マッド・ハイジ

マッドになりきれないハイジ、パロディにもならずにパクリで終わる…

タイトルからしてバリバリのB級ねらいです。こういうセンスの映画には意外と掘り出し物があったりします。

が…。

マッド・ハイジ / 監督:ヨハネス・ハートマン、サンドロ・クロプシュタイン

もの足りな~い…

もの足りな~い、のひとことですね。

チーズ会社を経営するマイリはスイスを支配する独裁者です。チーズの流通も独占しています。チーズを受け付けない者を抑圧したり、チーズの凝縮プロテイン化を図り、一口食べればモンスター化するチーズを開発しようとしています。

といっても、それらみな中途半端です。

ハイジとペーターは愛し合っています。ペーターはヤギのチーズの闇取引に関わっており、それが発覚して、町であっけなく殺されます。ペーターは頭を撃ち抜かれて血が飛び散っていました。

こうしたスプラッター系のグロさを売りにしようとしているのかもしれません。

追われたハイジは山に逃げ帰りますが、包囲され、山小屋ごとおじいさんが吹っ飛んでしまいます。

ここでは抑圧者対レジスタンスのドラマパターンが使われています。マイリの軍隊はナチスっぽい造型がされており、ですので親衛隊といったほうがいいかもしれませんが、その隊長とおじいさんは過去に戦ったことがあるようでした。山小屋の爆発は樽に引火してのようでしたので爆薬でも隠されていたんでしょう。ただ、おじいさんは死んでいません。後にターミネーターのように炎の中からよみがえっていました。

このドラマパターンも有効に使われていません。後半になり、おじいさんが生き返り、村人たちとともにレジスタンス風で登場しますが…それだけです。

ハイジが捕まります。クララもいきなり拘束されて登場していました。クララは弱々しさが演出されていますが、登場時は健常者であり、その後拷問を受けて車椅子を使っていました。

このあたりもモタモタしてテンポが上がりません。

ハイジは逃げ出します。山に戻り、妖精のような人物と出会い、格闘術から武器の扱いまで鍛え上げられます。私が知っているところでは、キル・ビルとかスター・ウォーズとかのパクリです。こういう映画ですからパクリはいいんですが、パロディになっていないと笑えません。

で、あれこれあって、建国記念日の格闘技戦(これもパクリでしょう…)などあり、チーズを食べてモンスター化した招待客のフランス使節団との戦いもあり、最後は動けなくなったおじいさんがひとり残ってマイリの宮殿を爆破し、立ち上る炎をバックにハイジとクララとレジスタンスが歩いてくるカットで終わっていました。

映画を何とは言えませんが、よくあるパターンのカットです。そう言えば、マイリはどうしたんでしたっけ? 記憶していません。

足りないものは…

まずはオリジナリティーでしょう。

映画すべてが、と言っていいほど他の映画のパクリです。こういう映画ですからそれはいいんでしょうが、それから一歩進めるためにはやはりオリジナリティーがないと見るべきものになりません。

それに構成力ですかね。テンポが上がらないのはこれが足りないからでしょう。

結局、中途半端なものになっているのは思い切りが足りないということかと思います。やはり、こうした映画の場合は、こういうものを作りたいという強い思い、偏執的でもいいですのでどこか吹っ切れたものがないと難しいのかもしれません。