台風家族

新井浩文事件を乗り越えて公開なるも、これかい?

新井浩文さんの件でかなり苦労して公開にこぎつけたようです。下の画像も撮り直したものでしょうし、様々なところで名前が目立たなくしてあります。

で、この「台風家族」を見ることになったのは、その新井さんの件ではなく、市井昌秀監督の名前を見ていて、ん? 以前なにか見たことあるぞと気になり、このサイト内を検索してみましたらありました。「無防備」でした。

台風家族

台風家族 / 監督:市井昌秀

読み返しても、何も書いていないこともあり全く思い出せません。画も浮かんできません。ただ、「全体を支配している「素人臭さ」が、これ以上いくともう無理でしょみたいなギリギリのあたりにおさまっていることをとても気に入りました」と書いており、期待するとまとめています。

で、「台風家族」、見てみましたら、んー、すべてオトしておきましたが、いかがだったでしょうかと、ニヤニヤされているような映画でした(笑)。

おや? と思ったり、どういうことだろう? と疑問に思うようなことすべてにオチがつけてあるということです。

大きな方からいけば、なぜ父親一鉄(藤竜也)はセコかったのか、同じようになぜ小鉄(草彅剛)は金に執着するのか、なぜ一鉄は2000万円を強奪したのか、といったことから、小さなことでいえば、なぜ小鉄は扇風機をけとばすのか、なぜ一鉄は小鉄が免許を持っていることを知ったのか、なぜ僧侶が新車を買ったことを話題にするのか、などなどまで、とにかくあらゆることに、ああそうなのねとオチといいますか、理由づけがしてあります。

脚本も市井昌秀監督自身であり、小説版を、妻である俳優の今野早苗さんとの共著として市井点線名義で出版していることからすれば、徹底的に穴を潰したということでしょう。

で、それが面白いかとなりますと、これはもう個人的好みというしかなく、しかし、チャンチャンと終わっていることからすれば、映画としての深みがあるとはいい難く、余韻が残らないことは間違いありません。

物語の軸は親子愛です。

一鉄と小鉄、そして小鉄と娘ユズキ、どちらの親も子どもへの愛を素直に表現できません。愛とは正反対の、ぶっきらぼうでよそよそしい態度や行動でしか子どもに向き合えません。それでも自分のすべてをかけて子どもを愛している親です。

そうした(ステレオタイプな)不器用な親の物語です。

一鉄は葬儀屋です。小鉄に跡を継がせようとします。小鉄は反抗して家を出ます。ある時、一鉄は銀行から2000万円を強奪して、そのまま行方知れずになります。妻も同行しています。

10年後、時効を機に、兄弟姉妹が集まり遺体のない葬儀をあげます。死亡と認定されたということなんでしょうか、といいますか、そんなことにツッコミを入れるような映画ではありません。

葬儀に参列したのは、小鉄夫婦と娘、次男の…役名まで消してある? 新井(でいいか)、長女の麗奈(MEGUMI)です。三男の千尋(中村倫也)は来ていません。

小鉄は財産分与を目論んで葬儀に参列し、まずそのことで兄弟姉妹三人でもめます。

と、そもそも誰がこの葬儀を計画し案内状を出したのだということになり、実は千尋が、ユーチューバーになろうと家中に隠しカメラを仕込み、納屋でその映像をネット中継していたのです。

で、その後、記憶にありませんが(笑)、ごちゃごちゃとあり、一鉄が強奪した銀行のその当時の支店長が来て、時効は成立していないので2000万円は返してくださいとやってきます。

こりゃ大変だということになり、そこに、そもそも一鉄が2000万円を強奪した原因である詐欺を仕掛けた女がやってきます。その女がいうには、一鉄に、息子さんが交通事故にあい、今すぐ2000万円が必要という電話をかけて詐欺を仕掛け、そのために銀行強盗に入ったということです。

で、あれやこれやがあり、小鉄が子どもの頃のことを思い出し、一鉄がいるかもしれない場所を思いつき、台風の中、皆でそこへ向かいます。

一鉄と妻は、2000万円を抱きしめて、たしかにそこにいました。しかし、すでに白骨化しています。台風が荒れ狂っています。白骨と2000万円は濁流に流されていきます。小鉄たちは必死で追いかけます。

海です。白骨と2000万円は見失ってしまいましたが、台風一過、皆、なんとなく晴れ晴れとしています。その時、海に白骨と2000万円がぷかぷかと浮かんでいるのみえます。皆、フレームアウトして追っかけていきます。

ひとり残った小鉄の娘ハズキがカメラ目線で言い放ちます。サイテイ!

ちゃんちゃん。

「無防備」での期待がこんなところへ行ってしまったのか!? と、思わず失笑が漏れてしまいました。

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