銃2020

「銃」2018版のリベンジ版かと期待したのにコメディでした(笑)

」で失敗したのでリベンジ版の「銃2020」かと思いましたら、まったくもって同じ程度に映画になっていない映画でした。

と言うよりも吉本興業の芸人救済映画なのかもしれません。

銃2020

銃2020 / 監督:武正晴

それにしてもわずか2年の間に同じような企画の映画を作るくらいですから、よほど原作の『銃』(中村文則著)になにか映画的にそそるものがあるんでしょう。読んでみようかな。

銃 (河出文庫)

銃 (河出文庫)

  • 作者:中村 文則
  • 発売日: 2012/07/05
  • メディア: 文庫
 

前作の「」では、銃を拾いその悪魔的な魅力に取り憑かれていくのは男性の西川(村上虹郎)でしたが、この「銃2020」では女性(日南響子)に変えられています。

日南さんは前作にも出ていましたが役柄は関係ありません。物語もまったく違いますので単にある日ある人物が銃を拾うことから始まる物語を女性版にしただけです。

前作がダメなのはテーマも物語もよくわかるのにそれが映画として描かれていないところでしたが、こちらはテーマも物語も、そもそもなにをやろうとしているのかさっぱりわからない映画でした。私だけかも(涙)。

私が理解した前作は、

原作を読んでいませんが、映画を見ての想像で言えば、人は常に今(の自分)から抜け出したいとの欲望を持つものであり、ある時、その契機となりうる何ものか(銃)に出会えば、割と簡単にその境界を越えてしまうという物語なんだろうと思います。 

ということですが、この映画では銃がおもちゃのように扱われています。

おもちゃから狂気は生まれません。いや、そうでもないか(笑)。

東子(日南響子)がストーカーに付け回されています。東子はなぜかどんどん危険な方へ逃げていきます(笑)。薄汚い雑居ビルに逃げ込み(なぜ?)、トイレに入りますと洗面ボールの水が赤く濁り中に拳銃が落ちて(?)います。東子はためらうことなく手を突っ込み拳銃を取り出しトイレを出ます。ストーカーはどっかへ行っちゃったようです(笑)。

てな感じで映画始まります。もうこの初っ端から引きます。ストーカーが誰でありなぜ付け回されているかなどどうでもよく、なぜわざわざ危険な雑居ビルに入るかなどどうでもよく、用をたしたいわけでもないのになぜトイレという密室に入ろうとするのかなどどうでもよく、ただ東子に銃を取らせるための段取りで映画ができています。

全編そのように作られた映画ですので、やっていること、たとえば人が死んだり、銃を突きつけ、撃ったり、脅したり、脅されたり、暴行したり、暴行されたりするシーンが続いても緊迫感もまったくありません。

じゃあ何か人間の奥深さのようなものが見えてくるかと言えば、主役の東子でさえ語られるのは母親との関係がうまくいっていないこと、母親(友近)は幼い頃に息子を亡くしたらしく、東子にお前が代わりに逝っていればと精神的虐待を繰り返してしたようです。しかし、現在でも精神的障害を持つ(らしい)母親の面倒をみているようなシーンもあり、描かれてはいませんが、ある種の共依存関係と思われます。

なぜ東子がなんの迷いもなく血に染まった洗面ボールから銃を取って(盗んで)来るほどの行動を取るのかに説得力がありません。東子のその後の行動や振る舞いにああなるほどと思わせるものがあればいいのですが、ありません。

シナリオ、演出、俳優、なにが悪いということではなく全体でしょう。

宣伝コピーに「登場人物の全員が狂気に満ちている」なんてものがありますが誰にも狂気など宿っていません。登場人物の行動が一般人からすれば狂気がなければできないだろうと思えることというだけで、むしろ映画としては裏社会のクライム系のように銃が扱われています。引き金は躊躇なく引かれます。

東子が銃を拾った雑居ビルでバーを営んでいる(のかな?)男(佐藤浩市)はおそらくシナリオでも人物造形ができていないでしょう。行動の意図がよくわかりません。考えられるのは東子に興味をもって近づきたいと思っただけのように見えます。

物語に大した意味があるようには思えませんが、とにかく、男(佐藤)は銃がある女のもので、ああ、その女を男が撃つフラッシュバックがありましたっけ? あ、いや、撃ったのは警察の男(吹越満)だったかな? まあどっちでも大した違いはなく(笑)、とにかく元の銃の持ち主の女と男と警察の男の間になにかあったのでしょう。

警察の男が東子に近づき、あれ、この男何がしたかったんですかね? 銃を取り返したかったんじゃなかったのかな? なんだかんだと東子に背中を見せて喋っていましたので、おいおい、背中見せちゃダメだろうと思いながら見ていましたら、なぜかそこへ入ってきた男(佐藤)に撃ち殺されていました。

そして、なぜか東子と男(佐藤)は無茶苦茶開放的なカフェに行き、ブレンドと紅茶とトーストを頼み、ここのおいしいよと言って、なぜか男は何も飲まずに食べずに、じゃあ元気でなみたいなことを言って去ろうとしたところ、男は東子に背中から撃たれてしまいました。はあ?

この映画、コメディでした。

そしてラスト、刑務所(拘置所かな?)、弁護士が子供を連れて(書いていませんが隣の子供と)面会に来て、男(佐藤)は死んでいなかったので刑は軽いとかなんとかいっていたと思いますが、ここのポイントは子どもの方で、その子どもは東子の隣の部屋に住んでいた女の子どもで、その女が男を殺し、東子と一緒に三人で死体をゴロゴロと夜中に一般道を引きずっていった仲(笑)で、穴を掘って死体を落とし、その時初めて東子は死体に向けて銃を発射しています。

その子どもは面会の最後に銃のミニチュアがついたキーホルダーを東子に見せていました。

不幸の連鎖(みたいなこと)も考えているんだよという言い訳シーンでしょう。

結論としては、この映画は誰かが日南響子さんで映画を撮りたいと思ったことから立ち上がった企画なんだろうと思います。

銃

  • 発売日: 2019/10/23
  • メディア: Prime Video