今年2019年がサリンジャー生誕100年、よく出来た伝記映画です
今年2019年がJ.D.サリンジャーの生誕100年になります。
映画は、サリンジャー20歳くらいから、『ライ麦畑でつかまえて』が完成し出版された1951年、32歳ごろまでを描いた伝記映画です。その後、クレアという女性と二度目の結婚をし、一男一女をもうけ、50歳くらいで離婚するところまでがおまけ程度についています。
ウィキペディアやネットの情報を読むかぎり、出来事自体はかなり忠実に作られているようです。こういうカリスマ的な人物というのはファンを超えた熱狂的なマニアがいるでしょうから、なかなか冒険も難しいでしょう。
第二次世界大戦のドイツ戦線で戦い、その体験からPTSDに苦しめられ(多分)ヒンドゥー教系の瞑想によりどころを求めていくあたりはこの映画の解釈かと思っていましたら、そうでもなく、著作や周囲の証言から明らかになっていることのようです。
『サリンジャー 生涯91年の真実』にはそのあたりも書かれているらしいです(読んでいないので多分)。
私自身はサリンジャーに特別な思いはありませんし、その一生も最近知ったくらいですので、以下、そうしたことは何も書いていません。
映画はとてもうまく出来ています。最後まで集中が途切れません。
前半は、サリンジャー(ニコラス・ホルト)が文芸雑誌『ストーリー』の編集長(オーナー?)ウィット・バーネット(ケヴィン・スペーシー)と出会い、その後押しによって世に出るまでが軸になっており、後半は戦争体験によるPTSDによる苦悩と『ライ麦畑でつかまえて』の成功によって有名になったがゆえの苦悩が軸になっています。
冒頭、サリンジャーが鉛筆を持ち、何か書こうとしますが手が震えてかけないという手のアップの映像があります。第二次大戦のドイツ戦線での体験による後遺症で入院しているシーンなんですが、いきなり何だろうと思います。
また、途中、サリンジャーが銃床で氷を割るところを氷の下側からとらえたカットがあります。何だろうと思います。親友が氷に閉ざされて死んでいるのです。
こういうカットの入れ方がうまいですね。
映画の作り方としては極めて基本的なことなんでしょうが、見るものの興味をそそるこういうカットをちらちらと入れて、もちろんそれはベースがしっかり出来ている上でのことですが、先への好奇心をそそり映画に集中させていきます。
ベースがしっかりしているとはどういうことかと言えば、やはり一番はシーンの構成力と編集のリズムでしょう。全般的に言えば、アメリカ映画はその点で優れているものが多いです。多くの人間が関わって作られていることが大きいのかも知れません。独りよがりにならないという意味です。
この映画もそうですが、見た直後の満足感は高いです。ただ、正直なところ後々残るものは少ないのです(ペコリ)。
と、昨日見たばかりなのに、もうすでにあそこはどうだったっけ?などと記憶も薄らいでいます(笑)。
褒めているのか貶しているのかわからない感想になってしまいました。よく出来ているとはいえ、ごくごくシンプルな伝記映画ですから仕方ないですね。むしろ、2,3ヶ月前に見た「ライ麦畑で出会ったら」のほうが記憶に残っています。