もみの家

物語も人物も富山の風景に溶け込んでいる

ていねいに作られた映画ですね。

富山出身、在住(かな?)の坂本欣弘監督が富山を舞台に一年かけて撮ったということです。実際に富山の四季の移り変わりとともに物語は進みますし、有名な砺波の散居村の夕陽風景も使われています。

もみの家

もみの家 / 監督:坂本欣弘

もみの家

もみの家 / 監督:坂本欣弘

不登校になった東京の16歳の高校生彩花(南沙良)が、嫌々ながらも富山の自立支援施設「もみの家」で生活することになり、自らの意思で登校の意思を示すまでが描かれていきます。

その過程はおおよそ想像通りに進みます。主宰者夫婦(緒形拳、田中美里)のやさしさ、施設の仲間たちの気取りのない接し方、農業体験、先輩への恋心と別れ、地元のお祭りへの参加、地元のおばあちゃんとの交流、その死と向き合い、そして新しい命の誕生に立ち会うことによって自らも一歩踏み出す決心をします。

こういう映画を見ますと、私などはなにかよくないことが起きるのではとヒヤヒヤしてしまいますが、それはひねた大人の無用の憂慮のようで(笑)、なにか事件が起きるわけでもなくごく自然に進みます。

その自然さがゆえのスムーズさ、出演者たちが富山の風景にしっくり収まっているところがいいのでしょう、最後まで集中して見られます。

現実の引きこもりがどういうものかを知るわけではありませんし、当然ながら個々それぞれ異なった事情を抱えていると思われますので、この映画の彩花のようにいくのはまれのような気もしますが、それでも環境を変え、人間の生に直結する経験をすることはなにかに迷ったときには有効なんだろうなあと思います。

富山にある自立支援施設「はぐれ雲」がモデルになっているようです。

NPO法人 北陸青少年自立援助センター「Peaceful House はぐれ雲」|富山市・ニート・引きこもりの自立支援

費用をみてみましたらちょっとびっくりです。

入会時(入寮時)150,000円、月額154,000円だそうです。それ以外にも保護者負担経費として毎月10,000円程度を預かると書いてあります。面接料3,000円というのもあります。

この金額をみますと映画の見え方も違ってきますね。

まあとにかく、この映画のよさは物語も人物たちも風景にうまく溶け込んでいるということとともに、彩花をやっている南沙良さんに物語を引っ張っていく力があったからでもあります。

現在17歳ということは、この映画の時はリアルな16歳だったということになります。20歳かもう少し上かなと思って見ていました。

幼な子われらに生まれ」、「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」に出ていたとありますので読み返してみて、「幼な子」の方はあああの子かという感じで思い出す程度、「志乃ちゃん」の方は記憶はしていますが吃音というはっきりと演技が必要の役でしたので、むしろ相手役の蒔田彩珠さんのほうが印象に残っています。

この映画の彩花役は俳優としての評価が出る役ですのでやりがいがあったのではないかと思いますし結果としてもよかったです。それぞれのシーンで、表情はもちろん、別人に見えたりすることもあり、こうした映画ではそれはよかったということです。

坂本欣弘監督はこの映画が二作目で、一作目の「真白の恋」も富山を舞台にした映画のようですね。見てみましょう。

富山で合同会社コトリというフォトスタジオもやっているようです。

合同会社コトリ: 撮影技術やインテリアも都会の流れを積極的に導入 高いクオリティのフォトスタジオ展開を目指す | クリエイターズステーション

真白の恋

真白の恋

  • 発売日: 2017/11/08
  • メディア: Prime Video