ラフィキ ふたりの夢

ケニア、自由にあるがままに生きたいと願う少女たち

ケニア映画です。アフリカを「舞台」にした映画ではないアフリカ映画って見たことがあるのだろうかと思い返してみても記憶がありません。

この映画の製作は南アフリカの Big World Cinema というプロダクションで、アフリカ映画がたくさんラインナップされており面白そうなものがあります。

監督のワヌリ・カヒウさんは1980年のナイロビ生まれですから39歳くらいのケニアの方です。大学はイギリスやアメリカで学んでいるようです。ウィキペディアIMDb では2006年くらいからのキャリアが出ています。

ラフィキ ふたりの夢

ラフィキ ふたりの夢 / 監督:ワヌリ・カヒウ

この「ラフィキ」は、昨年2018年のカンヌ国際映画祭ある視点部門で上映されたようで、ケニア映画としては初とのことです。本国ケニアでの上映は、同性愛が法律で禁止(刑罰あり)されているために上映できなかったらしいのですが、公式サイトには、経緯はわかりませんが一週間だけ上映されたとあります。


Latest Kenya News: Kenyans React to Rafiki, First Ever Lesbian Movie Produced in Kenya | Tuko TV

この動画、その時の模様を報じたものでしょうか。

映画の内容はレズビアンのカップルの物語が中心となっており、そのふたりのシンプルな愛に対して社会の冷たい偏見の目と、そして最後には集団暴行にあい引き裂かれるということになります。

と書きますと、かなり壮絶な物語にも取れてしまいますが、全体としてさほど突っ込んだ描き方がされているわけではありませんので、たとえば、ふたりに後ろめたさを感じさせるような社会的な罪悪感があるようには見えませんし、まわりの目といっても刺々しさや陰湿さもなく、たとえて言うなら未成年者がタバコを吸っているのを苦々しく見るような印象で、集団暴行もやや唐突な感じを受けます。

ですので、物語としてはケニアであるかどうかはあまり意味をなさなく、ふたりの少女が自分たちの思うように生きたくても生きられない社会があるという、そんな映画かと思います。LGBTQの映画というよりも something real になりたいと願う少女たちの物語とみたほうがいいように思います。

ふたりを取り巻く社会環境は割と網羅的に描かれています。

ふたりのうちのひとりケナは母子家庭です。母親は教師と言っていたと思いますし、具体的な生活感を感じさせるシーンはなく貧しいというわけでもありません。父親とも結婚という形態をとっていたのか、未婚であるのか、あるいはそんなことは問題にならない社会なのか、母親がそれに関することを言っていましたがよくわかりませんでした。

ケナの父親は雑貨屋を経営しており、別の女性(かなり若く見えた)との間に間もなく子どもが生まれるようです。男の子だということがわかっているようで、これもはっきり理解できていませんが、そのことが社会的に好ましいようなことを言っていたように思います。

男性優位社会ということなんでしょう。ケナも友人のブラックスタから好きなものを買ってやる、家も買ってやると結婚(と言っていいのかどうかは?)を迫られていました。

Good Kenyan girls become good Kenyan wives. がケニアの女性に求められている姿ということでしょう。日本の保守的意識と同じですね。

ケナの父親は議員選挙に立候補しています。ふたりのうちのもうひとりジキの父親も同じく立候補しています。ジキの方の生活環境はかなり欧米風に描かれており、裕福なんでしょう。選挙運動もお金をかけています。ケナの父親の方はポスターが貼られているだけで特に運動はしていませんでした。

住まいで思い出しましたが、ケナの母親の家はカラフルな織物で覆われたような素敵な住まいでしたが、ジキの家は訪米風であっても何となく冷たい感じがしていました。そこらあたりにも意味が込められているんだろうと思います。

正直なところ内容はさほど心に残ることはありませんが、こうした普段ほとんど接することのない環境で作られた映画ですので、いろいろ新鮮に感じることも多くその意味では興味深いものもあります。

ケナの住まいもそうですが、特にジナがそうですがカラフルな衣装が目を引きます。黒人って本当に原色が似合います。

教会のシーンが2シーンあり、聖職者が政府擁護や同性愛を罪悪とする説教をしていました。ウィキペディアによりますと

宗教は、プロテスタントが47.7%、カトリック教徒が23.5%、その他のキリスト教徒が11.9%、ムスリムが11.2%、伝統宗教の信徒が1.7%、ヒンドゥー教徒が0.1%、その他が1.5%、無宗教が2.4%となっている。 

とあり、合計しますと 83.1%になります。宗教は同性愛に対しては抑圧的に働きます。さらに言えば、something real になることに対しても。

クラブシーンもあります。

そうそう、何かの解説にアフリカンカルチャーという言葉も使われていましたので音楽にかなり期待していたんですがほとんどいわゆるポピュラー音楽でした。ただ、あらためて聞きますといい曲もありますね。

印象に残っていませんので、あまり効果的に使われていなかったということでしょう。

で、最後は…どうなっていましたっけ? しばらく前に見た映画ですので飛んでしまいました。

ケナは看護師(医者?)になっており、ジナはヨーロッパへ行ったんでしたっけ? 自分の記憶のいい加減さを映画のせいにしてはいけませんが、あまりはっきりしていなかったのでしょう(ペコリ)。

もう少し何かを、という物足りなさは感じますが、こういう映画をもっと劇場公開してほしいですね。アフリカにしても、中南米にしても、アジアにしても、いい映画を見逃しているような気がして涙。

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