ロスジェネ世代の落武者か…
今週公開作には見たくなるような映画がありません。ということで、DVD で二ノ宮隆太郎監督の2024年に公開された映画です。商業映画としては「逃げきれた夢」に続く二作目ということです。

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ネタバレあらすじ
内容にしても手法にしても「逃げきれた夢」とは随分違いますね。
手法として違うのは特に映像面で、かなり引いた画を多用しており、その構図も人物をフレームの隅においたり、仰角で撮ったりしています。引いた画の長回しであれば当然人物の表情もわからなくなります。
こうした映像手法で何を見せようとしているのか、あるいは何が見えると考えているのかは私にはよくわかりません。
台詞もまったくといっていいほど会話スタイルを取っていません。ふたりのシーンでもそのひとりが喋り続けて、もうひとりは他ごとを考えているのか、無視しているのか、ムカついていても抑えているのか、見ている方が想像するしかありません。会話ではありませんので画の切り返しもありません。喋りまくるその人物のアップのままです。
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オンタイムの3人
「逃げきれた夢」は人生の後半に差し掛かった男の話でしたが、この「若武者」はタイトル通り20代の男3人の話です。
渉(坂東龍汰)は物流関係の職場で働く寡黙な男です。その寡黙さはいつか爆発するだろうという寡黙さです。職場のシーンでは、同僚の男が愚痴を喋りまくることに対して何も喋らず鋭く見返しています。
英治(髙橋里恩)は居酒屋店員で、ちょっと粋がっているタイプでよく喋ります。渉とのシーンではひとりで喋りまくり、それに対して時々、ワンシーンに1回くらい渉がキレたりします。居酒屋での仕事ぶりはテキパキと居酒屋の店員としては好印象でしょう。
光則(清水尚弥)は介護士です。仕事のシーンはこの光則が一番多いです。仕事になにか意味を見出している感じではありませんが、特に問題はなく日々やるべきことをこなしています。
という、3人が3人ともにオンタイム(仕事時間内…)では周りに対して極めて普通で、見方によっては真面目な青年に見えます。渉は何も喋らず黙々と働いていますし、英治は軽やかな口調で客にオススメを勧めていますし、光則は介護士らしい優しさで老人たちに接しています。
このことがこの映画のミソかもしれません。
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オフタイムの3人
ところが、オフタイムになりとちょっとばかり様子が変わります。
英治は歩きタバコの男に副流煙がどうのこうのとイチャモンをつけたり、路上でわざと光則とキスをし、ヤバっと呟いて歩き去る女性の前に光則とともに立ちはだかって脅したり、ただすれ違っただけの男を殴りつけたりします。
渉の寡黙さはやはり鬱屈した感情の裏返しのようで、英治と待ち合わせの公園では公園の小山に足蹴りして当たっています。
そしてその後やってきた英治がただすれ違っただけの男に殴りつけたことを自慢気に喋りまくることにキレて路上にあったビール瓶で英治を殴りつけます。倒れた英治を置いたまま歩き去っていきます。
渉はその足で父親の元へいきます。自分があんたのようになることがこわいと言っています。なぜあんたが父親なんだと父親を恨んでいるようです。死んでくれと言いますと、父親は部屋に入り包丁を持って出てきて殺してみろ!と怒鳴っています。親子の間に何があるのかは語られません。
後日、渉は光則から、英治が絶対に仕返しをする、倍にして返してやる、日本刀で後ろからぶった斬ってやると言っていると聞かされます。光則は渉にサイコ野郎、お前みたいな奴が戦争を始めるんだよなと言い捨てていきます。
渉と喫茶店のマスターとの話、人が人に影響を与えることを渉は怖いと言い、マスターはいいことじゃないのと言っています。
渉の父親のカットが入ります。仕事が何かはわかりませんが竹林の中で休憩でしょうか座って頭を垂れ、上半身も前かがみになっていきます。
仕事に出かける(かどうかはわからないが…)渉、カメラ目線で、死ぬまでに何をするか、それだけだよな、とりあえず前向きでいこうと言い、そして頭を垂れ、首を傾げます。
青空に日本刀が振り出されます。
ぶった斬ってなのか、ぶった斬るぞなのか…。
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感想、考察:令和の若武者ではなさそう
説明的な映画ではありませんし、断片的ですし、かなりあざとく作り込まれた映画です。それだけによくわかりませんし、どういう意味なんだろうと考えなくちゃいけませんので何かが伝わってくるような映画ではありません。
あえて言えば、ありきたりにはなりますが「若武者」たちに潜む精神的不安定さってことなんでしょうか。ただ、それでもラストではとりあえず前向きに生きていこうなんて言っています。
二ノ宮隆太郎監督、現在40歳くらいだと思います。
ああ、この3人、ロスジェネ世代の「落武者」なのかもしれません。少なくとも2026年の「若武者」には見えません。
「逃げきれた夢」はわかりやすい映画だったんですけどね。もし、この「若武者」が本当に撮りたい映画ならこれを続けて2、3本撮ってくれないとわかんないですね。