが、10年間通うところや高橋たちとのシーンは、まあ基本的には監督のせいだと思いますが、深みがなく持ちません。2時間の映画の主役を張るのは難しいのではないでしょうか。ストレートな物言いがいいんですけどねえ…。

映画としても、ちょっと2時間は持ちません。と思いましたら97分のようです。長く感じたということです。確かに、ラストの2,3シーンはまだあるの?という感じでした。

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