奥山大史監督、サンセバスチャン国際映画祭新人監督賞受賞作
奥山大史(ひろし)監督、現在23歳、この映画を撮ったのは青山学院大学(映画美?)の卒業制作だそうです。それにしてもびっくりするくらい映画がまとまっています。若いのに老成という言葉まで浮かんできます。
フィックスが多いせいもありますが画が上品ですし光の使い方もうまいです。それにユラをやっている佐藤結良くん、その画によく耐えています。耐えているというのも変ですが演技していないようにみえます。彼じゃないとこの映画は出来ていないかもしれません。
そうした自分の求める俳優を見つけ出すのも才能ですし、それに監督、脚本、撮影、編集も奥山さんとのことです。完全にひとりで作った映画ということになります。将来が楽しみといいますか、逆に言えばちょっと心配にもなります。
で、この映画は面白いかといいますと、きっちり子供の視点で描かれていることは評価できますが、さすがに「神の不在」へのアプローチの単純さは、大人が(私が)共感できるような内容ではありません。
なぜ奥山監督はこのテーマを選んだのかと思いましたが、本人の実体験があるようです。「亡き親友に捧げる」といったスーパーが入っていましたし、監督自身、幼稚園から大学までミッション系の青山学院に通っていたとのことです。
この映画を見る限り、奥村監督はクリスチャンではないと思いますが、子どもの頃にユラのような体験をしたということなんでしょうか。
ファーストカットは、和室に座るおじいちゃんがおもむろに指をなめて障子に穴を開け外を覗くところから始まります。続くカットはユラが両親とともに車で移動するシーンです。
ん?あれは何だったの? と思いますが、疑問を長引かせることなく、程なくうまい具合に教えてくれます。
そのおじいちゃんが亡くなり、おばあちゃんひとりになった父親の実家に家族で引っ越すことになったということです。その夜、ユラはおばあちゃんと一緒に寝ることになり、おばあちゃんが障子の穴はおじいちゃんが開けたものだと教えてくれます。それにしても障子は穴だらけでした(笑)。
この障子の穴はラストカットにつながっていきます。こうしたつくりがまとまりすぎている印象を与えます。批判ではありませんが、一作目からこんなに出来上がっていていいのとは思います。
ユラが新しく通う学校はミッション系の学校です。礼拝堂でのお祈りの時間があったりとユラは戸惑います。当然すぐに友達ができるわけではありません。ただ、特別ひとりぼっちという描き方がされているわけではありません。
ある夜、家族で食事のとき、友達はできた? と尋ねられ、うん、できたよと答えてしまいます。
翌日でしたか、教室でのお祈りの際に相変わらず戸惑っていますと、机の上に小さな神様がシュワッチと現れます。その後、礼拝堂へ行き友達ができますようにと祈りますと、再び神様が現れます。そして、サッカーのうまい和馬という友達ができます。
その夜(かな?)、再び食事の時、友達の名前は?と聞かれ、和馬と答えます。家族はホッとし笑顔がこぼれます。
また、お金をくださいと祈り(お願いし)ますと、おばあちゃんがおじいちゃんのへそくりが見つかったと千円くれたりします。
といった感じで、ユラと和馬は親友となり、新しい学校での生活も楽しいものとなっていきます。
しかし、ある日、和馬が車に轢かれで重体となります。
映画的にはさほど重要じゃないかも知れませんが、ここの流れは、ん?という感じがしました。学校でサッカーのミニゲームをやっています。なぜかユラがぷいっとその場を離れて帰ってしまいます。先生も、ユラ、どうした?などと追っていましたので、ユラは普通じゃないわけです。
シーン変わって、家です。ユラはひとりで人生ゲームをやって、ひとりで上がってしまいます。以前和馬と二人で人生ゲームをやり、ユラがなかなか上がれないんだよねと言っていたシーンがあります。
シーン変わって、和馬が坂を下りながらサッカーボールで遊んでいます。ボールが転がります。交差した道路に飛び出した和馬は車にはねられます。
何を意図した流れだったんでしょう?
で、ユラは必死で祈ります。しかし、和馬は亡くなってしまいます。
ユラはおじいちゃんのへそくりの千円で和馬が好きだった青色の花を買って机の上に供えます。先生からお別れの会で弔辞を読むように言われます。
お別れの会、弔辞を読み終えたユラの前に小さな神様が現れます。じっと見つめるユラ、そして突如、組み合わせた手をその神様に叩き下ろします。
ファーストシーンの障子のある部屋、障子は、以前おばあちゃんと一緒に張り替えて真新しくなっています。ユラは障子をしばらく見つめ、おもむろに指で穴を開け、そして覗きます。
ユラが覗いた先には、学校の運動場でユラと和馬がボール遊びをする姿が見えます。
おじいちゃんは何を見ていたんでしょうね?
という、とても20代前半の若者が撮るような映画ではない(撮るべきではない)映画でした(笑)。
二作目を期待しますが、撮らないかもしれませんね。すでに広告の仕事をする会社員とのことです。