ナイトフラワー

汚れ役の北川景子さん、格闘家役の森田望智さん

私にとっては「ミッドナイトスワン」以来になる内田英治監督ですが、ウィキペディアを見てみましたらその間にも数本撮っているんですね。年1本ペースでオリジナルが多いですし、小説も書いているとあります。すごいですね。

ナイトフラワー / 監督:内田英治

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ネタバレあらすじ

なにーい?! これだけ好き勝手にあれこれネタをぶっ込んでおいて、最後の最後に、さて、どうなんるんでしょう? って、ちょっとふざけていませんか?!(笑)。

という、ふざけたと言いますか、結末をどうしようかと迷った挙げ句に放り投げてしまった映画です(多分…)。

夏希、ドラッグの売人になる

物語自体は既視感の強いエピソードをつなぎ合わせたような話で新鮮さはありません。北川景子さんの汚れ役で売ろうという映画じゃないかと思います。それと森田望智さんの格闘シーンも見せ場ではありました。

子ども二人を抱えたシングルマザーの夏希(北川景子)が生活苦からドラッグの売人になり、その用心棒として格闘家の多摩恵(森田望智)と知り合い、いつしか子ども二人とともに疑似家族を築くという話です。

多摩恵は格闘家ということもあるのか、外見的には男性的な人物造形がなされており、意図的に男女の夫婦に子ども二人のような家族に見せようとしています。ただ、同性愛的な描写はありません。

監督レベルの意識としては、おそらくこの疑似家族を見せようとしているんだと思います。

夏希は、逃げた夫が残した借金を返しながら10歳くらいの娘と幼稚園児の息子を育てているシングルマザーです。北川景子さんの関西弁を活かそうとしたのか、大阪から東京に出てきているという設定になっています。場末のカラオケバーみたいな飲み屋の、昭和の言葉で言えばホステスをやり、他にもラブホテルの客室清掃員に地球儀製作のパートを掛け持ちして働いています。それでも毎日毎日きつきつの生活です。

息子が餃子を食べたいと言っても食べさせられません。娘はヴァイオリン教室に通っており、夏希は無料だと聞いていたものの実は娘が路上で演奏して投げ銭(物乞い的な描写がされている…)をもらって受講料を払っています。後にはそれを知った夏希がやめさせています。

という日々の中で、夏希はある時、ドラッグの売人が襲われて金銭を奪われる場面に遭遇します。気絶している売人に近づき、恐る恐るドラッグを盗んで走り去ります。

切羽詰まった夏希は思い切ってそのドラッグを売ってお金を得ようとします。しかし、密売グループに見つかり殴り飛ばされます。その場を多摩恵が通りかかり介抱したことから二人の関係が始まります。

多摩恵は格闘家です。ただそれでやっていけるわけではなく風俗で働いています。また、多摩恵のジムも経営難で借金取りに追われるような経営です。多摩恵は格闘に人生を掛けているようで、ジムのオーナーに稼いだ金を渡しています。ただ、ジムの経営難はオーナーのギャンブルが原因であり、後半にはオーナーがトンズラしてしまいます。

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エピソードの豊富さが仇に

夏希の生活環境を知った多摩恵は二人で組んでドラッグの密売をやらないかと持ちかけます。もちろん夏希への同情というわけではなく多摩恵本人にも現状から逃れたいということだとは思います。

そして二人は多摩恵の幼馴染を通して密売グループ(半グレかな…)に話をつけ、順調に稼いでいきます。また、家庭環境に恵まれない育ち方をしてきた(ようだ…)多摩恵は照れを感じながらも次第に夏希家族に溶け込んでいきます。子ども二人も多摩恵を慕うようになります。

エピソードとしては、娘がヴァイオリンの発表会に多摩恵にも来て欲しいと願ったり、稼ぎのよくなった二人がヴァイオリンを娘に与えたり、そのヴァイオリンで娘がいじめを受けたりという、これもかなりありきたりでステレオタイプなエピソードが持ち込まれています。

そしてもうひとつ、物語のオチに向けた物語が並行して描かれていきます。二人からドラッグを買う高校生くらいの女の子がいます。買うと言っても友達に買わされているという描き方で、おそらく両親への反抗心だと思いますが、家にも寄り付かなくなっています。家はそれなりに裕福そうで、母親みゆき(田中麗奈)にお金をちょうだいと言えばすぐにくれます。

このみゆきの人物像がちょっと変わった感じに造形されています。演出だと思いますが、日常の動作はノロノロとして意識がその場にないような感じで、思い詰めたらなにをするかわからないような人物に見せようとしています。多分、ラストシーンのためでしょう。

そのみゆきが探偵(渋川清彦)に娘の素行調査を依頼します。探偵は娘が夏希からクスリを買っていることを突き止め報告します。

という感じでエピソードも豊富ですし、なにか起きそうといった感じでは進みます。

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余韻にもならない放り出されたエンディング

が、これがあまりはっきりしないんですね。おそらく映画の軸となるべき夏希の売人稼業が順調に進みすぎているのがダメなんだと思います。

それでも物語を進めなくちゃいけませんのでコトは起きます。起こします。

なつきの幼稚園児の息子が他の園児と喧嘩になり相手の目を傷つけてしまいます。多額の示談金を請求されることになり、夏希は多摩恵の反対を押し切ってドラッグの扱い量を増やしてもらいます。

また、多摩恵のジムのオーナーが逃げ、試合も組めずに途方に暮れます。でも、突然朗報がもたらされ、元チャンピオンとの試合が組まれます。試合は多摩恵が負けますが、かなり激しい格闘戦があります。負けて倒れ込んだ多摩恵を夏希が優しく抱きかかえるシーンで終わっています。

みゆきの娘が町中で警察の職務質問にあい、逃げ、車に轢かれて死にます。警察からみゆきに死亡の電話が入ります。

売人の元締めが足がつくことを恐れたのか、夏希たちを処分しようとします(ということだと思うけどよくわからない…)。まず夏希と多摩恵を紹介した多摩恵の幼馴染を暴行し車に乗せて捨てに行きます(違うのかな…)。続いて多摩恵を襲い、しかし、元締めが、3つ質問する、答えによっては助けてやると言い、よくわからないままに、そこでこのシーンは終わっています。

みゆきが探偵から拳銃を買います。300万円と言っていました。そしてロングコートに見を包み、夏希のアパートに向かいます。夏希の娘を見つけ、拳銃を出そうとします。そこでこのシーンは終わっています。

アパートには夏希と息子がいます。拳銃の発砲音がします。なんだろうと怪訝な顔の夏希、息子が花火(だったと思う…)と言いますと夏希はハッとして何やら不安にとらわれます。チャイムが鳴ります。走っていく息子、止めようとする夏希、入ってきたのは娘と多摩恵です。

抱き合う四人、ベランダではナイトフラワーが花をつけています。

という、一切結末を描かない映画でした。

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感想、考察:母ちゃん、ねえ…

この終え方は余韻じゃなく、ただ描いていないだけですね。なぜこんな終え方をしたんでしょう。

ですので疑問となる、3つの質問は何だったのかとか、多摩恵はどう答えたのかとか、みゆきはどうしたのかとか、発砲音は何だったのかとか、考えても意味がありません。

結局、夏希と多摩恵の疑似家族、そして半グレの兄ちゃんが頻繁に言う「母ちゃん」がこの映画のテーマ、と言うほどでもないテーマだと思います。内田英治監督、1971年生まれの54歳、昭和価値観に染まっているわけでもない年齢なのに不思議ですね。

映画的には、あれこれ盛り込まれているエピソードが中途半端なまま終えられており、全体的に散漫です。

夏希の借金の話も中途半端ですし、あれだけ働いてなぜそんなキツキツなのか、それに生活保護も受けている設定になっていました。多摩恵のジムの経営難の話も適当過ぎて、オーナーが逃げたのにどうして持続できるかと思います。夏希の娘のヴァイオリンの才能の話も煮えきらず、いじめも適当な扱いです。結末へ導くためだけのみゆき母娘も取ってつけたような存在です。

もしかして続編をつくるつもり? それはないですね。

ところでなぜこの映画を見ようと思ったかは、多分初めてだと思う北川景子さんを見ようと思ったからです。それというのも髙石あかりさんを見ようと「ばけばけ」を見始めて、北川景子さんの品格漂う物乞い姿にちょっと驚いたからです。

「ばけばけ」の北川景子さんはぴったりハマっていますが、この映画にはあっていないです。

この映画には関係ありませんが、「ばけばけ」の髙石あかりさん、あまりコント芝居にはまらないほうがいいと思います。余計なことですが、俳優としての幅が狭まりますよ。